日本画の巨匠・千住博氏が「2億3千万円賠償命令」に反論

日本画の巨匠・千住博氏が「2億3千万円賠償命令」に反論

日本画巨匠 2億超賠償に反論

日本画の巨匠・千住博氏が「2億3千万円賠償命令」に反論

千住博氏を訴えた銀座の画廊「ホワイトストーン」

 日本画の巨匠・千住博氏(61)が取引先の画廊から訴えられていた裁判で敗訴。2億円を超える賠償を命じられた。その額に加えて、静謐なイメージにも傷が。憤懣やるかたないご本人が判決に反論した。

「こちらの言い分はことごとく退けられました。判決には強い不信感を覚えております」

 判決の1週間後。拠点とする米ニューヨークのアトリエから、そんなコメントを送ってきた千住氏。

「今まで同様、ファンの皆さんには見守っていただきたいと思います」

 件の訴訟が起こされたのは3年前の11月に遡る。原告は「ホワイトストーン」という、創業五十余年、銀座にギャラリーを構える画商である。

「千住さんはこの画廊と長年の取引があり、2002年、売買についての『合意契約書』を交わしています」

 とは、訴訟記録を閲覧したさるジャーナリスト。

「画廊の言い分によれば、これは千住さんとの間に『専売契約』を交わしたもの。より強固な関係を、という千住さん側の希望に沿ったものだ、と。しかし、その後も千住さんは契約に違反し、他の画廊と取引を続けてきた。本来、それは自分たちの利益だからその分を賠償せよ、というものです」

 一方の千住氏は真っ向から否定し、

「合意書は専売契約を意味するものではない、と反論。そもそもギャラリーの会長から“地方の百貨店などとの交渉時に千住さんの作品が手に入ることを示す資料として見せたいから”と何年も懇願され、根負けして書いたものだが、内容を弁護士に相談し、“諸事情で第三者に直接納品する場合は例外とする”との文言を入れた。他の画廊との取引はこれに当たる、と」(同)


■飼い犬に手


 この判決が9月27日、下され、冒頭のように、千住氏側に約2億3千万円の支払いが命じられたのだ。

「裁判所は、『合意書』は事実上の『専売契約』である、と認定しました。また、千住さんの他の画廊への売買も、合意書が定める『諸事情』に当たらないと判断したのです」(同)

 千住氏本人が反論する。

「日本の美術業界には、一人の画家を画商たちが全体で支えるシステムがあります。画家が特定の画商のみと専属契約を結ぶ文化は原則的に存在しません。(だから合意書も)間違っても独占や専属という意味を持たないように精査して加筆修正し、(ギャラリーの会長も)それを一読して承知しましたので、僕もサインしたわけです。ところが14年も経った2016年になり、突然これは独占契約で、契約違反をした、と言われ、問答無用で訴えてきました。この実情や文書の作成過程を無視した判決にはとても違和感があります」

 要は、判決は合意書の文言が重視され、その経緯や事情が不当に軽んじられている、と述べるのだ。

 その是非は今後、上級審で争われることになりそうだが、訴訟で浮き彫りになったのは双方の溝の深さである。

 画廊側は、千住氏サイドから「センチュリーを要求されて購入した」「母親の看護をやらされた」など、「タカられた」と言わんばかりの主張を展開。対して、千住氏はこれを否定し、「飼い犬に手を噛まれたような気持ち」と反論。

 さらに先のジャーナリストも言う。

「別の仕事をしているギャラリーの会長の息子が、千住さんに同情して味方につき、陳述書を提出。そこには“食事会に呼ばれなかったことに腹を立てて(ギャラリーは)訴訟を起こした”“人の道に外れたことをした”と記されていました」

 互いの感情の絡まり合いが垣間見えるのだ。

「僕は彼らを信じてここまで取引をしてきました」

 と千住氏は憤る。

 実は、ギャラリーの会長は脱税で有罪判決を受け、収監された過去を持つが、千住氏はこれについても、

「その間も社員や子どもたちに罪はないと思い、周囲からの猛反対があっても取引を続けていました。どうして(ギャラリーが)このような仕打ちをするのか、怒りとかではなく、人間としてとても悲しい思いです」

 他方のホワイトストーンは「お答えできません」との回答。

「画廊は作家と手を取り合ってお互いの価値を高めていくもの。訴訟まで拗れることは非常に稀なケースです」(美術ライター)

 それもこれも、巨匠の存在の大きさゆえの「椿事」だったのであろう。

「週刊新潮」2019年10月17日号 掲載

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