「令」に一番近い日本語は「うるわしい」 「令和」の考案者と目される国文学者が意味を解説

 元号が平成から令和に替わり、10連休も終了した。そこかしこで持て囃される「令和」。その考案者と目される国文学者・中西進氏はこの4月インタビューで「令」という漢字について問われ、「辞書を引くと、令とは善のことだと書いてあります。つまり、令の原義は善です」と言い、次のように答えていた。

〈「品格のあること、尊敬を受けること。そういう意味での『よいこと』が令です。そして、令に一番近い日本語は何かといえば、『うるわしい』という言葉です」
 ――安倍首相は「美しく」と談話で言っていましたが。
 「これからは『うるわしく』と言うべきでしょうね。うるわしいと美しいは、イコールではありません」〉(「朝日新聞」2019年4月20日付)

 中西氏は続けて、「うるわしいは、整っている美しさのこと」とコメントしているが、では「美しく」と「麗しく」、この2つの日本語の本来の意味はどのようなものだったのだろうか。中西氏の著書『ひらがなでよめばわかる日本語』から引用しよう。

〈(「うつくしい」は)本来は「かわいい」という意味でした。「うつくし」は「いつくし(慈し)」から変化したものだといわれ、目上の者から見た、目下の者のかわいらしさをいいます。
 では、「目鼻立ちの整った端正な美しさ」を、古代ではどう表現したのかというと、「うるはし(麗し。〔うるわしい〕の古語)」といいました。「うるはし」のもとのことばは「うるふ(潤う)」だといわれますが、きちんと整った美しさに使われます。心に潤(うるお)いを与えるものは、この高貴さなのではないでしょうか〉

■平和への祈り


 ちなみに「令和」の典拠となった「初春令月、気淑風和」。元号自体には入っていないが、実はそこに登場する「春」という言葉にも様々な縁起の良い意味があると、中西氏は同書の中で説いている。

〈「はる」には、天気がよくなったり晴れ晴れとする「晴る」、芽が膨らんだり強く盛んになったりする「張る」、そして田畑を耕して開く「墾(は)る」などがあります。「晴る」も「墾る」も、明るくなる、見通しがよくなる、そういう意味です。ちなみに、広く平らなところを意味する「はら(原)」も、「はる」の仲間だといわれています。そして「張る」も盛んになってくるという意味をもちます〉(同書より)

 つまり「空が明るく晴れ、心は昂揚(こうよう)し、草木は芽ぐみ、身体活動は盛んになる」、そういう時期なので「はる」と名付けたと、続く。そして、「はる」は「はらう(祓う。古語は〔はらふ〕)」とも関係が深いという。

〈「はらふ」は、「はる」に「ふ」が付いたことばです。「おはらひ(お祓い)」は、悪いものを取り除いてきれいにすること。まさに、冬が取り払われてやってくるのが、「はる」です〉

 現在89歳の中西氏は、昭和20年、空襲を経験していた。先の記事でも「爆風で衣服を吹き飛ばされ、ろう人形のようになった裸の遺体がたくさん転がる中、軍需工場へ出勤したのです。機銃掃射も受けました」と述べている。中西氏の「令和には平和への祈りも込められている」との言葉は重い。

 悪いものが取り除かれ、見通しがよく麗しい時代へ――。戦争も知る中西氏が新時代「令和」に込めた想いがうかがい知れるのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2019年5月17日 掲載

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