菅は安倍の腰巾着だ――元後見人「ハマのドン」が語る横浜カジノ反対

■「カジノは許さん」と「菅官房長官」を叱る「横浜のドン」(2/2)


 林文子市長が誘致を表明したことで、目下、横浜市はカジノ開場地の最有力候補と目される。が、これに異を唱えるのが“ハマのドン”こと藤木幸夫氏(89)だ。「横浜港運協会」会長にして、あの菅義偉官房長官(70)のかつての後見役という人物だ。

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「カジノは許せません」「入るのはアメリカのカジノ業者で横浜は食い物にものにされるだけ」と語る藤木氏。一方、横浜の林市長は菅氏の直系として知られ、つまりカジノ誘致は、菅氏の意向抜きにはありえない話ということになる。

 菅氏が、後見人の藤木氏を切ったという構図になるが……2人に何があったのか。

「菅とはかれこれ1〜2年は会っていませんよ」

 と藤木氏が言う。

「最後に会ったのは2年前かな。向こうから電話がかかってきて、“会長、お昼ごはん、ごちそうしてくださいよ”って。“おう、来い来い”って。そんで会って飯食ったのが最後だね」

 と言うのである。

「何でって、それは用がないから。必要がないからですよ。用がないから。俺、いま麻生さんや二階さんと仲が良いんだ。それに今会うと、俺はカジノに反対、菅は賛成だから、鋭い話になるでしょ。だからダメなんだ。きっと死ぬまで会うことはないんじゃないかな……」

“決裂”の事情について、藤木氏は多くを語らないが、

「カジノを巡って、意見の食い違いがあったのが一因だったと思います」

 と言うのは、両氏を共に知る、さる知人である。

「2年ほど前までは、藤木さんはカジノ賛成だったんです。菅さんがカジノの件を説明し、藤木さんも乗り気になってしまったんです」(同)

 実際、その頃、藤木会長は新聞や雑誌の取材に、「オレがカジノをやる!」と明言している。

「しかし、カジノってそんな簡単に出来るものではない。ノウハウと資金力のあるアメリカのカジノ企業のようなところでないと難しいんです。また、IRは国際基準に基づいて規制が行われ、コンプライアンスのチェックが非常に厳しい。どうも無理らしい、と気が付いた藤木さんは菅さんに不信感を抱くようになったのではないか。その頃から依存症のことを勉強しはじめ、“カジノ反対”を唱えるようになりました」(同)

 他方の菅氏も同様だ。

「菅さんは藤木さんの周辺の人脈が気になっていたんです。藤木さんの周りにはいろんな人が集まるでしょ。その中には清も濁も様々な人がいる。彼がカジノをやろうとしていた人たちの中にも、清濁両方の人がいた。その頃から菅さんは、藤木さんのことが話題になっても“あの人の話はいいですよ”とよそよそしい物言いになりましたね」(同)

■安倍の腰巾着


 加えて、菅氏を巡る“事情”の変化もあったのかもしれない。戦後最長の安倍政権下、それを支える菅氏も在職期間歴代1位の大官房長官に。「令和おじさん」効果で、ポスト安倍No.1とも目されるようになった。この秋には、カジノ開業地選定の具体的作業が始まる。立候補へのデッドラインが迫る中、古い後見人なんて……という側面もあったのか。

 この点、当の藤木氏に聞いてみると、

「邪推はやめてくれ」

 と一笑に付すのだが、菅氏のことを振ると、

「官房長官になっちゃったからね。昨日まで一緒にお茶飲んだり、ところてん食ってた間柄だったのが、ヘッポコ市会議員から国会議員、官房長官となった。だから、昔を知ってた連中からすれば、“権力ボケ”と見られちゃうわけ……」

 と思いがにじみ出る。

「菅が官房長官になったあたりかな。横浜港のポートチャージが他より高いという問題があって、俺が何とかしようと動いた。で、菅に“高いんだよ”と言うと、“そうですか”と。で、調べて熱心にやってくれた。“会長、あれはこういうことで、こうなりそうで”“悪いなあ、菅君、こんなことでごめんな”って話は何度したかわからない。週に2〜3回は本人から電話がかかってきたかな」

 もっとも、

「菅だって可哀相だよ」

 とフォローも忘れないのが藤木氏だ。

「安倍みたいなのにくっついてちゃ。菅は安倍の腰巾着だ。その安倍はトランプの腰巾着……。トランプとカジノ業者が火元だってわかるんだよ。菅もとばっちり、俺もとばっちり。横浜の人はみんなとばっちりを受けているんだよ。4年前かな、菅に“20分でいいから議員会館に来てくれ”と言われて、行ったらカジノについて説明されたことがある。その時に“あんたのところにたくさん来ているでしょ、人が”って聞いたら“いやいや来ていません”と。だからね、この話は下から来ているんじゃないと思った。上から来ているんだよ。アメリカからね」

 そして、

「いま、菅の頭の中にあるのは、地方自治体の経済への貢献とか、観光立国ではない。理屈と絆創膏はどこでもくっつくんだよ。観光立国なら何でも一緒じゃないですか。横浜なんていま客船がバカバカ入っているんだから、いまさらカジノにお世話になる必要はない、これは国の安全保障の問題で、アメリカとの関係が菅の念頭にあるんだと思う」

 当の菅氏にこれらの発言について見解を求めたが、「回答いたしかねます」とのことだった。

 とまれ、カジノ誘致を決めた横浜市。賽は投げられた。今後、会長はどうするのか。

「もちろん許さないよ。歳も歳だし、殺されようが何しようが俺は反対で死んでいく。とにかく横浜の港ではダメだ。埠頭で汗を流し、死んだ人間もいるんだから。数えきれないほどの人が死んでいるこの場所で、ブランデー飲みながら博打打たれちゃたまんねえ、ってこと。俺は一人になっても最後までやるよ」

 菅氏にとってはキツイ89歳の遺言。自らの表も裏も知り尽くす恩人だけに、さしもの大官房長官も対応に苦慮すること、必定なのである。

「週刊新潮」2019年9月5日号 掲載

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