女性刑務所は「前歯のない人が多い」 元受刑者が語る殺人犯と並んで浴びた「15秒シャワー」

女性刑務所は「前歯のない人が多い」 元受刑者が語る殺人犯と並んで浴びた「15秒シャワー」

自身のYouTubeチャンネルで女子刑務所の裏話をする万年蘭さん。加工アプリを使っているため実際の見た目は変わるが、素顔も55歳とは思えぬくらい若い

 女性だらけの刑務所とはどんなところなのか。2015年に覚醒剤の所持・使用で実刑判決を受け、女子受刑者の専用収容施設「栃木刑務所」に2年半服役したYouTuberの万年蘭さん(55)は「二度と行くところじゃない」と振り返る。殺人犯らと隣り合わせで過ごした日々とは……。

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■収容人数約650人。国内最大の女子受刑者収容施設


 16歳でヤクザから覚醒剤を教えられ、以来、33年間薬物漬けの生活を送ってきた万年さん。刑務所に入ったことがきっかけで薬物をやめ、いまはYouTuberとして活動している。

 彼女の波乱万丈な半生については、別稿「ヤクザから16歳で教えられ…33年間覚醒剤をやめられず廃人寸前まで堕ちた55歳『女性YouTuber』が語る薬物依存の怖さ」を読んでいただくとして、ここでは彼女が47歳の時に収監された栃木刑務所での経験に絞って話を聞いていく。

 万年さんが初めて覚醒剤取締法違反で逮捕されたのは2015年のこと。初犯だったので執行猶予がついたが、半年も経たずして同法違反で再逮捕された。執行猶予は取り消され、2年半(判決は合算で2年8カ月。2カ月短縮され仮釈放)刑に服することに。彼女が入ることになった栃木刑務所は、最大収容人数約650人、洋裁や電気部品組立などの10工場が設置されている国内最大の女子受刑者収容施設である。


■体重47キロが出所時には……


 拘置所から刑務所に移送されると、まず素っ裸にさせられ身体検査を受けるという。

「検査官が書類に描かれた人型の図のなかに、タトゥーやほくろの位置などを書き入れていきます」

 その後、単独房で二日間過ごしながら刑務所内を見学したり医務課でメディカルチェックを受ける。

「血圧検査で高い数値が出ると減塩食にされ、薄味の食生活になってしまうので大変です。刑務所は拘置所と違って弁当やお菓子を自由に食べられないので、3度の食事が非常に重要になってくる。私は好き嫌いが多い方なので、刑務所生活で最も心配だったのが食事でした」

 実際は「麦飯が口に合ってしまって……」。入る時は47キロだった体重は出てきた時は67キロになってしまったそうだ。


■センセイ


 私服や私物を預け、代わりに黒色のジャージの受刑者服を手渡される時、「いよいよ塀の中に堕ちてしまった」と感じるのだという。同時に与えられるのが称呼番号。よくドラマなどでは名前ではなく番号で呼ばれる描写があるが、

「少なくとも女子刑務所ではそんなことはありません。センセイからは普通に『万年さん』と呼ばれます。点呼などの時は『284番、万年さん』。悪さすると呼び捨てにされることもありますが」

「センセイ」とは女性刑務官のこと。男子刑務所では男性刑務官のことを「オヤジ」というが、女性刑務所では女性刑務官のことをこう呼ばされるという。このセンセイとの相性が今後の刑務所暮らしを大きく左右するのだ。

「工場での働き方が変わってきます。私は最初に配属された紐を扱う作業が嫌でしょうがなかった。老眼なので細かい作業ができないんです。老眼鏡を貸してほしいとお願いしたんですが、貸し出し中で出来ないと言われ、結局、担当のセンセイとも衝突。作業放棄をしてしまい、一カ月の懲罰に行かされました」


■”月給”はたったの9000円


 懲罰になると一週間、何もない単独房のなかで一日中座らされる罰を受ける。最初はセンセイと折り合いが悪かった万年さんだが、その後別のセンセイから気に入られたため、「作業係」と呼ばれる受刑者の仕切り役に大抜擢された。

