「スクールカースト底辺」を大人になっても引きずり続けた31歳女性の復讐劇

「スクールカースト底辺」を大人になっても引きずり続けた31歳女性の復讐劇

スクールカーストを引きずっていた頃の服装。マッチングアプリで引きが強そう? 写真:佐藤慎吾

 2018年に東洋経済オンラインで最も記事が読まれ、新書『発達障害グレーゾーン』が現在5刷の気鋭のライター・姫野桂さんが「女性の生きづらさ」について綴る連載「『普通の女子』になれなかった私へ」待望の第3回です。今回のテーマは「スクールカーストが大人になっても与える影響」。姫野さん自身は学校を卒業してもしばらくスクールカーストを引きずり、苦しい思いをしたとのことですが……。

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■上位の子たちから通りすがりに「キモ」と言われ


 中高時代、スクールカースト底辺だった。あくまでこれは、地方の私立中高一貫校での出来事であること、全ての学校にスクールカーストが存在しているわけではないこと、もう18年ほどの時を経ていること、私自身がオタク層をバカにしているわけではないことを先に述べておきたい。

 スクールカースト上位組は流行に敏感でスカートのウエストを3回折って短くし、校則違反の化粧をし、ノリが良く、何をするにも要領が良い子達。ウエストを1回折って膝が少し見える程度の丈にして、そこそこ上位組ともうまく関係を築いている中間層。そして、髪はボサボサ、スカートは膝から下の底辺に分かれていた。

 今はギャルでもアニメや漫画好きを公言し、オタクは市民権を得ているが、当時はアニメや漫画好き=暗い=スクールカースト底辺という構図だった。彼女たちは漫画や同人誌にお金をかけているので「お金がない」が口癖だった。
 
 私は特に好きなアニメや漫画があるわけでもなくオタクではなかったが、スクールカースト上位には入れなかった。自己肯定感の低さと自信のなさから、どうしても華やかなオーラを放つ上位組に話しかけられない。勇気を出して話しかけられたとしても必要最低限の会話で終わってしまう恐怖があった。

 そして難関だったのは校則違反。これは親が絶対に許さない。一度、スカート丈を短くしているのが母に見つかり、こっぴどく怒られたものだった。また、授業参観に来た母親は、上位組の子たちを見て良い顔をしなかったので、この子たちと仲良くすると親に怒られてしまうと感じた。

 スクールカースト上位の子たちからは通りすがりに「キモ」と言われたことがある。ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻るとおしゃべりに興じていた上位組。私が教室に入って来た途端ピタリと話すのをやめ、忘れ物を確保して出ていった後、明らかに私へ向けた嘲笑が響いていたこともあった。悔しさと羞恥心に下唇をかみながら逃げるように廊下を走って学校を出た。
 
 スクールカースト中間層〜底辺の子たちは私を嘲笑ったり責めたりはしない。そして素直で良い子ばかりだったので、私は身を守るためにも底辺に属していた。

 一度、完全に中間層に潜り込もうと「飴ちゃん作戦」を決行したことがあった。飴を渡し、それをきっかけにコミュニケーションをはかろうとしたのだ。一時的にはうまくいった。しかし、そこからが続かなかった。飴を学校に持っていっているのが母親にバレ、これまた叱られた。当時の私は「自分が食べるためではなく、友達をつくりたくて学校に飴を持っていっている」と親に説明できなかった。

 そんな暗黒時代を経て大学進学のため上京。私がスクールカースト底辺だったことなど誰も知らない地で、いわゆる「大学デビュー」した。大学は自由だ。それまでは校則違反だった染髪やメイク、派手な服を着て、外見は変えられた。しかし、内面は何も変わっていないことに自分自身、気づいていなかった気がする。

 自分は底辺だ。それを大人になってもずっと心の奥底で感じていた。特に仕事の上で、「あ、この人絶対中高時代はスクールカースト上位だっただろうな」という人はすぐにピンときて、萎縮する。スクールカースト上位組から受けた嫌な仕打ちがフラッシュバックしてしまい、極度の緊張に襲われてスムーズにコミュニケーションが取れず、仕事がうまくいかなかったこともあった。仕事を降ろされたことさえあった。

 なぜ、大人になって「学校」という閉鎖空間から解放されたのにもかかわらず、底辺時代の羞恥心やトラウマを引きずっているのか。このあたりは、心療内科の主治医から「中高時代に受けた心の傷が原因なのではないか」と言われた。いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)だ。PTSDは虐待を受けたり、命が脅かされるような恐ろしい体験をした人が陥る障害だと思っていたので、まさか自分がPTSDだなんて信じられなかった。しかし医師いわく、PTSDに心の傷の深さは関係ないとのことだった。


■自虐ツイートをしなくなった理由


 だから、「こんなダメな私にちょっと容姿の良い男性が好意を抱いてくれている!」と心が躍ってモラハラ男R氏に夢中になった。自己肯定感が低く、相手の顔色をうかがって自己主張の少なかった私は、モラハラの格好のターゲットだったのだ。
 
 しかし、一応R氏を擁護しておくと、一度だけ「僕と一緒にいて楽しい? なんだかマウンティングばかりしたくなって自己嫌悪に陥るからこの関係をやめにしない?」と言われたことがある。そのときは、どんなに自分を傷つける相手であっても依存対象を失うのが怖くて「そんなことないよ、一緒にいたい」と繋ぎ止めた。そして、R氏は「都合の良い女」を失うことなく、モラハラも続行された。ただ、モラハラを行っている彼自身、一抹の罪悪感を抱いていたことは意外であった。

