若者の○○離れ(中川淳一郎)

 ウェブメディアで出すと必ず多大なるアクセス数を稼ぐのが「若者の○○離れ」関連の記事です。最近ウケたのは、「若者の袋麺離れ」「若者の合コン離れ」「若者のストッキング離れ」ですが、古くは「若者のタバコ離れ」「若者のかまぼこ離れ」「若者の寿司にわさび、おでんにカラシ離れ」などがありました。

「若者の交通事故離れ」というものもありまして、若年層の交通事故が減ったという実にめでたい話なのですが、ネットではこう表現されてしまうのであります。実際は、単に若者の数が減って交通事故における割合が減った、ということなのでしょう。

 なぜネットではこのように表現されるかといえば、「若者の○○離れ」が常に消費の低迷とセットにされ、その責任をメディアが若者に負わせる、という点があります。この傾向に若者が激怒してネット上で蜂起し、その後は諦観をもって敢えて自虐的にこの言葉を使っているわけです。

 他には、「若者の飲み会離れ」もここ何年も言われています。しかし、最近私、若者とばかり飲んでいるんですよ。この連載の編集担当のI氏とF氏も私よりかなり若いのですが、けっこう飲んでいます。それ以外にも20代の若者から「飲みに行きましょうよ〜」なんてしょっちゅう誘われる。

 おいおい、若者の飲み会離れってウソだろ、この野郎! と思うわけで、結局あるのは「若者の職場飲み会離れ」なのではないでしょうか。昨今の若者は職場以外に飲み会の場所を求めているように思います。

 職場のオッサンと飲んでも説教されるばかりでウゼー。だったらオレは自分が楽しい時間を過ごせる人と飲むぜ、この野郎! とばかりに、自身が所属する会社とは関係のない人々と飲む若者とよく会うようになりました。その誘い方が実にカジュアルなんですよ。

「あっ、僕、渋谷の、クラウドファンディングでできたバーに知り合いがいるんで、そこで飲みませんか?」

 なんてことをサラッと言う。頭の中では「“クラウドファンディングでできたバー”って一体なんなんだ????」なんて思うのですが、本人はその店が居心地が良いようで、そこへ一緒に行きたいと言う。

 自分がやりたいこと、行きたい場所をサラリと言い、そこに他人をスマートに巻き込んでいくこの感覚、自分が若い頃には持てなかったものです。基本的には年長者から「おい、飲み行くぞ」と誘われることが多かったのですが、最近の若者は違いますね。

 なんだか老害のようなことを言い始めていますが、まぁ、これこそオッサンが取るべき態度なのではないでしょうか。「ワシの方が経験がある! ワシの話を聞け!」なんて言うのではなく、「あなたの方が私の見たことのない世界を知っている」という姿勢で教えを請う。

 現在ネット上では老害叩きが過熱しております。それは、景気の良い時代に高額の給料をもらい、年金も充分にもらえる「逃げ切り世代」だと思われているからです。

 ですから、これからの生存戦略としては、若者の良いところをとにかく見つけ、そこに感服する生き方が吉でしょう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年9月12日号 掲載

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