埼玉小4殺人・「前夫への嫉妬」「自分のDNAを残したい本能」ゆえ連れ子を殺す継父たち

 埼玉県の小学4年生・進藤遼佑くん(9)を殺めたのは、継父の悠介容疑者(32)だった。SNSを通じて知り合った母(42)と悠介容疑者が、結婚してわずか半年で起きた悲劇である。夫が連れ子を手にかける事件は、なぜ相次ぐのだろうか。

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「母親にとって、恋人に適している男性と、子供の父親に適している男性は異なりますから、再婚の際はそこの見極めが重要です」

 と解説するのは、夫婦問題に詳しい「東京家族ラボ」を主宰する池内ひろ美氏だ。

「大前提として、離婚・死別を問わず夫を失った女性が年齢が上がってまた異性を好きになる、恋をする、そのこと自体は素晴らしい。性愛を求める自分を認めていいのです。その時に注意しないといけないのは、女としての立場だけで男をみれば、母親としての視点が抜け落ちてしまう点。恋人には最適でも、父親としてはよくない相手というのは当然あり得るわけですから」

 むろん、そのような男性に出会ったら、無理な再婚をする必要はないと続ける。

「恋人として付き合っていけばいいわけで、男性はすぐ父親になれるわけではないことを認識すべきです。しかし、安定した収入があって社会的な地位の高い女性では、相手の収入が低かったり、自分より若い男性と結婚するケースはよく聞きます。具体的には弁護士さんや女医さんなどですが、彼女たちからすれば、夫に対して一人前になるまで私が育ててあげたいという母性が働く。映画『マイ・フェア・レディ』の逆バージョンですね」


■「他人の子」


 厚労省の専門委員会が今年8月にまとめた報告書によれば、2003年度から17年度までの15年間に虐待死した17歳までの子供は779人。その実に1割以上にあたる91人は、実母の再婚相手や交際相手など実父以外のパートナーが加害者だった。

 精神科医の片田珠美氏は言う。

「再婚相手の男性が、連れ子を虐待したり殺害する事件には、二つの原因があります。ひとつは経済的な部分を含めて、自分は前夫よりも劣っているのではという嫉妬。そして、自分のDNAを残したいという本能。その二つの気持ちが、前の夫の遺伝子を受け継ぐ子供に牙を剥かせてしまうのです。昨年3月の目黒女児虐待事件では、当時5歳の船戸結愛ちゃんが母親の再婚相手の毒牙にかかった。継父と母親の間に子供ができ、経済的にも限られた収入で育てていかないといけない不安が、男の継子への反感、憎悪に繋がったケースです」

 記憶に新しいところでは、今年6月に交際相手の男性が同居する2歳の女児を死なせた札幌女児衰弱死事件や、8月に鹿児島・出水市で4歳の女児が母親の交際相手から暴行を受けて死亡した事件がある。他にも、大阪の東淀川や箕面などでも、義父や交際相手によって幼い命が奪われる事件が相次いでいるのだ。

「子供を虐待したり殺してしまったりする男性かどうかを、結婚前から見分けるのは難しいものですが、他人の子をかわいいと思えないのはあたり前。それを前提に生きる必要があります」

 とは、元東京都児童相談所職員で家族問題カウンセラーの山脇由貴子氏だ。

「児童相談所にいた頃、里親制度に応募した方々で、いざ子供を引き取ると、反抗されたり大変な目に遭って“こんな筈じゃなかった”と子供を返しに来るケースが多くありました。積極的に里親に応募してくる人たちでさえそうなので、事件の容疑者たちが子供をかわいくないと思ってしまうのも当然ですよ。子供だって、よく知らない他人をいきなり『お父さん』だと思えるわけがありません」

 そこで山脇氏はこんな提言をするのだ。

「再婚前に、母親は相手に対して『子供は憎たらしいし、殴りたくなることがあるかもしれない。私がいない時間もあるし大丈夫?』などと言って、きちんと話し合いを持つ必要がある。そこで男性が大丈夫と答えても、再婚後しばらくは父子が2人きりにならないよう配慮すべき。そもそも再婚しても、男性は父親になるべきだと思い込む必要はないし、母親もそれを強いる必要はありません。それくらいの距離感から始めて、子供がかわいくないのはあたり前だと許してあげる社会でないと、再婚相手は父親だと思われないことで自分を追い込んでしまう。子供が義父に対して『本当の親じゃないくせに』と反抗するのは、この人は本当に自分の親になってくれるのだろうか、捨てられないだろうか、と試す行動の一環でもあるのですから」

 その一言で幼い命への殺意が芽生えれば、また悲劇は繰り返されてしまうのだ。

「週刊新潮」2019年10月3日号 掲載

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