座間9遺体事件、池袋ラブホテル殺人…性犯罪の入り口は「出会い系」から「SNS」へ

■SNSがなければ「失われなかった命」(1/2)


 評論家の西部邁氏の目には、スマホは〈人間精神の廃物小屋〉と映っていた。スマホの普及と共に多くの利用者を獲得したSNSを使い、思うさまに欲望や本性を曝け出す人々。その延長線上で続発する悲惨かつ異様な事件は、一体何を物語っているのか――。

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 東大名誉教授の養老孟司氏は『遺言。』(新潮新書)にこう書いている。

〈いまでは若者は四六時中、スマホを見ている。その中にあるものはすべて同じものである。その意味は、放置しておけば、まったく変化しないもの、という意味である〉

 養老氏はこの本で「感覚」の大切さを説いているが、慧眼の持ち主には、それこそ「感覚的」に分かるのかもしれない。今やほとんどの人が肌身離さず持ち歩く「必携品」たるスマホの危険性が――。

 昨年1月に「自裁死」を遂げた評論家の西部邁氏もスマホを毛嫌いしていた一人である。絶筆の書となった『保守の遺言』では、

〈スマホが人間精神の廃物小屋とみえてならない〉

 と書く程だが、ここ十数年でスマホが爆発的に普及するのと同じ勢いで利用者が激増したのが、Twitter(ツイッター)やLINE(ライン)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。今やコミュニケーションの手段としてすっかり一般化し、極めて便利な面がある一方、SNSは時に別の顔を覗かせる。それこそ、〈人間精神の廃物小屋〉としての顔。SNSを巡り、悲惨な事件が相次いでいるのはその証左だろう。

 中でも2017年10月、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件が世間に与えた衝撃は大きかった。犯人の白石隆浩(27)=事件当時、被告等表記略・以下同=は「首吊り士」などと名乗ってツイッター上で自殺願望のある女性らを探しだし、強制性交殺人に及んだ。まさしくSNSが存在しなければ起こり得なかった事件と言えるが、先月、池袋のラブホテルで女性の遺体が見つかった事件も似たような構図だ。嘱託殺人罪で起訴された北島瑞樹(22)も白石と同様、ツイッター上で自殺願望のある人を探していた。

 SNSを悪用した事件は連鎖する。17年11月、ツイッターで知り合った10代前半の少女を自宅に連れ込んだとして、北海道警にわいせつ目的誘拐の疑いで逮捕された佐々木隆光(34)は、こうはっきり供述した。

「座間の事件を参考にしてツイッターで女の子を探した」

 この事件のようにSNSを利用して犯罪被害に遭う未成年者の数は年々増加しているといい、

「17年は1813人、18年は1811人の子どもが被害に遭いました。08年は792人だったので、この10年ほどで倍以上になった計算です。内訳としては淫行や児童買春などが最も多いですが、凶悪犯罪に遭う子どももいる。18年の場合、略取誘拐が42人、強制性交等が32人となっています」(警察庁関係者)

■出会い系からSNSへの移行


 同じ事件の中にSNSなどのキーワードが繰り返し出てくるのも最近の事件の特徴かもしれない。例えば、通信アプリを使って知り合った女子大生を金銭トラブルから殺した容疑などで逮捕・起訴された茨城県神栖市の廣瀬晃一(35)。彼は17年に児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕されていたが、その被害者の女子高生と知り合ったのもやはりSNSだった。

 出会い系サイトは、事件のキーワードとして今も時折見かける。今年5月に滋賀県大津市の交差点で保育園児2人が死亡、園児ら14人が重軽傷を負った事故で逮捕された新立文子(53)。その新立が公務員男性をLINEなどで脅したとして9月30日にストーカー容疑で逮捕された件は大いに世間を驚かせたが、2人が知り合ったのは出会い系サイトだった。また、埼玉県で小学4年の男児が殺された事件で逮捕された義父の進藤悠介(32)。殺された男児の実母とヒモ同然の進藤を結びつけたのは、婚活系のサイトだ。

「事件全般をみると、その起点となるものは、出会い系などのサイトからSNSへと移行しつつあります。出会い系サイトに起因する事犯の被害児童の数も03年には1278人だったが、17年には29人にまで減りました」(先の警察庁関係者)

 そうして性犯罪の「入口」も出会い系サイトからSNSへと移行したわけだが、中でも特筆すべきは次の事件である。アイドル活動をする20代の女性に対する強制わいせつ傷害容疑などで警視庁に先月逮捕された佐藤響(26)。何と彼は、SNSに投稿された女性の顔写真の瞳に映った景色を手掛かりに彼女の自宅を割り出したというのだ。

「SNSが普及した今の時代は、以前に比べて“考える時間”がなくなった」

 そう指摘するのは、『ルポ 平成ネット犯罪』などの著書もあるジャーナリストの渋井哲也氏だ。

「以前は“自殺したい”“家出したい”と思っても、何日か経てば気持ちが変わったり、その間に誰かに助けてもらえることもあったはず。ネットの掲示板に書き込んでも、返事はこないかもしれない。しかしSNSではすぐに“自殺を手伝うよ”“僕の家においでよ”とリアクションが返ってきてしまうのです。その意味では、以前よりも今の方が事件が起こる確率は上がったと思います」

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年10月24日号 掲載

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