中年ひきこもり「川崎事件」型と「次官事件」型では生活様態がまったく違う

 カリタス小学校の児童らを襲撃した「川崎事件」と家庭内暴力の末に実父が我が子を殺害した「次官事件」。立て続けに起きたこれら二つの事件の当事者は、同じひきこもりでも、生活態様はまったく異なっていた。だが両者こそ、ひきこもりの二大類型と言えるのだという。

「いろいろな方を見てきて、ひきこもりは大きく二つに分けられると感じています。川崎の岩崎隆一容疑者のように家庭内暴力がない、おとなしいタイプ、もう一つは亡くなった熊沢英一郎氏のような家庭内暴力を伴うタイプです」

 と語るのは、精神科医の片田珠美氏である。

「家庭内暴力が激しいタイプは、親を責めたてます。俺がこんなになったのはお前のせいだ、自分がうまくいかないのは全部親のせいだと責める。彼らは、ある時期までは勉強ができて、その自負が本人を支えていることが多い。でもその後にうまくいかなくなって、それをすべて親のせいにして暴力にいたるのです」

 このタイプは、幼いころから勉強を強要され、友達と遊ぶことやテレビゲームを禁じられるようなエリート家庭に多いという。

 一方「おとなしい」ひきこもりタイプというのは、

「親を責めてもどうしようもない、という気持ちを強く持っている。彼らは家族とは距離を取ります。岩崎容疑者の場合は実の親ではありませんが、伯父夫婦と住んでいて、育ててもらった恩は感じながらも接触はせず、微妙な距離感を持って生活していました。そしてひきこもりを『否認』し、絶妙なバランスの中で日々を安定させてきたのだと思います」


■現実と向き合った時


 それでは、なぜそんな人物が女児ら20人殺傷という凶行に及んだのか。

「責める気はありませんが、伯父夫婦の手紙によって自分がひきこもりであるという現実に向き合うしかなくなり、その距離感が崩れたのだと思います。それで、ひきこもりを続けていくことが無理になった可能性がある」(同)

『「子供を殺してください」という親たち』などの著書がある(株)トキワ精神保健事務所の押川剛氏も、同じところに注目する。

「私の見るところ川崎のケースは、岩崎容疑者が親族を完全に従えている状態でした。自分より下に見ている相手から“ひきこもり”と指摘されたことで、彼はプライドを傷つけられ逆上してしまった」

 岩崎宅からは猟奇殺人事件を扱った雑誌が押収されたが、それはデアゴスティーニの「週刊マーダー・ケースブック」の「シャロン・テート殺人事件」「パリ留学生人肉食事件」の2冊という。殺人への意志はこれらを読みながら固められていったのか。

 次官事件は親がどこにも相談することなく、自ら手を下し禍根を断ち切った。一方、川崎の伯父夫婦は行政に相談している。だが、

「川崎市側は“無理矢理介入して家族関係を壊してしまうよりも、静かに見守る”ことを選んだと話しました。しかしそれでは“家族の判断で解決してください”と言っているに等しい。川崎市はひきこもり対策の窓口がしっかりしているのですが、初動を誤ったと思います」(同)

「週刊新潮」2019年6月13日号 掲載

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