小泉進次郎議員も反対 定期購読の新聞に軽減税率が適用されたカラクリ

 消費税率が5年半ぶりに8%から10%へ引き上げられた。軽減税率が初めて導入され、生活に欠かせない飲食料品の税率は8%に据え置かれたが、水道料金も市販薬も増税された。ただし、飲食料品以外で唯一、軽減税率が適用されたものがある。定期購読の新聞だ。不公平なのではないか?

 軽減税率の導入理由は、所得の低い人々への配慮。その軽減税率が適用されるのは次の2つだけだ。(1)酒類・外食を除く飲食料品(2)週2回以上発行される新聞で、定期購読契約に基づくもの――。

 生きていくために欠かせないはずの水道料金すら増税されるが、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日刊スポーツ、スポーツニッポン、東京スポーツ・・・定期購読ならば、みんな軽減税率が実施される。ちなみに夕刊の東スポを除くと、スポーツ紙も宅配割合のほうが圧倒的に高い。

 飲食料品と新聞以外が増税された10月1日、日本新聞協会はこう声明した。

「公共財としての新聞の役割が認められた。期待に応えられるよう、責務を果たしていく」(日本新聞協会)

 新聞を公共財と考えている市民はどれくらいいるだろう。新聞は報道を役割とする私企業にほかならないのではないか。また、スポーツ紙は生活に潤いを与える、嗜好品と考えている読者が多いに違いない。それがスポーツ紙の使命だろう。ちなみに公共料金と称される電気代、ガス代も増税されたのはご存じのとおり。

 なぜ、すべての新聞が特別扱いを受けることになったのかというと、これまで日本新聞協会は、欧州でも大半の国が新聞に軽減税率を適用していると説明してきた。確かにそうだ。ただし、欧州は新聞と併せて雑誌や書籍にも軽減税率を適用している。医薬品などにもまた軽減税率が実施されている。新聞に限っての軽減税率適用は世界的に見て極めて異例なのだ。

 断っておくが、なにも新聞への軽減税率に反対するわけではない。問題なのは不公平に映るということ。新聞の生命線は信頼だろう。読者に釈然としない思いを与えかねない軽減税率適用は、新聞界にとってマイナスでもあるのではないか。

 朝日新聞パブリックエディター(読者から寄せられる声を基に、朝日の編集部門に意見や要望を伝える外部識者)の湯浅誠・東京大学特任教授(50)も同紙にこう書いている。

「私は新聞への軽減税率の適用自体を批判するつもりはない。私が違和感をもつのは、それについての議論が、朝日新聞紙上にほとんど展開されなかったことだ」(今年4月16日付の朝日新聞より)。

 知る限り、他紙の紙面も朝日新聞と同様だ。

 新聞への軽減税率適用にストレートに反対した与党政治家もいた。小泉進次郎現環境相(38)である。2017年10月に放送された日本テレビの衆院選開票特番で、こう語気を強めた。

「消費増税を10%にするときに軽減税率が入りますが、『消費増税をしろ、しろ』という新聞は、消費増税を負担しないんですよ。おかしくないですか。これはテレビも新聞もほとんど流してくれません」(日本テレビの衆院選開票特番での小泉進次郎氏の言葉)

 小泉氏も分かっていただろうが、なぜ、テレビも新聞の軽減税率問題に言及しないかというと、日本のマスコミ界は世界で稀なクロスオーナーシップ制が確立しているからだ。新聞社とテレビ局が資本関係で結びついている。あるいは役員の交換をしている。
これでは、新聞界全体の利益を損なうような報道をやりにくい。

 ちなみにクロスオーナーシップ制については、国連の表現の自由についての特別報告者であるデイ ビッド・ケイ氏が批判している。報道と表現の多様性が損なわれるからだ。東京の民放キー局は5局だが、それぞれ5つの大新聞と結びついているため、大マスコミは5つとNHKに限定されている。新聞とテレビを分離したら、間違いなく報道や表現は多様化する。


■本、市販薬は


 さて、なぜ政府側が新聞の軽減税率を認めたかというと、新聞、それと結びついているテレビと、うまくやりたいというのが本音だろう。新聞界と全面対決した場合、政府にプラスは何一つない。政府は新聞1社と向かい合うのは平気だろうが、新聞界全体と対立するとなると厄介に違いない。

 一方、出版界も軽減税率を求めたし、日本チェーンドラッグストア協会も市販薬を対象に含めることを望んだが、認められなかった。学生は憂鬱だろうし、薬に頼っている人は痛いだろう。

 日本新聞協会は10月1日にこうも声明した。

「学習指導要領にうたわれているように、学力の基礎となる読解力の育成にも新聞は生かされています」(日本新聞協会の声明より)

 それは間違いない。とはいえ、学習参考書や辞書は増税される。政府のバランス感覚はどうなっているのか。

 そもそも軽減税率はその有効性に懐疑的な声がある。軽減税率の先進国である欧州でも失敗と指摘する声が少なくない。前述のとおり、軽減税率の適用は、低所得者への配慮だが、高所得者のほうが、消費金額が多いためだ。金を使うほど、軽減税率のメリットを享受しかねない。また、既に混乱が相次いでいるとおり、手続きが面倒で、コストもかかるのだ。

 最後に、なぜ新聞界が軽減税率を望んだかというと、深刻な部数低下を食い止めたいからに違いない。2018年10月時点の一般紙の総部数は3682万3021部。同じくスポーツ紙は307万8555部。合計3990万1576部。2017年10月より合計222万6613部減ってしまった(日本新聞協会調べ)。2000年と比べると、合計1380万7255部も減っている(同)。減った数は発行部数ナンバーワンの読売新聞を軽く超えている。

 新聞の部数低迷の理由は書くまでもない。ネットで情報を得る人が激増したからだ。そのネットの関連費は増税された。

 軽減税率は新聞の危機から救うのか。それとも読者の不信感を招くのか――。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月7日 掲載

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