「森元首相の逮捕」を東京地検特捜部は諦めたのか?

「森元首相の逮捕」を東京地検特捜部は諦めたのか?

森氏の逮捕 特捜部は諦めず?

「森元首相の逮捕」を東京地検特捜部は諦めたのか?

特捜部の参考人聴取を受けたとされる

■現金200万円は?


 東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、ついにKADOKAWAの角川歴彦会長が贈賄容疑で逮捕された。一方、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相(85)が東京地検特捜部から任意で複数回、事情を聴かれていたこともわかっている。あくまでも参考人としての立場だけに、逮捕はないだろうというのが衆目の一致するところだが、本当に特捜部は逮捕を諦めたのか?

 大会組織委員会の元理事である高橋治之容疑者(=受託収賄容疑で再逮捕=)が、紳士服大手のAOKIホールディングスや出版大手のKADOKAWAから金銭の提供を受けたとされる事件の捜査が進んでいる。

 その中で、大会のスポンサーのひとつ、AOKI前会長の青木拡憲被告(贈賄罪で起訴)が、森元首相に「現金200万円を手渡した」と供述していることが報じられた。

「この200万円は、当時森氏が治療を受けていたがんについての見舞金だったと青木被告が供述しているとの報道がありました。森氏はこの事実を否定するなどしています。実際に受け取っていたとしても見舞金だったなら、罪に問うことは難しいでしょう」

 と、担当記者。


■特捜部の見るスキームとは?


 200万円もの大金が見舞金として渡される関係とは一体いかなるものか、一般人にはなかなか想像しがたいが、それだけでは立件は困難ということのようなのだ。

「もちろん、組織委員会トップだった森氏は『みなし公務員』ですので、その職務に関して、相手側に供与する便宜の対価として金銭を受け取ったのであれば、収賄罪もしくは受託収賄罪に問われる可能性があります」(同)

 AOKIに続くKADOKAWAの案件では、KADOKAWAがスポンサーに選定される前に、森氏が別の大手出版社を「個人的な好き嫌い」で拒絶した可能性があることが文春オンラインで報じられた。

「なかなか生々しい話でしたが、森氏が組織委員会のトップとして影響力を行使したと言えるだけの物証を重ねるのは難しいでしょう。その一方で、高橋容疑者が“森さんも僕に任せている”と発言していたという供述報道とAOKI側の資金提供の話とを合わせて見ると興味深いですね。新聞・テレビが伝える各種の供述内容は、特捜部そのものではないにしてもその周辺からリークされたものであり、特捜部がどんな絵図を描いているのかがおぼろげながら見えてくるからです」(同)

 具体的には?

「森氏から全権委任された高橋容疑者がスポンサー選定などを取り仕切り、選ばれた企業側は森氏に対しAOKIが支払ったような金銭(この場合の名目は見舞金ではない)を提供するというスキームができていたと特捜部は見ている、と言えるかもしれません。やや強引ではありますが」(同)


■森氏の功績


 他方、政治部デスクはこんな見方をする。

「首相に決まるまでの流れが“あまりにも密室すぎた”とか、大きな失言や危機管理のマズさなどによって政権が超短命に終わったことで、森氏には一般的にグレーなイメージがつきまとっています。ただ、実際に話をしたり付き合ったりしてみると、懐の深さがあるのも事実。相手が誰であろうと怯むこともなければ遠慮もあまりせずに近づいて行って関係を作ってしまう“政治力”もある」

 実際、ラグビー伝統国以外で初めてラグビーのW杯を開催にこぎ着けられたのは森氏によるところが大きいとされていた。

「東京五輪がコロナなどでぐちゃぐちゃになって、IOCのバッハ会長からアレコレとハードルの高い要求が来ている中でも粘り強く交渉し、うまい妥協点を見出したのは森氏の手腕だとされています。森氏は水面下のやり取りやそこでの“実績”を外部にして誇ったりすることがないので、世の中に伝わりづらく、誤解されている部分も少なからずあるでしょう」(同)


■常に国策捜査


 もっとも、組織委員会の会長を辞任するきっかけとなった女性蔑視発言はじめ、失言などで世論の反発を招いたことは少なからずあった。

「そうですね。元々思ったことをそのまま口にしてしまうタイプではあるのですが、世間の森さんに対するイメージの悪さにメディア側が乗じ、意地悪な切り取り方をして報じられた面もあるようにも見えました。その点、特捜部のターゲットにはなりやすいのかもしれません。彼らの捜査は常にいわゆる“国策捜査”の傾向があります。要は世間の耳目を集めているテーマを対象に、世の中から“看過しがたい存在”だと指弾されている相手を懲らしめるというものですからね」(同)

 とはいえ、森氏は元首相であり、85歳という高齢に加え、がん治療後、透析を受ける日々を送っている。

「もちろん、身柄拘束による健康面や政治的な影響について見定める必要があります。それとは別に、特捜部の捜査で特によくあるのは、現場が“証拠は固まっている”と主張するのに対し、最高検などの上級官庁の幹部がこれを色んな理由で否定するというパターンです」

 と、社会部デスク。


■たとえ在宅レベルでも


 今回の場合は、どうなのか?

「少なくとも現場は諦めていないようです。容疑者として事情聴取をしていない点もあって、身柄を取るということは難しそうです。ただ、まだ表に出ていない案件はもちろんあり幅広い捜査を展開しているようで、たとえ在宅レベルでも森氏を起訴に持ち込めないかということも特捜部は考えているフシがあります。“何とか形にしたい”という熱量が伝わってきます」(同)

 特捜検察には苦い思い出がある。

 1992年9月、自民党の金丸信副総裁は政治資金規正法違反容疑で略式起訴され、罰金20万円の略式命令を受けた。5億円の闇献金疑惑に対してその闇に切り込めないばかりか身柄さえ取れない特捜部への世論の批判の声は大きく、霞が関にある検察庁の表札には、黄色いペンキがかけられる事件にも発展した。
「特捜部に対する国民の信頼が失墜した象徴的な事件でした。しかしその後、特捜部には“国税”という救世主が現れ、その情報提供を基に脱税容疑で金丸氏を逮捕・起訴するに至ります」(同)

 仮に在宅起訴になった場合、再び「ペンキ事件」が起こり、新たな情報が寄せられるということもあり得るのだろうか。

デイリー新潮編集部

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