東京23区内タワマン暮らしなのに「コジ活」にハマる専業主婦の心の闇

何不自由ない暮しをする世帯の専業主婦も『コジ活』 生活のほとんどを無料で貰う活動

記事まとめ

  • 主婦たちの間で『ポイ活』や『ポン活』などといった『お得活動』が流行しているという
  • 『コジ活』とは、食品や生活雑貨など、生活のほとんどを無料でもらってくることをいう
  • 『コジ活』をする人の中には、何不自由ない暮しをしている世帯の専業主婦も多いという

東京23区内タワマン暮らしなのに「コジ活」にハマる専業主婦の心の闇

 不景気が当たり前の世の中で、主婦たちの間で流行しているのが、「お得活動」。クレジットカードやポイントサイトでポイントを貯めて現金のように使う「ポイ活」や、コンビニのポイントを貯めて割引クーポンで生活用品を調達する「ポン活」など──最近、テレビのニュースや主婦向けの生活誌などで取り上げられることも増えてきた。

 中でも、食品や生活雑貨から高級コスメなど、生活のほとんどを無料でもらってくる「コジ活(物乞い的な活動)」で賄う主婦がいることをご存じだろうか。

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■主婦版「株主優待の桐谷さん」!? 「お得活動」で超節約生活


 就職氷河期に始まり、不況バリバリの平成時代のほとんどをフリーランス・ライターとして子無し二馬力の自由な生活を謳歌していた筆者。しかし、妊活スタートを期に緩やかな(プレ)マタハラで半引退を余儀なくされ、稼ぎようがないのにプライドだけが高い兼業主婦になり下がってしまった。そこで、有り余る時間とスキルの活用先として見出したのが「お得活動」と呼ばれるライフハックだ。

 空いた時間に街角で開催されるサンプリング(サンプル配布)や、イベントに参加するだけで、コスメや生活用品が手に入る。ちょっとした時間と労力と引き換えに手に入る戦果は金額に換算すると、多い月で10万超、平均して月に5〜6万。実質稼働週1〜3日程度の本業を含めると、筆者の実質収入は20万を超えることになる。決して高収入とは言えないが、「主婦の副業」としては十分すぎる金額だろう。実際、副収入として確定申告が必要になるレベルである。

 この活動のおかげで、食器用洗剤やシャンプーといった日用品、また、スキンケアやメイク用品などのコスメにはほぼお金を支払うことはなくなった。外出時も、インスタントウィン(その場で当たりが分かるSNSくじ)などで手に入れた無料クーポンでドリンクを購入、食事は当選したお食事券で、と交通費以外はほぼ手出しゼロという日も多い。ある意味究極の「キャッシュレス生活」が実現してしまっている。

「株主優待の桐谷さん」で知られる元プロ棋士・桐谷広人さんは、株主優待の活用で生活費はほぼゼロで暮らしているそうだ。しかし、そもそも桐谷さんの株式投資は、一般市民が株に使える金額を大きく超えている。それに対して、「お得活動」に必要なのは交通費とインターネット接続料、SNSくらい。スマホが1台あれば、ほとんどの生活費を無料にすることが可能だ。一つひとつの釣果は少なくても、「ちりも積もれば山となる」。そんな「ちりつも」な生活スタイルは「コジ活(物乞い的な活動)」とも称されている。

■コジ活のために電動自転車買い替えという本末転倒ぶり


 無料でものをもらって生活する──それだけ聞くと、家計に困った人の節約テクニックと思われるかもしれない。共働きでも収入が足りず、ヒーヒー言いながら子育てをしている夫婦も多いこのご時世。専業主婦たちも、夫の収入がそれほど多くなくて家計の足しにコジ活に手を出しているのでは……と思われる皆さんもいるだろう。

 確かに、生活費節約のために「お得」をする人も少なくはない。しかし、ヘビーに「コジ活」をしている人の中には、むしろ何不自由ない暮らしをしている世帯の専業主婦も多い。都内一等地のタワマンに子ども2人、そこそこ稼いでくる夫──そんな生活をしながらも、コジ活に1日のほとんどの時間を割く主婦たちがいるのだ。今回はそんなコジ活主婦の生活を覗いてみたい。

 主な活動時間は、子どもを幼稚園や小学校に行かせている間。11時頃からスタートして、15時ごろまで、毎日のように渋谷や表参道、銀座などに繰り出して、コジ活に精を出す。

 駅前などで試食や試供品を配布するサンプリングイベントや、イベントスペースやデパートでのポップアップショップをハシゴして回るのだという。1日に1件2件では済まず、有楽町・銀座で2〜3件、表参道・渋谷で2〜3件など、いかに複数のイベントを効率的にクリアするかがポイントだ。

 外出中は、イベントなどの無料配布や、SNSのインスタントウィンでゲットしたクーポンで飲食物をゲットし、小腹を満たす。交通費も、地下鉄の1日乗車券を使って浮かせるのは当たり前、猛者になると桐谷さんよろしく23区から都下まで自転車で回る主婦も。

 自転車派のコジ活主婦の一人は、活動を始めてからあまりにハードな乗り回しっぷりに長年愛用した子乗せ電動自転車が耐えきれず、故障を繰り返すようになったという。

「長距離だと、子乗せ自転車の小さな車輪ではいくら電動とはいえ結構つらくなってくるんですよ。修理代もかさむし、思い切って普通の電動自転車を買ってしまいました」

 たかが「コジ活」のために10万近い投資もいとわない姿に、本気がにじむ。

 そして、夕方には各所で大量のお土産を刈り取り、試供品や現品サンプルでパンパンになった袋を抱えて帰宅。タイムリミットは基本的に子どもたちもしくは夫が帰宅するまでなのだという。