 話は変わるが、以前の私はよく、Twitterで自虐ネタをツイートしていた。それに「いいね」がたくさんつくこともあったが、R氏は決して「いいね」をせず、そのツイートに対し「痛いことやってるなぁと思っている」と言っていた。私はおもしろいなら別にいいじゃんと思って気にせず自虐ツイートを続けていた。

 私はお笑いに特別詳しいわけではないが、昔から女芸人には何をしてもいい、むしろいじられるのはおいしい、いじられて笑いを取るのが女芸人ならではの魅力だと刷り込みを受けてきたと感じている。しかし、「多様性」や「ダイバーシティ」などの社会問題とともに、それを変えようとする動きをここ数年感じる。

 太っていたり容姿が良くない女芸人たちがこぞってそれを自らネタにし、男性タレントたちがいじる。これはエンターテインメントであり、信頼の名のもとに成り立っており、現実に持ち込むと完全なるいじめだ。芸人の渡辺直美さんは、でっぷりとした贅肉を揺らして激しいダンスを踊ることをネタにしていたが、アメリカに留学して本格的にダンスのレッスンを受け、太っている姿だけではない、正真正銘のお笑いの芸を見事に取り入れた一例とも言えよう。

 また、彼女は大きいサイズの女子でもオシャレを楽しめるよう、「ジャンルにとらわれない様々なスタイルを提案する」をコンセプトとした「PUNYUS(プニュズ)」というブランドもプロデュースしている。このブランドは大きいサイズも取り扱っているので、「体格の良い女子向け」と思い込み、てっきり大きいサイズしかないのかと思っていたが、店舗を覗いてみると、私でも着られるSサイズもある。

 自己肯定感が低くたって、自分に自信がなくたって、誰でもオシャレを楽しめる権利があることが伝わってくるブランドだ。シンプルなデザインのネックレスを探していたとき、どこを探しても好みのものが見つからず、ふらっと立ち寄ったPUNYUSで追い求めていたデザインのものを見つけたこともある。

 2016年に東大生5人が起こした強制わいせつ事件をモチーフにした姫野カオルコさんの小説『彼女は頭が悪いから』の主人公・美咲は、最終的に東大生たちからわいせつ被害を受ける。これは美咲が「いじられてもいい女子」「自虐キャラ」だったからだと言える。しかし、「いじられていい女子枠」の女子は内面傷ついている。そして、傷ついていることに気づいていない女子本人もいるだろう。

 今、私はスクールカースト底辺だった事実だけを受け止め、コンプレックスはほぼ消えた。これは、R氏からモラハラを受け、精神が崩壊し、そこから再生した結果なので、きっかけを作ってくれたR氏にある意味感謝すべきなのかもしれない。

 そして、最近は自虐ツイートをなるべくしないようにしている。自虐をしている女子は「いじられてもいい女子」と周りにアピールして、モラハラ男を引き寄せる因子となるからだ。失敗談を面白おかしくツイートしたり飲み会で話したりするのはかまわないが、それが、女性蔑視のいじりに繋がらないよう注意が必要だ(いじられキャラでやっていきたい人はかまわないが)。


■モラハラ男の選択


 スクールカースト底辺で嫌がらせを受けたこと、モラハラを受けたことは心の傷として深く刻まれている。しかし、その闇から抜け出せた私は先日、R氏にモラハラの謝罪をさせた。

「あなたのせいで私は心の病気になりました。だから、以下の3つの条件から選んでください。

1. 直接会って心から謝罪の言葉を述べる。
2. 1年分の治療費を支払う。
3. 彼女と3人で会って私との行為中の動画の鑑賞会を行う」

 そうLINEを送った。R氏は1を選び、年季の入った喫茶店でモゴモゴと伏目がちに謝罪の言葉とともに頭を下げた。ちなみに3であるが、R氏はコトに及ぶごとに動画撮影をしたがった。当初、流出を恐れた私は頑なに拒んでいたがある時、「あっ、これ、撮って彼女に見せれば浮気の証拠になる!」とひらめき、撮影を許可した。ベッドの端にスマホを立てかけて撮影する際「もっとこういう角度のほうがいいんじゃない?」とわざと彼の顔が写るようにしたこともある。

 その後「あの動画、欲しいな?」とLINEをし、データをゲット。心の中でガッツポーズをした。彼女の連絡先は分からないが、本気になれば共通の知人経由で調べられる。我慢できなくなったらそれを彼女に送りつけようと、当時は本気で思っていた。男に身を委ねて心身ともに悦に浸っているように見えても、女は行為の最中、驚くほど冷静なのだ。頭の中で常に次のことを考えている。その動画は今でも私のスマホ内に眠っている。

 健康的な幸せを得たいならば自虐をしないことが一番だ。確かに自虐はその場が一時的に盛り上がるので「自分が役に立っている」という錯覚に陥る。でも、自虐なんてしなくても、自分の役目を果たして相手も自分も楽しい気持ちになれる方法は他にもある。

 スクールカーストの話からだいぶそれてしまったが、カーストに必要以上に縛られて、それをずっと引きずっていた自分を「そんなん気にするな。もっと広い視野を持て」と言って、抱きしめてあげたい。

姫野桂さん連載『「普通の女子」になれなかった私へ』バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年4月12日 掲載

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