通勤通学“地獄”路線は? こんなに違うゴミ出し事情 一人暮らし「都会の死角」ガイド

■一人暮らしさせる前に知っておきたい「都会の死角」(2/2)


 これから始まる新生活に胸を躍らせる若者とは反対に、彼/彼女らを送り出す立場からの心配は尽きない。知っておきたい10カ条をまとめたのが、表1である。このうち、(1)〜(4)の立地にまつわる安全面については前回ご紹介した。が、家の備えは万全でも、都会では通勤通学の途中で犯罪に遭う可能性も高い。

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 その最たるものは「痴漢」だが、男性にとっても“加害者”だとして誤認逮捕される可能性もある。

 立錐の余地もない満員電車が問題なのだが、表2は国交省発表の資料を基に作成した東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県)における路線別混雑率だ。

 指標は100%が定員乗車、つまり座席が埋まって立客も吊り革や柱などに全て掴まっている状態を指す。150%は乗客の肩が触れ合う程度で、まだ新聞が楽に読め、200%だと体が触れ合い相当な圧迫感があるとされている。

 年間200以上の物件取材を行い、全国の不動産事情に明るい住宅評論家の櫻井幸雄氏が話すには、

「近年はラッシュの激しいエリアは避けられる傾向にあります。東西線の千葉から都心に向かう電車など、混雑率が200%に近い沿線は避けた方が無難。狙い目は150%程度の路線で、例えば小田急線は混雑率ランキングの常連でしたが、線路の改良工事で本数が増え混雑が緩和されました」

 改良が必要といえば、混雑率が3位と4位の路線が交わる川崎市の武蔵小杉駅だろう。タワマンが林立し、毎年「住みたい街」の10位圏内に顔を出すが、急激な人口増加により朝は駅舎に入れない乗客で溢れ返っているのだ。駅前の行列は50〜60メートルに及ぶこともあり、改札やホームの増設工事が始まったが、完成は2023年度とまだ先の話である。

■ゴミ捨て格差と、仕送り事情


 住む前に知れば避けられる「痛勤痛学」と同様に、考慮すべきなのが住む場所で異なるゴミ捨て格差だ。

「意外と面倒なゴミの分別ですが、自治体によって細かく違います。千葉市などは厳しく、プラスチックのトレーが手で曲げられるか否かまで分別の際に気を配らなくてはなりませんが、川崎市は本来危険物になるはずの電球でさえ、普通ゴミの日に捨てることができます」(社会部記者)

 ゴミ出しで、「川崎最強伝説」が囁かれる所以だ。都内に目を転じれば、こんな違いも存在していた。

「23区内ではゴミ出しが基本的に無料。中が透けて見える袋を自前で用意すれば回収してくれます」(同)

 片や「東京圏」では、指定のゴミ袋を購入しなければ、ゴミを捨てられない自治体も数多い。最も高額なのは調布市で、40リットル相当の袋が1枚84円もする。次いで高いのは同じく1枚80円で、人気の吉祥寺を擁する武蔵野市や立川市などだ。

 塵も積もれば山となるから、ムダな出費は避けたい。

 表3を見ても分かる通り、学生の一人暮らし向けの家賃相場は東京圏が全国トップで、地方と比較して年間約20万円も余計に払わなくてはならない。

 むろん、負担するのは家族の場合がほとんどで、月の仕送りは欠かせない。あまりに少ないと、子どもは勉強そっちのけでバイト漬けの日々を送ってしまう。

 記憶に新しいところでは、茨城県で起きた女子大生殺人事件も、被害者はお金のために初対面の男に近づき、最悪の結果を招いたと言われる。そんなトラブルに巻き込まれないようにするためにも、仕送りはいくら位が相場なのか。

 全国大学生活協同組合連合会広報調査部によれば、

「最新データでは、仕送りの平均額は月7万円前後と、90年代の平均額に比べ2、3万円減っています」


■「脅し、試し、落とす」


 アベノミクスなど何処吹く風のご時世では、少しでも安い部屋に住んで欲しい。

 そんな親たちの声が聞こえてきそうだが、先の櫻井氏はこんな懸念を口にする。

「安すぎる物件も考えモノで、過去に泥棒が入った事故物件の可能性もあります。相場より2割以上安い物件は要注意で、きちんと業者に理由を尋ねた方がいい」

 とはいえ、答える相手も海千山千なのが現実だろう。

「不動産屋は大手でも中小でも、一見(いちげん)さんには売れ残った物件を押し付ける傾向があります。不動産関係者が親族にいれば都会の業者を紹介して貰う。そうでない場合は、家族や友人に過去に良い物件を紹介してくれた業者を頼る。物件を探し回るより、まずは不動産屋とのコネを見つけることの方が、重要だと思います」(同)

 くわえて業界には「脅し、試し、落とす」という手法があると、櫻井氏は明かす。

「初めに古くて日当たりも悪い最低の部屋を見せて『脅し』、次に先程より条件は良いけど割高な物件を案内して『試し』、最後にそこそこだけど希望の家賃より5千円位高い物件を紹介し『落とす』のです」

 最初に見せられた劣悪な部屋よりマシだと感じ、ついつい契約してしまうが、結果的に当初の条件より高い部屋を借りる羽目に陥る。

 個人向け不動産コンサルティングを行う「さくら事務所」創業者で会長の長嶋修氏に尋ねると、

「家賃など譲れない条件に優先順位をつけておきましょう。不本意な契約をしてしまえば最後、高い敷金・礼金を払ったからと、結局だらだら住み続けることになる。なかなか条件に合う物件が見つからないなら、競争相手の少ない8月まで一時的にウィークリーマンションに住みながら、家探しを続ける選択肢もアリだと思います」

 それぞれの「上京物語」が始まるまであと1カ月。「都会の死角」を上手に避けて、悔いのない新生活の一ページを綴りたい。

「週刊新潮」2019年3月7日号 掲載

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