被害者も加害者も未成年! 年1千万円稼ぐSNSめぐり「海に沈める」監禁・強要

被害者も加害者も未成年! 年1千万円稼ぐSNSめぐり「海に沈める」監禁・強要

スマホとの正しい付き合い方にいまだ解答は出ない(※写真はイメージ)

■SNSで1千万円荒稼ぎ 監禁被害者が語る「高校生の仁義なき戦い」(2/2)


 年1千万円を稼ぎ出すSNSをめぐり、高3の少年ら3人が逮捕された。彼らに監禁・強要された被害者(18)によれば、動画や記事を投稿するLINEアカウントがビジネスの場へ変わったのは、1年7カ月ほど前のこと。広告を貼ったブログへ誘導する方法で、約10人態勢で運営していたという。犯人らとは、同業者、競合者たちが交流するLINEで繋がっていた。

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「事件の1年前から、犯人のひとりとはLINEの無料通話でビジネスの話をする関係にありました。そのやり取りの中で、“アカウントを5千万円で買いたい人がいるから仲介したい”という風に相談を受けたのです。元々フォロワーが伸び悩んでいるアカウントがあったので“売りたい”旨を私から話していたんです。業界では、アカウントの運営を委託したり売ったりするのは普通のことだったので、何も疑いませんでした」(被害者)

 そして、事件当日を迎えたのだった。

「その日は東京駅で17時に待ち合わせで、行ってみるとマットな黒塗装のベンツに3人組が乗りこんでいました。全員スーツで強面でしたね。ナンバーもボタンか何かで操作して隠したりできる設定のようで、ナンバーは見えませんでした。不安に思いつつも助手席に乗ってしまったんです。ひとりは運転手、後部座席の右側に座ったのが『アカウント売買の仲介』を持ちかけた主犯と思しき人物、そして同じく左側に、先ほどお話ししたフォロワー数300万を誇る憧れの業界人(※前回参照)という配置でした。その人物が誰なのかについては、後で警察に教えてもらったんですがね」

 無言の未成年4人が乗ったベンツは1時間ほど走行し、海沿いの人通りの少ない場所に止まった。そこは羽田空港の近くなのだが、被害者はそんな事を知る由もない。

「“ここはどこですか?”と主犯の男に聞いたら、“静かな場所”とだけ言いました。そして、“データを集計したいからスマホを貸して”と。“自分でやるから”と言っても認められず、取引をなかったことにして降りようとしました。でもロックがかかっていてドアが開かない。“いいから貸せや”とすごまれて拒否しましたが、“手荒なマネはしたくない。いつでも海に沈められる”と言われて……」(同)

 被害者がスマホを渡すと、クルマを降りるように促された。しかし、ベンツに逃げられないように、開いたドアのノブに手をかけてはいた。その時、

「主犯がベンツから身を乗り出して私の手を叩き落とすようにグーで殴り、ドアを閉めて走り去っていきました。私のアカウントを確認したら、案の定データは消えていて。すぐ最寄りの交番に行って事情を説明したところ、警官になりたての若い人で、すごく親身になって話を聞いてくれたんです。その人も若いってだけで話を聞いてもらえなかった経験があるとかで」(同)


■規制の遅れが走らせる


 警察署に事案は引き継がれ、調書を作成していった。

「『1回6時間・月に2度の事情聴取』が半年くらい続きました。事件の様子が防犯カメラに写っていたこと、当該ベンツが事故を起こして写真に撮られたことがきっかけで逮捕に至ったと聞きました」(同)

 犯行グループは当然、被害者のアカウントを乗っ取るような恰好で、何事もなかったかのように投稿を続けていた。フォロワーにしてみれば、被害者の顔も本名もわからないのだから、それが乗っ取りか否か判断できない。奪ったシノギである広告料もそれなりに稼いでいたということになる。

 被害者の父親にも話を聞いてみると、

「未成年だし、経験も十分に積んでいるわけではないから、怪しい話だと判断できなかったんでしょう」

 と総括し、被害者当人は、

「現在改めてLINEのアカウントを開設して、30万人までフォロワーが集まりました。将来は会社を興して社長になりたい」

 としつつも、

「店舗を持ってモノを売るビジネスにも挑戦したい」

 と、額に汗して働く意向も口にするのだった。

 評論家の呉智英氏はこう苦言を呈す。

「最近の『漫画村』の事件は、著作権の諸法律が完全でなく、その網を掻い潜ったものです。規制の遅れが、ただネットに詳しいだけの者を走らせ、彼らは儲けることが可能になっている。リベンジ・ポルノも問題になりました。そうした犯罪が簡単に行なわれる一方、裁くのは一筋縄では行かない。年齢制限なども含め、しかるべき法整備をしなければなりません」

 その一端を担うはずの警視庁の問題意識の欠如について、社会部デスクは、

「時代を象徴する事件というマインドが担当の少年事件課長になく、SNSやウェブへの関心もあまりない。うまくレクすれば犯罪抑止に繋がったかもしれないのに」

 と指摘する。青年は荒野ではなくYouTuberをマジメに目指す時代。裏返せば、濡れ手で粟の一攫千金にもワナがあると、マジメに説諭すべき時代になった……ということなのだろう。

「週刊新潮」2019年10月10日号 掲載

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