統一教会だけではない「宗教2世」問題 エホバの証人、幸福の科学、創価学会の場合は

統一教会だけではない「宗教2世」問題 エホバの証人、幸福の科学、創価学会の場合は

宗教団体「宗教2世」の実情

統一教会だけではない「宗教2世」問題 エホバの証人、幸福の科学、創価学会の場合は

文鮮明夫妻

 安倍晋三元首相の殺害事件で逮捕された山上徹也容疑者は、自身の母親が信者である統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に深い恨みを抱いていた。そして彼のような、いわゆる「宗教2世」に注目が集まっている。以前から当事者や支援者、研究者の間で議論されてきた、統一教会以外の宗教団体も含めた「2世問題」とは何なのか、改めて整理したい。

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■統一教会の2世問題


 統一教会の田中富広会長は、7月11日の記者会見で、山上容疑者の母親が信者であることを認めたが、山上容疑者については「会員」ではなかったとしている。一方、後日行われた統一教会の礼拝では、山上容疑者が2、3度、施設に赴いて教えに触れたことがあると説明した。

 実際、宗教2世は、正式な信者になるか否かは関係なく、親の信仰の影響を受ける。統一教会2世のA子さんは、こう語る。

「子供は親がいなければ生きていけません。親から信仰を求められれば、逆らうことなどできないのです。それに私は、親に幸せになって欲しいという思いもあったので従いました。私と違い、親の求めに逆らって早くに家を出たきょうだいもいました。入信しなくても、やはり人生は大きく影響を受けます」

 Aさんは合同結婚式で結婚し、子供もできた。しかし、夫のDVや借金のために離婚。統一教会の信仰も捨てた。生活保護の受給期間を経て、いまは仕事に就いている。

「私の母は、私の子供(母親から見て孫)に信仰を持たせようとしてきました。子供を守るために、親と縁を切らざるを得ませんでした」(Aさん)

 統一教会では、合同結婚式で「祝福」を受けた夫婦の間に生まれた子供には「原罪」がないとされる。また「教えに反して罪を犯せば、代々の子孫までもが地獄で苦しみ続けたり自分や家族が不幸に見舞われたりする」かのような教えで、信者に不安や恐怖と表裏一体の「熱心な信仰」を煽る。追い込まれた親たちが、献金だけではなく子供や孫など、立場が弱くコントロールしやすい相手を巻き込むのだ。


■かねてより問題視されてきたテーマ


 宗教2世問題は統一教会に限らない。以前からエホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)における虐待も問題視されてきた。

 輸血の拒否、学校教育での剣道や柔道といった武道の授業の受講拒否、運動会の騎馬戦など「戦い」に関わるものへの参加禁止。クリスマスその他の行事への参加や、国家・校歌を歌うことも禁じられる。言いつけを守らない場合は親からムチで打たれる。

 かつては大学などの高等教育への進学も禁じられていた。高卒で信者が経営する企業に就職し、労働は週3日で残りは伝道活動、といった生活スタイルに入る2世もいる。自由な恋愛もできない。

 教えに反した行動や言動をとると、場合によっては未成年でも「排斥」等の処分がある。排斥になると、親でも接触を拒む。親子関係が断絶させられてしまうのだ。

 排斥されたにせよ、自ら信仰を捨てたにせよ、教団を離れれば社会経験が乏しい大人として一般社会に出ることになる。


■子供の学歴まで囲い込む宗教団体


 幸福の科学では、日常生活上の特殊な戒律や、暴力やネグレクトを推奨する教義はない。しかし、教団施設内の学習塾、幸福の科学学園(中学・高校)、大学としての認可を得ていないハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で、組織的に2世信者を囲い込む。

 学園では、歴史の授業ですら「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳」「シュメール文明の王は宇宙人の指導を受けていた」といった類の、教祖の「霊言」に基づく歴史観を教える。教育基本法によって学校による政治教育や政治活動は禁じられているのに、同学園では幸福実現党を支持する授業もある。