「一応主婦なので(笑)、朝は夕飯の仕込みや洗濯をして出かけますよ。夜はイベント巡りで疲れ切っちゃって夕飯の支度なんてできないから、出かける前の準備は大切ですよ」

 なんだかんだ専業主婦らしい面もあるようだ。とはいえ、高級ブランドのショップオープンのレセプションなど、“おいしい”イベントが夜にあるときは、いったん帰宅してから再び子連れで外出することもあるという。


■お得のためなら家族も“総動員”、ネットストーキングで情報収集


 子どもたちもすっかり「コジ活慣れ」している。週末ともなれば、子守役の夫も引き連れて家族でイベントに参加。子どもも参加者の1人とカウントするイベントでは貴重な戦力となることも。来店特典はもちろん、くじ引きやスタンプラリーも逃さず参加し、戦利品をゲットして帰るのだという。

「子どもたちも1人って数えてくれるイベントは神。お土産が増えるのはうれしいし、抽選に参加できるならさせますよ。上の子は妙にヒキがよくて、当たりを引くことが多いんですよね」

 一通りの家事が終わり、子どもを寝かしつけた後、深夜も活動は続く。まずは、戦利品を床にずらりと並べて写真に収める。画像はインスタグラムにアップしては「いいね!」を稼ぐ。乱雑に大量のサンプル商品が並べられた画像はいわゆる「インスタ映え」とは程遠いが、時には3桁の「いいね!」がつくことすらある“映える”コンテンツだ。

 戦利品のアップと同様大切な作業が、インスタのタイムライン巡回。そのため、情報源は同じくイベント巡りを趣味にしているSNSアカウントの投稿だ。画像を一枚一枚、目を皿のようにしながらチェックしつつ、誰がいつどこでどんなお土産をもらっていたかを突き止める。ハッシュタグを追い、イベントの実態を解き明かし、1次ソースであるオフィシャル情報を突き止める。その様はまるで「ストーカー」だ。

 イベントでのお土産配布は基本的に先着ベースで行われることが多く、より早くよりレアな情報をゲットすることが重要になる。そのため、基本的に情報の共有は仲の良い身内だけ。ライバルたちには情報が漏れないよう、あえてお土産画像をイベント終了後にアップして、マウントだけ取るというようなアカウントも見受けられる。

 生活苦のためでもなく、節約のためでもなく、ただただ「無料で大量にものをもらう」ことに腐心し、時に協力しあい、時にけん制しあう主婦たち。「人より(いい)ものを(たくさん)もらいたい!」という思いだけが、彼女たちのモチベーションだ。

■戦利品であふれる自宅、冷たい夫の視線


 コジ活主婦たちの何人かに自宅の写真を見せてもらった。とある主婦の家では、玄関の靴箱の上に無料でもらったペットボトルドリンクがずらりと並び、食糧庫はストックでパンパン。納戸や戸棚は、サイズがまちまちで整理しきれないコスメがあふれんばかりに詰め込まれている。

 在庫過剰となった「戦利品」で埋め尽くされた自宅を見る夫の視線は、一様に温度が低い。「そんなに稼いでないわけじゃないのに、なんでそんなことをするんだ」と自らの収入に不満があるのではといぶかしがったり、「どうせいつか飽きるだろう」と冷ややかに見守ったり──確かに実利はあるので大声で反対はしないものの、賛成も協力もしないという夫たちが多いそう。

 東京23区内にマンションを構え、専業主婦を“飼える”レベルの稼ぎのある夫を持ち、子どもも2人いる「標準世帯」で、何不自由なく暮らしているはずの主婦たち。平成も終わりを迎えた昨今では、絶滅危惧種ともいえる「超勝ち組」のはずだ。

 表向き、「いち早く新商品に触れられる」「商品知識を深められて知的好奇心が刺激される」など、もっともないいわけをするものの、その実やっていることはただの「物乞い」。どうして彼女たちは、そんなにもモノを集めて回るのか──。


■コジ活は一種の自慰行為


「そこにイベントがあるから。イベントをやっていたら全部行きたいし、もらえるものは全部もらいたい」

 あるコジ活主婦は、イベント巡りに血道を上げる理由をそう説明する。

 筆者も含め、コジ活に過剰にハマる女たちというのは、本質的には宝塚やジャニーズ、韓流スターに熱中する女性たちの精神構造と大した差はない。日常生活では得られない刺激や満足を、ファンタジーに求めているという点では共通していると言えるだろう。

 しかし、コジ活の危険なところは、それに現実的な生活への還元があるということ。ただただ消費するだけの芸能人の追っかけと違って、家計への貢献も大きい。それが、彼女たちにとっても大義名分になっている。だからこそ、家族も友人も、彼女たちの行為を全否定し、やめさせようとすることは難しいし、本人も辞め時を見失っている感もある。

「ポイ活」「ポン活」といった比較的ライトな「お得活動」がメジャーになるのに伴い、SNSでイベント巡りにハマっていることを公言する「コジ活女子」は急増している。もしかしたら、あなたの身近にも、ひそかにちょっとオカシイ「コジ活女子」が生息しているかもしれない。

十二 社(とに・やしろ)
ライター。出身高校の校訓に基づき、語学教育からエンターテイメントまで、全天候型のラインティングを手掛ける(つまり器用貧乏)。東京生まれ東京育ち暗そうなヤツはたいがい友達だった中学時代を経て、高校・大学・社会人と誤った方向にデビューを重ねた末、妊活スタートを期にポイ活・タダ活などの「お得活動」にハマる。特定分野に特化したマイクロインフルエンサー(笑)を目指して鋭意努力中。

2019年5月21日 掲載

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