「仕事は格段に楽になりました。配属されたばかりの新人刑務官はわからないことがあったら作業係に聞いてくる。彼女たちの面倒を見ていると、彼女たちが慣れてきたら良くしてくれるのです。同僚の受刑者たちからは妬まれてしまいますけどね。等級が上がると報奨金の時給も上がります。最初は1日8時間週5日働いて月に4、5000円くらいでしたが、最後の方は9000円くらいでした」

 職場と同じくらい重要になるのが舎房での暮らしだ。10畳ほどのプライベートのない空間の中で6、7人が共同生活を送る。同居人はどんな面々なのか。

「一番初めに入った部屋は、80代と70代の殺人犯、50代と40代の窃盗犯、40代のポン中(覚醒剤中毒者のこと)、罪名を絶対に明かさない50代といったメンバーでした。まったく人付き合いができずに、自由時間はいつも一人で読書していました」


■あんたどうせションベン刑なんでしょ


 半年に一回行われる部屋替えや職場での交流も重ね、次第に周囲と会話を交わすようになった万年さん。やはり一番気が合うのは、同じ罪状で入った仲間たちだった。

「女性刑務所で圧倒的に多いのはポン中(覚醒剤中毒者のこと)です。前歯がないような人もゴロゴロいます。ポン中同士が集まって話題になるのは決まって“ネタ”の話。『私はこんな売人使っていた』、『あの時のネタは最高だった』なんて口々に盛り上がっていると、やめたいと思っていた人だって、また手を出したくなるものです」

 逆に一番とっつきにくかったのが重罪で収監されている受刑者たちだった。万年さんは刑期の後半で再びルール違反を犯して懲罰を受けた時に、運動場で二人の殺人犯と一緒になった時の会話が忘れられない。

「彼女たちはVIPと呼ばれ、普段は単独房にいて一般受刑者とは関わらない受刑者でした。二人で『ここのエサはまずいから違う刑務所行きたいわ』なんて盛り上がっているのです。で、私に向かって『あんたはどうせションベン刑なんでしょ』。一人は舎房の中で競馬新聞を読んでいて、面会に来る人に頼んでギャンブルしていると話していました。『去年は1000万円くらい稼いだかなぁ』って。罪の重さと向き合い反省しているようには見えないのです」


■出所後に万引きをして戻ってくる老人


 そんな豪胆なタイプとは逆に精神を病んでしまう受刑者もいた。

「違う工場なんですが、殺人で12年の刑を打たれた女性でした。医務で会うと、『センセイ、私、死刑になるんですか』ってブツブツ聞いているんです。センセイも苛立って、『アンタ、死刑にならなかったからここに来たんでしょうが』って。あと万引きする人には摂食障害の人が多い。人の食べ物を盗んだり、あまった残飯をおにぎりにしたり……。ひどい人は、食べたものをトイレの中に全部吐いてしまう。これは禁止行為。バレたら水道の使用を制限されたりして、部屋の全員にも迷惑が及ぶとあって厄介でした」

 受刑者の年齢層もバラバラ。20代が3割くらいで30代から50代が3割くらいで残りは老人たちだという。老人たちの中には出所したばかりだというのに「やっぱシャバで食っていけねぇ」って帰ってくる人も。


■15秒シャワー


 忘れ得ぬ光景として語ってくれたのが「15秒シャワー」。風呂は一回15分間で週2回。夏場は3回に増え、さらに風呂のない日は15秒間シャワーができるというのだが、そんな短時間でいったいどうやって済ませるのか。

「刑務所の風呂場は銭湯のように広いんですが、洗い場に同じ工場に勤務する70人くらいの受刑者が素っ裸になってシャワーヘッドを握ります。そして、センセイの“はい、はじめ!”の合図で、一斉に蛇口をひねるのです。15秒なんてあっという間。ひたすら胸、背中、腕、股と流しまくるだけ。せっけんの使用は禁止ですが、そもそも使っている時間なんてありません。ちょっとでも欲張って洗っていようなら、“なに、そこまだ出してるの!”ってセンセイから怒号が飛んできます」

 そんな苦労話を振り返りながら、万年さんは「あんなところは二度と行くものじゃない」と繰り返すのであった。

デイリー新潮編集部

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