伊藤詩織さんと訴訟の元TBS山口敬之記者への経済支援を菅義偉官房長官がNKBに依頼か

記事まとめ

  • 元TBSの山口敬之氏と、彼にレイプされたと訴える伊藤詩織さんが民事法廷で対決した
  • 詩織さんの"告発"で失われたという顧問先・NKBに菅義偉官房長官の関与が見え隠れする
  • 菅氏がNKB会長に、TBSを辞めた山口氏に「金を払ってやってくれないか」と頼んだという

「伊藤詩織さんvs.山口敬之記者訴訟」で明るみに出た「菅官房長官」の経済支援額

■「伊藤詩織さん」vs.「官邸ベッタリ記者」の法廷対決(2/2)


 7月8日、山口敬之元TBSワシントン支局長(53)と、彼にレイプされたと訴える伊藤詩織さん(30)が民事法廷で対決した。1100万円の損害賠償を求めた詩織さんに対し、山口記者は1億3千万円の損害賠償を請求、“反訴”に出た形である。

 山口記者の逸失利益も含まれた、1億円あまりの請求額。詩織さんの「告発」によって失われたという顧問先には、菅義偉官房長官の関与が見え隠れする。

 ***

「顧問料として月額42万円を振り込む」「必要と認める範囲で交通費その他の経費を支払う」といった文言が、【顧問委託契約】と題された書類に並ぶ。これは「山口反訴状」から明らかになった内容だ。

「山口に資金提供しているのは、東京の有楽町にあるNKBという会社です。ここは交通広告の代理店で、JRの中吊りなどを扱っています。オーナー兼会長は滝久雄と言って、飲食店検索サイトの『ぐるなび』を1996年に開設した人として有名です」

 と、広告代理店関係者。NKBの源流を辿れば、滝会長の父が創った交通文化事業株式会社に行き当たる。取締役には、五島慶太(東急総帥)や小林一三(阪急創業者)、加賀山之雄(国鉄第2代総裁)らが名を連ねていた会社で、滝会長は父親の死後、これを継承した。

「この滝会長と菅さんが仲良しなんです。山口がTBSを辞めた後に、菅さんが“山口にカネを払ってやってくれないか”と滝会長に依頼したそうです。具体的には月42万円で、実際に払っているのは横浜にあるNKBの子会社。本体の方が業績がよくないので、そうなったということですが、子会社の経営陣は不満を抱えていたようです。“会社と何の関係もない山口に、ちゃんとした人を1人雇える額をなんで払わなきゃいけないのか”と」

 山口記者がTBSを退社したのは16年5月。顧問契約はその年の11月に始まっている。

「NKB以外にも五つ程の会社が山口に小遣いを支払っていると聞いています。ただ、新潮の告発記事が17年の5月に出ると、“さすがにこれはヤバい”となって、支払いをストップした。一度も会社で見かけたことがないらしい山口に300万円くらいは流れてしまったわけで、経営陣はとにかく憤懣やるかたない様子だったようです」(同)


■菅長官と会長のライン


 事実、山口反訴状では、詩織さんに準強姦被害を訴え続けられ、ジャーナリストとしての社会的生命を絶たれたなどとして営業損害1億円を挙げている。テレビ番組出演などの営業収入1400万円ほどに加え、顧問料が2社で約750万円あったのに、18年度は無収入に陥った。名誉回復して従前通りの収入を得るための時間を見積もって、約2千万円×5年=1億円の計算になるという。2社の顧問料だけでサラリーマンの平均年収を凌駕するほど、政権中枢とのベッタリはことに美味しい。

 先の滝会長は昨年、母校・東工大に30億円を寄付し、滝夫妻の名を冠した「Hisao & Hiroko Taki Plaza」が建設中だ。母校愛が高じ、背伸びをしたシワ寄せが子会社に回ったのだろうか。山口記者へのお小遣いについて滝会長に質すと、会社を通じ、

