「令和ご朱印」転売続出でスタンプラリーに成り果てたブームの末路

 これでは、参拝者失格の烙“印”を押されても仕方あるまい。令和へ改元されるタイミングで勃発した「ご朱印騒動」である。ブームに拍車がかかり、数時間待ちの行列に並び苛立つ人、巫女に罵声を浴びせる者、高額で転売する輩まで現れた。

 新元号へ代わった5月1日、東京に鎮座する明治神宮にはご朱印を求めて、長蛇の列ができていた。看板には10時間待ちの文字。明治神宮の担当者に聞くと、

「そうした看板を出したのは事実ですが、その後、対応に努めたため、実際は最高で8時間待ちでした。御代替わりにあたって神社に参拝する姿に、日本人本来の純粋な心の発露を見た気がしました」

 思いを巡らしたのも束の間、すぐに裏切られることになる。手に入れたご朱印をオークションサイトなどで転売する人が続出したのである。メルカリや他のサイトで検索すると、数千円から数万円、中には、27万3千円まで高騰したご朱印もあった。高額商品となったそれは4月30日と5月1日の日付が入った明治神宮のご朱印のセットで、「ヤフオク!」にて6日に落札されている。

「ある転売サイトには遺憾の意を伝え、販売を即刻やめてほしいと、数回申し入れました」(同)

 ご朱印の頒布をやめてしまった神社もある。17日からの三社祭で沸いていた浅草神社だ。例年、祭りに合わせて特別ご朱印が授与されるが、今年は中止となった。転売に加えて、神社職員や巫女に対して暴言を吐いたり、「こっちはお客さんだぞ」などと、罵声を浴びせたりする参拝者がいたからだという。


■ご朱印先行型


 ご朱印研究家の村上哲基氏が解説する。

「そもそもご朱印の起源は鎌倉時代にはすでに存在していた六十六部という行者にまでさかのぼることができます。全国66カ所の神社やお寺に法華経の写経を奉納し、受け取りの証明をもらっていました。時代は下って、19世紀に入ると庶民も旅行できるようになり、手作りの納経帳が広まっていきました。最近では、限定ご朱印も登場し、それがSNSで拡散されることでブームが過熱していったのです」

 宗教学者の島田裕巳氏は、

「平成に入ってから、初詣など神社仏閣への参拝客が減っているのも事実。そこで、人を集める手段として特別なご朱印を作った。今回の事態を招いたのは神社仏閣にも一つの要因があったと思います」

 と、神社側の苦しい台所事情を説明する。結果、

「いまは参拝もせずにご朱印だけ手にする“ご朱印先行型”の人が増えています。何のためのものか、もはや分からなくなってしまいました」(同)

 文字通りのスタンプラリーに成り果てたのだ。

「日本人もここまでダメになったかという思いです」

 そう語るのはジャーナリストの徳岡孝夫氏。

「本来、参拝して受け取るはずのものを転売によって手にするのであれば、ご朱印を集める意味はありません。四国八十八カ所に代表されるように、苦労して巡り歩くという行為に価値がある。ご朱印を大事にする、今はもうそういった時代ではないのだ、という寂しさを感じますね」

 売る方も買う方も転売する方も五十歩百歩。古来、庶民が崇める“スター”だった神々から、溜め息が聞こえてきそうだ。

「週刊新潮」2019年5月30日号 掲載

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