SNS「裏アカウント」は日本文化にマッチ? 女子高生の所有率は7割

SNS「裏アカウント」は日本文化にマッチ? 女子高生の所有率は7割

若者たちは裏アカウントをどのように使用しているのだろうか

 ツイッターなどSNSで、裏アカウントを使用する日本の若者は多い。海外でもインスタグラムの裏アカウントはfinsta(フィンスタ、fake+instagramの略)と呼ばれポピュラーだ。裏アカウントが若者の共通ニーズとなっている理由について『シェアしたがる心理〜SNSの情報環境を読み解く7つの視点〜』(宣伝会議)の著者で、電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬氏に聞いた。

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 情報セキュリティメーカーのデジタルアーツの「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」によると、女子高生のSNSの裏アカウント所有率は約7割(68.9%)にものぼり、今や裏アカウントを所有していないほうが少数派だ。

 そんな若者たちは、裏アカウントをどのように使用しているのだろうか。

「代表的なのは、趣味用のアカウントですね。これはメインのアカウントで繋がっているリアル(現実)の友達とは熱量が噛み合わないような話題について、遠慮なく発信したり会話したりするために使います。例えば、ジャニーズやディズニー専用アカウントなどがあり、SNS上で趣味が合う人同士のコミュニティーができています」(天野氏、以下同)

 趣味用アカウントのほかには、仕事用アカウント、さらに「闇アカ」などと呼ばれ、ネガティブな発言や愚痴、悪口を言うためだけのアカウントも。あるいは、関係の浅い友達用と親友用を使い分けるケースもある。

 男女ともに共通してこのような使い方がされているが、こと性の話題に関しては裏アカウントの使用法が若干異なるようだ。

「女性の場合は、顔や正体を隠してセクシーな姿を投稿してチヤホヤされたりするアカウントがありますね。男性で比較的多いのはナンパアカウント。そのアカウントを使って、男性はナンパやマッチングアプリの『戦歴』を報告し合います。小さなコミュニティーができあがり、そこで有名になったユーザーは『有料でナンパ術を伝授する』みたいなビジネスを始めることもあるようです」

 いずれにせよ、SNSユーザーの多くは、表ではおおっぴらにできないが、多くの人が興味関心を抱くようなことを裏アカウントで発散している様子が窺える。


■キャラの使い分けが処世術


 リアルの友達に話しづらい趣味や性の話を誰かとしたい、という欲求は老若男女問わずあるものだ。しかし何故、その中でも特に若者が複数のアカウントを作りたがるのだろうか。

「今の若者は自分の『キャラ』に敏感です。自分に求められているキャラを、友達との関係性や空気から察しています。SNSでも、そうしたリアルな友達と繋がっているためキャラにそぐわない言動はしづらいし、尖ったことをシェアして嫌われるのを恐れる気持ちもあると思います。だから、表では見せない言動を裏アカウントでするのでしょう。人の心には、表面ならぬ裏面、他人には見せない人格や趣味、どす黒い部分などは当然ありますが、現代はそれがSNSの登場によって可視化されるようになりました」

 中・高・大とライフステージが変わる時期は、アカウントを高校、大学の友達用などと使い分けることも多い。これは、それまでのキャラとは心機一転し、新しいコミュニティーで受け入れられやすいキャラになるためだろう。

「アカウントひとつひとつに自分のさまざまな人格のレイヤーを宿すことが可能になり、それぞれのコミュニティーで求められる顔を使い分けることができるようになりました。アカウントを複数もつことは彼らにとっては処世術の一つなのです」

 承認欲求を満たしたいという気持ちも若者を裏アカウントに走らせる動機になっているようだ。先述したセクシーな姿を晒す女たちはまさにその典型例といえる。

「彼女らはリアルではできないことをSNSに投稿することで承認欲求を満たしているのでしょう。画像をシェアすると何百もの『いいね』がつきます。本名ではなく、友達や知り合いとも繋がっていないからこそできることです」

 裏アカウントは多くの人がもつ変身願望を叶えてくれるツールなのだ。


■本音と建前がある日本文化にマッチ


 ここ近年、はあちゅう氏の著書『仮想人生』(幻冬舎)や朝井リョウ氏の著書『何者』(新潮社)など、裏アカウントを題材にした小説が増えた。現代の若者の心理を描くには、裏アカウントはこれ以上ないテーマといえる。

「今やネット上でさまざまな人格を演じることは、当たり前の時代になっています。そうした人格の多面化と可視化に、若者はいちはやく適応し始めているのでしょう。日本は文化的に本音と建前の性格が強いという素地も関係しており、複数のアカウントをもつことは生きていく上で合理的な判断だと思います」

 しかし、芸能人や著名人は、裏アカウントが白日の下に晒されることで、炎上することもしばしばある。

 2015年、元AKB48(現在女優)の島崎遥香(25)は、インスタグラムのオフィシャルアカウントでジャニーズJr.の安井謙太郎の裏アカウントに接触し、「デートしようよ」(安井)「子供欲しい」(島崎)などと意味深な会話をしていたことが発覚。2017年には、アイドルグループ・HIGH SPIRITSの石井もえ(23)が、ツイッターの裏アカウントがばれたことで「世の中ブスしかいないwww」などの悪態や彼氏とのイチャラブ写真が明るみに出た、と報じられた。

 昨年末も、青森市議会議員の山崎翔一氏(28)が、ツイッターの裏アカウントで「年金暮らしジジイ」「おかまの物乞い」などと差別発言をして炎上したばかりだ。

 今を生きる多くの若者にとって裏アカウントは必要不可欠な存在のようである。だが、その一方で諸刃の剣であることも肝に銘じておきたいところだ。

取材・文/沼澤典史(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年5月2日 掲載

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