入管センター「外国人ハンスト」騒動、人権派新聞各紙がほとんど触れない事実

■入管センター「外国人ハンスト」騒動の裏側(2/2)


 茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」にて、長期拘留に抗議する外国人およそ100人が、ハンガーストライキを行った。朝日、毎日、東京の「人権」メディア各紙がこぞって取り上げた騒動だ。入管は時に〈ここは地獄〉とも紹介された(東京新聞・7月25日)が、ハンストによって体調を崩すことで、一時的に身柄の拘束が解かれる「仮放免」を狙っての行動でもあるようだ。

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 入管に収容されているのは、不法滞在などで強制送還が決まった外国人たちである。にもかかわらず「9割以上は送還を“拒否”している」(入管センターの担当者)といい、また自国民の受け入れを拒否する国の存在も、収容の長期化を助長しているようだ。

 実際の待遇はいかなるものか。

「現在収容されているのは定員700人の半分以下なので5人部屋を2〜3人で使っている。洗濯室やシャワー室、卓球台のあるホールに自動販売機もあります。給食は宗教上の戒律やアレルギーを考慮して200種類以上のバリエーションを用意しています」(先の担当者)

 しかも、牢屋や檻に入れられているわけではなく、日中の大半は施設内を自由に歩き回れる。とても「地獄」とは思えない環境だが、不平不満を言う外国人を支援する「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表はこう訴える。

「先の見えない長期の収容生活は肉体的にも、精神的にも負担が大きい。私が知るだけでも、拒食症や夜尿症になったり、精神科に入院した人もいます。国の言い分は分かりますが、彼らの多くは帰る国がありません。なかには20〜30年に亘って日本で暮らし、奥さんや子どもがいる人たちも少なくない。彼らを無理やり送還して、家族を引き裂いてもいいのでしょうか。日本が好きで日本にやってきた外国人に対して、国はもう少し制度を弾力的に活用すべきだと思います」

 確かに、日本に家族を残したまま強制送還されることを望まない収容者がいるのは事実。本国に帰れば迫害されるといった訴えを頭から否定することもできない。

 そうした事情に加え、今年7月に田中代表が日弁連のシンポジウムで講演したことも手伝って、冒頭の各紙はこの騒動を人権問題として大きく取り上げた。外国人が食べ物を口にせずハンストを続ける一方、人権派メディアは大好物のネタに食いついたワケだ。だが、その陰で、新聞各紙がほとんど触れない事実もあった。


■108人が逮捕


 外国人が入管センターに収容されるのには当然ながら理由がある。本誌(「週刊新潮」)記者が面会した外国人は、過去に違法薬物の密売や、飲酒運転で死亡事故を起こすなど、軽微とは言えない犯行で逮捕されているのだ。

 もちろん、「罪を犯したことは反省すべきです。ただ、日本人と違い、外国人は刑務所で罪を償っても入管センターに収容される。これはあまりに不平等」(田中代表)という意見もあろう。

 しかし、だからといって仮放免という「例外的な措置」を乱発するのが最善とは言い難い現実もある。

 法務省は、昨年末の時点でイラン国籍の230人を含む計2501人が仮放免されていると発表。

 同時に、昨年だけで108人もの外国人が仮放免中に逮捕されたことも明らかにした。その罪状は殺人未遂に薬物事犯、暴行、傷害などで、国籍別ではイランが23人と最も多く、仮放免されたイラン人の10人に1人が逮捕されたことになる。

 実は、この点については当の大新聞も承知していた。

 朝日新聞は今年1月23日付の名古屋版紙面で、〈イラン人薬物密売、愛知で絶えぬ抗争 強制送還されにくく、仮放免で再犯も〉という記事を掲載しているのだ。

 タイトルにある「抗争」が激化した結果、密売組織のイラン人リーダーらが、対立する組織のイラン人を凶器で殴ったうえ、車に押し込んで監禁したという。愛知県警に監禁致傷容疑で逮捕された組織のリーダーは、10年に偽造パスポートで出国しようとして入管施設に収容。後に仮放免されたものの、そのまま7年以上も組織の頭目として覚醒剤などの密売を取り仕切っていたというのだから呆れる他ない。

 仮放免の「負の側面」にはダンマリを決め込んで、外国人への人権侵害だけを声高に叫ぶ姿勢は報道としていかがなものか。

 評論家の呉智英氏はこう喝破する。

「外国人の長期収容が増えようと、彼らがハンストを繰り広げようと、それによって施設側が処遇措置を変えるべきではありません。刑務所を出所すれば自由に行動できるというのは日本国籍を持っているからこその権利です。外国人が自らの罪によって永住権を奪われても自業自得という他ないでしょう。この件を報じるメディアにしても、すべての側面に触れずにバイアスがかかった記事を書いては、世論操作をしているに等しいと思います」

 騒動の裏側にはこうしたどうにも食えない実態があったのである。

「週刊新潮」2019年8月15・22日号 掲載

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