「伊藤詩織氏と山口敬之氏との間の民事裁判に関しまして、弊社は一切関係がありません」

 と、答えにならない回答。「Hisao & Hiroko Taki Plaza」にその名が並ぶ、滝会長の妻・裕子(ひろこ)さんにも聞いてみると、

「ウチではねぇ、私が喋るくらいで主人は仕事のことは一切話さない人なんですね。(菅さんとの関係は)そんな5、6年なんて話じゃなくて、昔からの知り合いだと思います」

 他ならぬ滝会長夫人の証言である。菅長官と会長の浅からぬラインは存在する。他方、長官と山口記者の関係については、山口記者がものした自身の礼賛本『総理』に、こんな件(くだり)がある。

「あの夜の山口君の電話がなければ、今日という日はなかった。ありがとう」

 安倍晋三氏が自民党総裁選に勝利した12年9月、菅氏から、こう謝辞を述べられたのだった。それは、山口記者が「あの夜」に菅氏に電話を入れ、出馬を渋る安倍氏本人の口から聞き出した心境を伝えた結果だという。煎じ詰めれば、山口記者が今に至る「安倍一強」の生みの親とも言えるわけで、お小遣いの手配のため、長官が“犬馬の労”を取っても不思議ではなかろう。


■特別な案件だから


 今月、ある日の早朝、惰眠を貪る赤坂をスーツ姿の一団がことに足早にウォーキング中だ。胸板が厚く、見るからに屈強なSP2人を引き連れた菅長官を直撃した。

――おはようございます、17年の話で恐縮なんですけど……。

「いや、もういい」

――毎月、山口敬之さんは顧問料を支払ってもらって。それは、長官が滝会長に依頼をされた……という話だったんですが。

「ちょっと、今……」

――山口敬之さんからお願いされたんですか? 顧問料を支払えというのは? どういった経緯かだけでも。

「ちょっと、悪いけど、ちょっと。私、関与してないです」

――とはいえ、その……。

「それ以上言えない。関与してない」

 それ以降は、「プライベートですから、だめ」「だから答えているじゃない」と続き、「失礼だよ、私のプライベートなんだから!」と、“24時間365日稼働”をもって鳴る菅長官には残念な“激おこ”で終わった。先の代理店関係者に改めて聞くと、

「会社の事業内容とは関係ない新潮の記事で送金を止めたということは、会社にとって山口がいかに不要な人材だったかを物語っている。つまり、どうしても断れない特別な案件だったからと考えるのが自然。繰り返しますが、山口は一度も会社に来なかったようですし、『山口顧問』の存在など、ヒラ社員は知る由もないんです」

 詩織さんへの反訴と相前後し、『ゴーマニズム宣言』で著名な漫画家の小林よしのり氏の元にも、山口記者からの訴状が届いている。「SAPIO」に掲載した作品が名誉毀損とプライバシー侵害に当たるという主張である。

「レイプに関する裁判は、実情が不透明なものが少なくありません。しかし、この伊藤詩織さんの事案が特別なのは、捜査の過程で権力が介入した可能性があるという点です」

 とは、小林氏ご当人。

「女性の人権が蹂躙された事件で権力が介入していたとしたら、これほど恐ろしいことはありません。逮捕状が出ていたのに、それが執行されなかったのは、やはり不自然。そういう捜査の結果として、刑事事件は不起訴という処分になり、検察審査会が不起訴相当を決めた可能性も否定できない。重大な案件なんです」

 詩織さんが名乗り出て闘っていることについて、

「非常に勇気がいることだと思います。この国では、レイプを告発すること自体、大変な困難を伴う。というのも、女性の服装がどうのこうのとか、あたかも女性に落ち度があるかのように言われてしまうことがしばしばだから。そういう、男尊女卑的な傾向が依然として根強い社会で、女性が声をあげるというのは大変なことなんです。そのうえ、権力が絡んでいる可能性があるわけですから。伊藤さんの行動は、日本の国家、民主主義のためにとても意義があることだと思います。だからこそ、わしは応援したいと思っているんです」

 お上の裁きは年明けまでには下る模様である。

「週刊新潮」2019年7月18日号 掲載

関連記事(外部サイト)