1千万円稼ぐSNSめぐり監禁・強要された被害者が語る「高校生の仁義なき戦い」

1千万円稼ぐSNSめぐり監禁・強要された被害者が語る「高校生の仁義なき戦い」

被害者が語る、大人は知らない「高校生の仁義なき戦い」の実態とは(※写真はイメージ)

■SNSで1千万円荒稼ぎ 監禁被害者が語る「高校生の仁義なき戦い」(1/2)


 高校生がSNSを舞台に年1千万円を荒稼ぎし、対立陣営と覇を争っていた。シノギ存続のため、潰すか潰されるかの瀬戸際に立った陣営は競合相手を監禁・強要し、そのかどで逮捕されたのである。被害者が語る、大人は知らない「高校生の仁義なき戦い」の実態――。

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「主犯の男から、“手荒なマネはしたくない。いつでも海に沈められる。パスワードを教えない限り帰れない。夜までここにいるのか”と大声で恫喝されました。手に持っていたスマホを男が取ろうとして揉みあいになりましたが、恐怖もありましたし、このままじゃ埒が明かない。だから、スマホを渡してパスワードを伝えてしまったのです」

 そうやって、監禁・強要された今年2月22日のことを振り返るのは、被害者当人(18)である。「仁義なき戦い」ほどではないにしても、あの脅し脅されの緊迫した場面が甦ってくるようだ。

 この日から約7カ月後の9月25日から26日にかけて、こんな見出しの記事が社会面を賑わせた。

〈LINE広告横取り図る 少年らアカウント削除 3容疑者逮捕〉(読売新聞)

〈1千万円収入のアカウントを強制削除させた高3ら3人を逮捕〉(サンケイスポーツ)

〈ライバルのSNS無理やり削除 東京の高校生逮捕 広告収入増狙い〉(佐賀新聞)

“海に沈める”と言った「主犯の男」が高3だったことに驚く他ないが、犯行の中身はざっとこんな具合である。

・無料通話アプリ「LINE」のビジネス向けサービスにおいて、他人のアカウントを無断削除した件で、警視庁少年事件課は、監禁、強要、電子計算機損壊等業務妨害の容疑で少年らを逮捕した

・少年ら3人は被害者の男子高校生をクルマに監禁し、「LINE」のパスワードなどを無理やり聞き出して、男子高校生のアカウント4個を消去した

・被害者も、そして逮捕された少年ら3人もLINEを通じて同様の情報を配信しており、フォロワーのスマホ画面に表示されるインターネット広告で年間約1千万円の広告収入を得ていた

・逮捕された少年のひとりは、「競合相手のアカウントを削除すれば、自分たちの広告収入がもっと増えると思った」と供述している

 ネット空間でシノギを展開する複数の集団があり、大が小を取りこむ弱肉強食の世界が見えてくる。小が大に抗するには手荒な業が必要だったのか。舞台がリアルかネットかを除けば、「仁義」で梅宮辰夫が発した〈そんな極楽は極道の世界にはないよ。人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで〉を地で行く覇権争いである。

 ジャーナリストの徳岡孝夫氏は、

「手品のように大金を作る学生が、犯罪に巻き込まれていくというのは昔にもあってね。三島由紀夫が書いた『青の時代』のモデルになった光クラブ事件がそれで、大学生が高利貸しで金を稼ぎ、成功する。けれど、最後は逮捕され、服毒自殺してしまう。今さら、何も驚くことは無いですよ」

 と説くのだが、それでも、わかったようでわからないのがネットの出来事である。未成年たちの“抗争”はいかにして起こったのか。コトの次第を理解するには時計の針を3年前に戻さなければならない。


■面白コンテンツからビジネスへ


「親からスマホを買ってもらったのは中3の時です。クラスの皆はいつも、LINEに投稿された動画や記事の配信を見ており、その話題で盛り上がっていた。自分も憧れ、動画や記事を投稿するようになりました。それを気に入って見たり読んだりしてフォローしてくれる人が100人、500人、千人……と多くなっていくのも面白かったのです」(被害少年)

 フォローしてくれる人=フォロワーを読者と言い換えてもいい。その読者の気を惹くコンテンツを集めては、10分に1度くらいの頻度で投稿する。面白いと思った読者は友達にそれを伝える。結果、コンテンツは拡散して行く。それは具体的には、「おススメおもしろ画像」や「これが解けたらIQ180!? なぞなぞ問題集」と題された記事を集めたものであり、のみならずニュースや地震速報も流した。これに付随して、「地震の時に何があれば安全か」という記事も届ける。

「そういう風にすると、災害の時に親身になってくれるアカウントだということで信頼度があがっていくんです。逆に災害が起こっているのにネタ動画をあげていると、こんな時にふざけるなとクレームが入る。中高生が興味を持つもの全てを流す『ネット版オンライン新聞』のような存在でしょうか。LINEではフォロワーがメッセージを送ることもでき、1日に数千件も来ることがありました。フォロワーとの関係は芸能人とそのファンみたいなもので、だから返事をすることも大事。ファンにすれば、やりとりできるだけで嬉しいですからね」(同)

 3年続けてノウハウは蓄積された。それまでは趣味に留まっていた投稿がビジネスへ舵を切るようになったのは、今から1年7カ月ほど前のことだった。

「フォロワー数300万を誇るトップの人が、投稿の際にブログへのリンクを貼り始めたのです。自分もその人に憧れていたので、同じことをやるようになりました。LINEだと広告で収益をあげることは不可能ですが、ブログを介すれば広告をつけることができる。LINEでフォロワーを多く抱えることが価値を持つようになったのです」(同)

 ブログを開設してそこに広告バナーを設置する。他方、LINEにはそのブログに飛べるような設定をした記事を投稿する。フォロワーがブログ上にある広告をクリックすると10円くらいが懐に入る仕組みだ。

「その合計が年間1千万円ほどありました。アカウントを四つ作って、そのフォロワーが延べ200万人。ひとりで捌ききれず、営業担当、運営担当4人、ブログが掲載されるホームページの更新担当やメンテナンス担当など、10人ほどのチームでやっていました」(同)

 メンバーはみな同年代で、彼同様、LINEに様々な投稿をしてきた“同業者”たちだ。

「“ウチのグループに参入しない?”って声をかけて集めました。全国各地にいて、直に会ったことがないので顔は知りません。業務を委託して達成したらお金を振り込むという形式でやっていて、そういった人件費にサーバー代、通信費などがかかるので、個人としての収入は1千万円もなく、また、確定申告をして税金も支払いました。税金は遅れてやってくるので困りましたね」(同)

 ともあれ、そういった同業者、時には競合者たちが意見交換、あるいは丁丁発止する場もLINEには設けられており、数十人が集っていた。その中には、今回の犯人のうち2人も加入していたという。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年10月10日号 掲載

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