統括部長から「草刈り係」に降格させられた53歳男性の悲痛パワハラ告発

 有無を言わさぬ転勤や、縁もゆかりもない子会社への出向、果ては、窓ひとつない「追い出し部屋」に飛ばされる――。会社組織に生きる中高年にとってパワハラ人事は決して他人事ではあるまい。だが、ここで紹介する「元部長」に下されたのは俄かに信じ難い辞令。彼の異動先はなんと「草刈り係」だった。

「正直なところ、営業成績は悪くなかったと思います。社長からも“何億円も会社にもたらしてくれてる。君がトップや”と褒められてましたから。それなのにこの仕打ちですから……」

 そう言って肩を落とすのは、高橋陽介さん(53)=仮名=である。

 彼はもともと兵庫県内でスナックを営んでおり、そこに客として通っていたのが神戸市に本店を置く太陽光発電設備会社「Qvou(キューボー)」の社員だった。その社員が「人手が足りない」と漏らしたことがきっかけで、高橋さんは2015年頃から太陽光パネルを運ぶ仕事の手伝いを始める。

「そのうちに社長とも知り合って“僕のこと、つこうてくれませんか”と持ちかけたら、すんなりと話がまとまった。それでキューボーに正社員として雇われることになったんです」

 入社後、高橋さんは一貫して用地の買取営業に携わってきた。彼が入社して以降、会社は大きく売り上げを伸ばし、まもなく営業職の「統括部長」に就任。社長の著作でも高橋さんは写真入りで紹介されている。

 だが、「社長の意向で給料の額がころころ変わる」ことに不満を抱いた彼は、昨年6月に労働組合を結成。そこから風向きが一変する。

「会社から営業車にドライブレコーダーを付けろと言われ、組合として“そこまで情報収集する必要はないだろう”と反発しました。すると、8月にメンテナンス事業部に異動させられた。社長には“これから毎日、草刈りや”と言われました」


■6千平方メートル


 結果、高橋さんは昨年9月上旬から草刈りに駆り出されることに。

「防塵マスクとゴーグルをつけて、猛暑のなか1日6時間もひたすら草刈り機と格闘していました。しかも、監視役の“上司”までつけられてね。当初は、太陽光パネルが設置してある、整備された土地を集中的に回っていたのですが、そのうち嫌がらせが酷くなりまして……。雑草が生い茂る空き地だったり、6千平方メートルを超える敷地をひとりで担当させられた。防塵マスクがズレていたとか、ケーブルをわざと切断したという理由で1週間の自宅謹慎になったこともある。その間は“無給”です」

 9月とはいえ、最高気温が30度に迫る屋外での肉体労働。絶好の太陽光発電日和には違いないが、50歳を超えた身には相当応えたことだろう。

 まもなく、ひどい吐き気に襲われて精神科を受診したところ、「ストレス障害」との診断が下り、休職を余儀なくされた。

「今年4月に復職したものの、同じ作業を繰り返すだけで、ついに役職手当まで削られた。最高で40万円だった月給は25万円までダウンしました。それで7月に退職したんです」

 その後、高橋さんは草刈り係への異動がパワハラに当たるとして、約400万円の損害賠償を求めて会社側を提訴するに至った。

 会社側に見解を求めると、

「発電施設周辺の除草はとても重要な作業で、彼だけでなくメンテナンス事業部の他の社員も行っています。また、彼は発電施設の周辺住民への説明会で、被差別部落に関する差別発言を行いました。この一件を巡って会社は神戸市の人権推進課から文書で指導を受けています。会社としてはそんな発言をするような社員を営業職には置いておけないと判断したわけです」(代理人弁護士)

 これに対して高橋さんは、

「周辺住民への“迷惑料”の支払い額を巡って口論になって、言ってはいけない言葉を発してしまったのは事実です。ただ、3年近くも前の話ですし、説明会でも“失礼なことを言いました”と謝罪しています。会社はこの一件を異動の口実に使っているだけなんです」

 太陽光発電といえば地球に優しいのがウリ。だが、そこで働く社員には優しくなれなかったようである。

「週刊新潮」2019年10月3日号 掲載

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