「女子中学生2人殺害」後にワイセツ再犯 性犯罪常習男が面会室で語った“司法の敗北”

■性犯罪常習男が面会室で語った「司法の敗北」(2/2)


 長崎拘置支所の面会室にあらわれた寺本隆志(66)は、小学生女児への強制わいせつ致傷などの罪で、今年2月に懲役7年の判決を受けた被告人である。「個人的に、悪いことが色々と重なってしまった」。そう語る寺本には、女子中学生2人の殺害をはじめとした、数々の犯歴がある(掲載図参照)。今回は、最後の出所から1年を待たずして再びの犯行に及んだわけだが、自身は過去の殺人事件の判決時には“極刑を希望”していた。

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 再犯という視点では、法務省の法務総合研究所の調査に興味深い結果がある。

 裁判確定から5年経過時点での、再犯の有無を示す再犯率だ。低年齢の子供を狙った小児わいせつ型の再犯は、「性犯罪の再犯あり」が9・5%、「その他の再犯あり」は6・6%。

 性犯罪の前科が2回以上の再犯者を類型別でみると、小児わいせつ型は84・6%に跳ね上がる。痴漢を除く強制わいせつ型の44・0%や単独強姦型の63・2%と比べても、小児わいせつ型は性犯罪を繰り返す傾向が強いのだ。こうした数字を見ても、寺本の歪んだ衝動と欲望を止めることはできそうにない。となると、いよいよ大ナタを振るうときが来ているのか。

 刑事法学が専門の常磐大学元学長、諸澤英道氏の話。

「米国や韓国などで導入済みですが、裁判所の命令によってGPSをつけるのです。それも、無理やりつけるのではなく、つけることで犯罪者の側に釈放が早くなるなどのメリットももうける。本人が了承すれば、人権問題にもなりません」

 監視されつつ、活動は自由。自分の意志で再犯しない環境を作るのだという。

「日本でこうした議論、動きが鈍いのは、犯罪者の人権ばかりが主張されているからでしょう。出所した性犯罪者への規制がないのです。再犯防止プログラムの成果が上がらない以上、GPS導入を検討すべき段階に入っているのではないでしょうか」


■「死刑しかなかった」


 諸澤氏の話に出た再犯防止プログラムとは、性犯罪の再犯リスクが高いと判断された受刑者や仮出所者を対象に行われるもの。数カ月間、自分の生い立ちや性格を突き詰めて考え、被害者側の立場になって手紙を書いてみるといった課題があり、性的欲求の対処法を定めて再犯防止計画を立てるのだ。

 先ごろ本誌(「週刊新潮」)で懺悔録を掲載した元スーパーフリーの和田真一郎氏も、このプログラムを受講していた。自身を見つめるきっかけとなったと語りつつ、

〈中には全く反省しておらず「出たら被害者と称する女をぶっ殺したい」なんて平然と口にする受刑者もいました〉

 とのエピソードも披露。諸澤氏の、成果が上がらないとの話に符合する。性犯罪常習者である寺本もむろん、これを受けてはいたが、

「私には意味がなかった」

 と、小声で語る面会室の寺本は、うなだれている。

「最終的には出所後になにに気をつけたらいいのか、自分はどんなことに陥りやすいかなどをノートに書きます。いざというときストップをかけるための緊急的な対応策などを、最終的な課題として具体的に書いていくのです。そのコピーは出所後に持ち出すことができ、コピーは自分にとって必要なものでした。お恥ずかしい話ですけれども、出所直後は繰り返し繰り返し、見ていました」

 しかし、広島の事件で服役し出所後、生まれ故郷の長崎に来たことで、“悪い流れ”となったという。

「長崎にいた元妻や息子、親きょうだいから冷たくあしらわれ、会ってももらえない。元妻からは、“息子たちはアンタなんかと会いたくないといっている”とも告げられました。それがかなりのショックだったうえに、私のアパートに警察の方がなんの前触れもなく訪ねてくる。小さなアパートなので住民からもおかしな目で見られ、嫌がらせをされるようになりました」

 アパートにもいられなくなり追い詰められたという。

「どこにも行き場がありませんでした。今回の事件の1カ月前は月の半分をネットカフェで過ごしていた状態です。不眠症で、金銭的にも精神的にもめちゃくちゃだったときに、女の子に目がいってしまい……」

 言い訳にしか聞こえない。そう受け止める向きもあろう。寺本は、“これだけははっきり伝えたい”として、

「東京と長崎の判決で上訴したのは、本心から極刑を望んでいたからです。2人を殺した罪の重さを考えると、一言の言い訳もできず、まったく救いがありません。いまでも自分に下される判決としては死刑しかなかったと思っています」

 なのに、今回の懲役7年の判決には“刑が重い”と控訴している。GPS導入もいますぐ、とはいかない。性犯罪常習者への対処は、効力の見込めない再犯防止プログラムのみという。「司法の敗北」に感じるのは、怒りと虚しさばかり……。

「週刊新潮」2019年3月7日号 掲載

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