香川照之は「不快な思いをした人」には謝らなくてよかった 謝罪すべきは被害者や仕事関係者(中川淳一郎)

香川照之は「不快な思いをした人」には謝らなくてよかった 謝罪すべきは被害者や仕事関係者(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 俳優・香川照之の「銀座クラブセクハラ事件」ですが、出演番組と数々のCM出演を降板する結果になりましたね。9月2日、自身が金曜MCを務める朝の情報番組「THE TIME,」に、1日に収録したという約4分間のVTRで出演。「当事者の方々はもちろん、私の今までの人生全てにかかわってこられた方々の中で私が不快な思いをさせてしまった方々に対して、その方々全てにおわび申し上げます」と述べました。

 というか、謝罪会見や謝罪コメントで「不快な思い」という言葉はもはや古臭い偽善臭が漂うってこと、彼は知らなかったのですかね。あのね、謝罪の基本は「被害者に真摯に謝る」なんですよ。クラブの方々に謝るのは当然のこと、CMやドラマ関係の皆さんに謝るだけでいい。

 今回の報道に対して「不快な思いをさせてしまった方々」の大多数というのは、香川氏とは関係のない一般の方々でしょう。別にその人たちに謝る必要はない。なにせ実害がないのだから。「不快な思い」ってものは人それぞれなので、別に謝る必要はありません。「ホステスのブラジャーを取ってにおいをかいだ」といった不快感に対しては謝らないでいいです。ただ、あなたを見捨てるだけです。

 だから、この報道を見て不快感を覚えた人に香川氏は謝罪をする必要は一切ない。謝罪すべきは「不快な思いをした人」ではなく、「直接的な被害を受けた人」なのです。それこそ、銀座のクラブの皆様ですし、香川氏の仕事関係者です。

 さて、ここでCMと芸能人の関係性について解説します。基本的にCMというものはイメージを上げるため、著名な芸能人やスポーツ選手を起用します。いうなれば、その人の知名度に乗っかるわけですね。正直、私自身、著名人が出ているからその商品を買う、ということはないのですが、世の中には「〇〇さんが出ているこのCMの商品買う!」と思う人も一定数いるのでしょう。だから延々と著名人がCMに出続ける。そして、広告代理店も「キャスティング候補」として、商品イメージに合致する著名人リストを提出する。

 そんなことがあるだけに、広告主は、香川氏のこの醜聞を知った瞬間、青ざめたことでしょう。結果的に軒並み降板となりましたが、仕方がありません。彼が画面に映るたびにブラジャーをかぐ高齢者間近の男のイメージが湧いてしまうのですから。

 香川氏が出演したドラマ「半沢直樹」(TBS系)の大和田常務バリの土下座、本当にあったんですよ。私は広告代理店出身者ですが、営業担当がタレントの不祥事の際、土下座をして広告主に謝罪した、という話も聞いています。

 あと関係ありませんが、「THE TIME,」って、なんで「,」が入っているんですかね。昔、テレビ誌の編集者をやっていた時、番組紹介をする際、「.」がないやら「“!”でなく“‼”だ」みたいなことで局の広報から怒られたことを思い出しました。それから、「MiND」(仮)みたいに、「i」だけ小文字なのあるじゃないですか。これ、「i=私、が輝くことを意味している」みたいな方便を散々聞きましたが、それが大文字か小文字かで売り上げってどれぐらい違うんですかね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2022年9月22日号 掲載

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