プロペラの位置が逆? 太平洋戦争末期、B-29撃墜のため開発が進められた“異形の戦闘機”

プロペラの位置が逆? 太平洋戦争末期、B-29撃墜のため開発が進められた“異形の戦闘機”

左が「震電」。右側に写るのはマーシャル諸島タロア島で回収された零戦32型(世界唯一の現存実機)

■第2次世界大戦終結から今年で77年


 8月15日、戦後77回目の終戦記念日を迎えた日本。ウクライナ戦争を目の当たりにし、近隣においても台湾を巡る米中の緊張が高まっている今、もはや戦争は「遠い場所での出来事」では済まなくなってきている。そうした中、福岡県筑前町で始まっている「幻の戦闘機」の展示に注目してみた。

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 一見したところ、映画やアニメでよく目にする、旧日本軍の“普通の戦闘機”に見えるが、よくよく見てみると、プロペラがコックピットとは逆の、お尻の方に付いている?

「一体、どっちに進むのだろうか?」

 と見学者を戸惑わせるのが、旧日本軍の試作戦闘機「震電(しんでん)」の原寸大模型だ。

 先月6日、福岡県筑前町にある大刀洗(たちあらい)平和記念館で始まった、77年前の新鋭機の外観復元の展示である。


■当時を知る人は「低空飛行をする姿を見て、皆で万歳した」


 昭和20年頃、銀色に輝きながら大空高く飛ぶB-29を、日本人たちは無力感に包まれながら見上げていた。

 だが終戦間近、敵機迎撃に特化した試作機が完成した。起死回生を願う人々に見守られ、77年前の8月、試験飛行を遂げたのが、この「震電」である。初飛行を見守った当時の中学生によると、「低空飛行をする姿を見て、皆で万歳した」という。

 B-29の空襲にさらされていた本土の防空用に特化して開発された局地戦闘機で、高々度を飛行する敵爆撃機を撃墜すべく、機体を急上昇させるために、巨大な2130馬力のエンジンを胴体後部に搭載している。

 エンジンの位置が胴体後部であるために、付随するプロペラの位置も前後で逆になっている、というわけだ。飛んでいくのは、プロペラが付いているのとは反対の方向である。


■輸送と設置でトータル2200万円かかった!


 当時、海軍から開発を任されたのは、陸軍機の修理や部品製作に携わっていた太刀洗航空機製作所の兄弟会社、「九州飛行機」だった。

 そのつながりから大刀洗平和記念館は本機の展示を模索。

 当初はこの飛行機を分解して保管している米スミソニアン航空宇宙博物館に打診したが実現せず、代わりに東京の映像制作会社が作った実物大模型を手に入れたという。

 値段は輸送・設置費を含め約2200万円。

 同記念館では、目標額1千万円のクラウドファンディング(〜8/26)を募り、すでに841万円が集まったのだそうだ。


■フィクションの世界で「幻の戦闘機」として知られる「震電」


「震電」は終戦間際の昭和20年8月頭に試験飛行が行われたが、結局、実戦で使われることはなかった。

 最高時速750キロを目標としていたが、開発を続けたとて、果たしてそれが実現したかはわからない。

 だが、いわゆる「架空戦記モノ」などフィクションの世界では、「震電」はB-29を次々と撃墜する「幻の戦闘機」として活躍することも少なくない。

 その姿を間近に見ると、現実とロマンがシンクロして不思議な気分になることだろう。同展示をきっかけに、「日本が経験した戦争」について思いをはせてみるのはいかがだろうか。

撮影・福田正紀

「週刊新潮」2022年8月11・18日号 掲載

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