ひきこもり100万人時代、「8050問題」はなぜ起きたのか

 今年3月、内閣府は40歳から64歳を対象としたひきこもり実態調査の結果を発表した。中高年層を対象にした調査は初めてである。そこで明らかにされたのは、あまりに衝撃的な数字だった。

 その数61万3千人――。若年層を越える結果が出たのである。

 内閣府は2010年、16年にもひきこもりの調査をしているが、この時は15歳から39歳が対象で、それぞれ約70万人、約54万人という数字が出ている。

 今回の数字に世代の違う前回の数を加味すれば、現在、おおよそ100万人のひきこもりがいると考えられる。そのなかでも深刻なのは、80代の親に50代のひきこもりがいる世帯の困窮と孤立で、それは「8050問題」と呼ばれる。

「80代の親が病気になったり、介護が必要になったりして、50代のひきこもりの子どもを経済的に支えられなくなっているのです。外部の人に相談せざるをえなくなって、介護ヘルパーやケアマネージャーが気づいたり、またひきこもっている人の兄弟が親の死後のことを考えて誰かに相談するなどして、50代のひきこもりの存在が社会に見えてくるようになったんです」

 そう語るのは、ノンフィクションライターの黒川祥子氏である。現在ではさらに10歳繰り下げた「7040問題」という言葉もあるから、事態はいっそう深刻化の様相を呈しているのである。


■価値観の押し付けで


 今回初めて明らかになった中高年調査の概要を紹介しておこう。

 調査では、「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」「趣味の用事のときだけ外出する」ことが6カ月以上続く場合をひきこもりと定義する。

 年齢の内訳は、60〜64歳が26%、50代が36%、40代が38%である。そして全体の70%以上が男性で、期間は5年以上が過半数を占める。30年以上も6%いる。

 きっかけとなったのは、退職、人間関係、病気、職場に馴染めなかったこと、就職活動がうまくいかなかったことなど。そして、相談相手についての質問では、「誰にも相談しない」と答えた人が44・7%、次点の「友人・知人」の21・3%を大きく引き離す。

 なぜ現在の中高年層にこれほどひきこもりがいるのだろうか。

「いまの80代の親は、高度成長で経済が右肩上がりの時期を生きてきて、子どもを家庭に抱え込むことができたんです。私が取材した事例でも、豪邸でひきこもっているケースも稀ではない」

 と先の黒川氏は振り返るのだ。

 また、ひきこもりの支援をしているNPO法人「遊悠楽舎」代表理事の明石紀久男氏はこう指摘する。

「80(70)代は敗戦後の大きな価値観の変更の中で経済優先の生活を強いられるも、それなりの成功を収めて来た。その価値観の延長上にある彼らは、子ども世代からの気持ちをわかって欲しい、という想いを受け止めることが出来ず、いがみ合うか、見ぬふりか、の関係になり、そのことがひきこもる状態を生んできたのではないかと思う」

 親世代の責任は免かれ得ないのである。

「週刊新潮」2019年6月13日号 掲載

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