「4630万円男」がYouTubeデビュー 阿武町関係者は「苦情は今も続いている。我々もこのままじゃ終われない」

「4630万円男」がYouTubeデビュー 阿武町関係者は「苦情は今も続いている。我々もこのままじゃ終われない」

保釈直後の謝罪は“貞子”状態に

 山口県阿武町の「4630万円誤送金事件」で保釈された田口翔被告(24)が反転攻勢に出た。有名YouTuberの番組に出演し、Twitterアカウントも開設。悪評を逆手に取り、インフルエンサーを目指す心算のようだ。一方、“被害者”ながらも日本中から批判にさらされてきた阿武町はどう出るか。役場関係者は「不名誉ながらも全国に名が知れた。ピンチをチャンスに変え、町おこしをしようという声も出ている」と明かす。

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■YouTubeで「断髪」


 つかみはバッチリだった。8月1日、山口南警察署玄関前。黒いスーツ姿で、待ち構える報道陣の前に出てきた田口被告を突風が襲った。長い髪の毛は顔を覆い隠し、有名ホラー映画の「貞子」状態に。間の抜けた謝罪場面は日本中の笑いを誘った。

 その後、返済金約340万円や保釈金250万円を立て替えてくれた“恩人”ヒカルのYouTube番組に出演して謝罪。ロン毛も断髪した。今後はヒカルの関連先企業で従業員兼広告塔として働き、借金を返済していくと語った。

 たった二日で動画の再生回数は340万回以上。平行して田口被告が開設したTwitterアカウントにも7万9000人ものフォロワーが集まった。4630万円をギャンブルで使い込んだ”逃亡犯”から一転、再起を目指すお騒がせ男として同情や興味を誘うことにひとまずは成功したのである。


■夜逃げのように自宅を出ていった母親


「こんなかたちであっても、あの子が立ち直ってくれるならば嬉しいです」

 こう語るのは、田口被告の実家がある市営団地に住む知人女性である。彼女は一連の騒動に疑問を呈する。

「24歳の未来ある若者と家族を、ここまで追い込むような事件だったのでしょうか。人殺しをしたわけでもないのに、連日マスコミは実家に押しかけ家族を追い回した。深夜、お母さんは車に荷物を積み夜逃げ同然で団地を出ていき、一か月くらいビジネスホテルや知人宅を転々とする生活を余儀なくされたんです。『テレビをつけられない生活になった』ともこぼしていました」

 だが、こんな時こそ支えようという周囲のフォローもあり、家族はなんとか生活を続けてこられたという。

「お母さんはフルタイムで朝から晩まで働く正社員でしたが、職場に迷惑をかけたことを気にして、『娘の就職が落ち着くまで、あと2年でいいから働かせていただけないか』と申し出たんだそうです。すると、上司は『なんであなたが辞める必要があるんだ! 気にしないで働きなさい』と逆に怒ったと聞きました」

 そして、阿武町に対してこんな思いをこぼすのであった。

「そもそも、町が誤振込したからこんなことになったのです。母親思いの子だったから、町が母親にまで連絡して追い込んだことに腹を立てたのだと思います。24歳の成人が起こしたことなんだから親は関係ないでしょう」


■町に今も鳴るクレーム電話


 田口被告自身もヒカルのインタビューで「阿武町に対して恨みとか憎しみとかってないの」と聞かれ、「ちょっとノーコメントでお願いします」と答えている。どうやら町の対応に不満を抱えているようだ。

 だが、阿武町の関係者は「彼にどれだけ苦しめられてきたか」と反論する。

「お母さんに連絡を取らざるを得なかったのも、彼がずっと逃げ続けたからです。電話も出ないし家に行っても不在。ようやく捕まえたと思ったら、車に乗ってまかれるようなことまで起きた。その時、実家に帰ったかもしれないとお母さんに連絡を取らせてもらったのです。もちろん、お母さんが悪くないのはわかっている。だから、こちらの非を詫びたうえで、協力して欲しいとお願いした。銀行にも泣かされました。地方自治体が正式に事情を説明して銀行口座の凍結をお願いしても、杓子定規で出来ないと繰り返すばかり。その間にどんどん口座から金が消えていってしまったのです」

 町の受難はいまなお続いているという。

「今日も15件くらいの苦情が入っている。YouTubeの影響でしょう。ほとんどが町が原因だと非難する声です。町民からの苦情ならば仕方ありませんが、関係のない他地域から電話してくる。一番ひどい時は200件くらい。業務は止まるし、職員たちも精神的に参ってしまった。罵詈雑言が30分くらい続く電話もある」


■逆手に取って町おこしを


 では、いっそ田口被告のように全国区の知名度を得られたことを逆手に取って、実を取りに行ってはどうかと聞くと、「もちろん、そういう声は出ていますよ。このままじゃ終われないと思っている職員は多い」と答える。

「『電通に4630万円払ったってこんなに全国に名を売れない』なんて皮肉を言う人もいますが、実際そうでしょう。逆転の発想で、町おこしにつなげようという声は確かにある。ただし、仕掛けるとしてもすべてが終わって落ち着いてからです」(同)

 全額返済されたとはいっても、田口容疑者とはまだ係争中なのだ。

「4630万円分については認諾(被告が原告の主張を認めること)を得られていますが、弁護士費用、調査経費、利息等などの約510万円分については何の連絡もありません。これについては粛々と求めていく必要がある」(同)

 刑事裁判も控えている田口被告。本当に改心したのか。今後の振る舞いに注目したい。

デイリー新潮編集部

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