 卒業生たちは、多い年には8割もHSUへ“進学”する。中には有名大学の入試に合格したものの、それを蹴ってHSUに行く人もいる。


■自ら不合理な選択をさせる


 教団から、2世が親や教団から、こうした進路を強要されたり婉曲な圧力を受けたりするケースも稀にあるが、全体的には幸福の科学学園では多くの2世が自ら望んでこうした進路を選んでいるように見える。親と教団から、そうすることが素晴らしいのだと教育された結果だ。

 だが、一定の年齢になると、自身の境遇に苦悩するようになる2世もいる。HSUは大学ではないから、「卒業」後の就職も一般の新卒者のようにはいかないためだ。

 創価学会の場合、教義や団体の性格からいって、系列の学校の実情は幸福の科学と同一視はできない。教義や団体への批判はあるとしても、過去世や宇宙人を云々する幸福の科学ほど世界観が浮世離れしているわけではない。仮に学校で教義を教えたとしても、創価学会の場合はそこまで突拍子もない教育にはならないだろう。エホバの証人のような、子供の生命や健康に直結する戒律等があるわけでもない。しかしそれでも、2世問題はある。

 熱心に勤行(お題目を唱えること)をすれば功徳があるとされる反面、教えに反すれば「バチ」が当たるという考えも強調される。不安や恐怖が表裏一体の状況も生まれやすい。他宗・他教を邪宗・邪教として否定する教えを刷り込まれた2世の中には、「神社の鳥居をくぐると頭痛がする」ようになり、修学旅行も満足に楽しめなかったという人もいる。幹部の子供が意思に反して創価大学への進学を強要される等の例も聞く。

 2世たちが口にする「信仰の強要」という言葉には、こうした要素も多分に含まれている。法律用語のような意味合いの「強要」だけでは理解できないのだ。

 問題は、子供を不合理な選択に向かわせたり追い詰めたりする宗教団体や親のあり方だ。少なくとも、これほど広範囲に問題を生んでいる現状を「しつけ」「教育」「親の養育権や信教の自由」の名の下に、社会の側が黙認・公認していいはずがない。


■社会の側の課題も


 2世たちは、信仰ゆえに幼少期にいじめにあう経験もしている。もっとも、彼らをいじめるのは子供ばかりではない。

 前述の幸福の科学学園のケースでは、履歴書に「幸福の科学学園卒」と記される。卒業後に一般の大学に入り信仰を捨てた2世ですら、バイトの面接や就職活動で企業側の担当者からからかわれた経験を語るケースがある。大学の教員から他の学生たちの前で、ネタとして暴露されたという2世(その時点ですでに脱会済みだった)もいる。

 信仰を捨てた2世のみならず現役の信者に対しても、信仰を理由としたいじめは差別以外の何物でもない。

 学歴の問題や精神的ダメージ等、直接の原因は2世ごとに多様だが、生活の糧を得ることにも苦労するケースも珍しくない。さしあたって重要なのが、生活保護制度の拡充や、親に住民票を閲覧させないようにする制度(DV被害者等を想定した支援制度)などだ。

 私自身もある2世の手続きに付き添ったことがある。その時は窓口の担当者が非常に丁寧に応じてくれた。しかし人づてに聞く話では、別の自治体で「親と話し合ってみて」などと言われ断られたケースもある。信仰を強要する親から逃れて人生を立て直そうとしている2世に対して、こんな残酷な「無茶振り」はない。こうした対応も、2世たちの孤立感を深めてしまう。

 宗教2世問題を、一種の虐待として理解できない役所の問題もあるが、そもそも全国共通の明確なガイドライン等もない。

 宗教2世たちに苦痛を与え人生を狂わせているのは、直接には親や宗教だ。しかし社会の側にも、いくつもの課題があることを知っておくべきだろう。

藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
ジャーナリスト。1974年生まれ。宗教団体以外も含めた「カルト」の問題を取材。2009年にはカルト問題専門のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、カルト被害、カルト2世問題、カルトと政治の関係、ニセ科学やニセ医療、自己啓発セミナーの問題などの取材を続けている。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島SUGOI文庫)。

デイリー新潮編集部

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