今年だけで5件…相次ぐ犯罪者逃走事件「裁判官」が治安を破壊している

今年だけで5件…相次ぐ犯罪者逃走事件「裁判官」が治安を破壊している

立川拘置所

 これじゃ安心して街も歩けなければ、夜だっておちおち眠れない。またも“犯罪者”の逃走事件だ。恐喝未遂で実刑判決を受けて控訴に及んだ男が今月1日、勾留の執行停止中に姿を消した。身柄は4日後に確保されたが、なんだか同様の手落ちが多すぎやしないか。

 今回逃げた高橋伸(45)は、今年8月に懲役1年6カ月の実刑判決を受け、立川拘置所に身柄を勾留されていた。司法記者によると、

「控訴中だった高橋は精神科での診察を希望し、勾留の執行停止を申し立てた。検察側は“逃亡する恐れが高い”として抗告したのですが、裁判所が被告・高橋側の言い分を認めました。そして病院に向かう際に逃亡したわけです」

 だが、そのこと自体は犯罪にあたらないのだという。

「高橋に逃走罪や加重逃走罪は適用されません。これらはあくまで拘禁されている者が対象で、今度のように勾留の執行が停止された“自由が認められている者”に対しては適用されないからなんです」(同)

 法の隙間が露呈した形になったわけである。

 だが、そもそもなぜ裁判所は検察が反対したにもかかわらず、この男を“自由の身”としたのだろうか。

 検察関係者が嘆く。

「2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠改竄事件の影響が無視できません。あれ以来、検察に対する裁判所の不信が高まり、検察が勾留の執行停止や保釈に“不同意”と意見しても、裁判所に取り合ってもらえないケースが相次いでいる。そうした現状に、検察内部には諦めムードすら漂っています」

 たしかに08年時点で全国の裁判所が保釈を認めた割合は14・4%にとどまっていたのにくらべ、18年には32・5%と倍以上に増えているのだ。

 検察関係者が続けるには、

「勾留の執行停止といえば、以前は被告の命に別状があるとか、健康に重大な問題が疑われる症状でもなければなかなか認められなかった。しかし、16年には暴力団組長が娘の結婚式に出席したいと申し立てた事例さえ通ってしまうなど、すっかり様変わりしています」


■GPSで監視せよ


 野に放たれる犯罪者の母数が増えれば増えるほど、逃亡リスクが増すのは当然。

 そのせいで市民生活が脅かされたのでは、笑うに笑えないではないか。

 思い返せば今年6月にも、傷害や窃盗、覚せい剤取締法違反などで実刑が確定した男が再保釈中に逃亡。7月には国会議員の元秘書の男が覚醒剤使用の疑いで家宅捜索を受けた際に逃げ、8月には韓国籍の男が窃盗容疑で捕まった後、入院中の病院から逃げ出して騒ぎになった。今月2日、今度は札幌地裁が、保釈した男について公判の日に出廷しなかったと発表。それぞれ事情は違うが、同類の事件は今年で5件。当局の頼りないことといったら……。

 東京地検特捜部OBで弁護士の高井康行氏は、

「勾留の執行停止や保釈は当然、右から左に認めていい類のものではなく、個別具体的案件において、その都度、裁判官が厳しく慎重にチェックすべきです。なのに今回は、現に被告が逃げる結果を招いたわけで、裁判所の判断が甘すぎたと言わざるを得ません」

 と語り、さらに、

「保釈中や勾留の執行停止中に逃走した場合についても罪に問えるよう“不出頭罪”を新設するとか、GPSの発信器を装着することなども今後、検討すべきでしょう。逃走中の再犯には法定刑を2倍にするといった方策も考えられます」

 なお、犯罪白書によれば、保釈中に再犯で起訴された被告は07年に85人だったのが、10年後には246人と約3倍に増加。裁判官が社会の安寧を破壊しているとはあまりにも皮肉である。

「週刊新潮」2019年10月17日号 掲載

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