ハロウィン明けは「1年で渋谷が最もきれいになる日」 ゴミ供養“黒服集団”の正体

 毎年、そのバカ騒ぎぶりが伝えられる渋谷のハロウィン。今年は渋谷区が1億円もの警備費用を投じたこともあってか、例年以上に厳しい目線の報道が目立った。毎年、宴の後の渋谷“アフターハロウィン”をウォッチしている流通アナリストの渡辺広明氏は、令和初の渋谷ハロウィンをどう見たか。

 ***

 ここ5年ほど、毎年渋谷のハロウィンを取材しています。日本でもすっかり定着した感のあるハロウィンは、一時はバレンタインデー以上の市場規模を誇っていたと言われていました。ところが、「日本記念日協会」の報告によれば、今年は推計1155億円。これは昨年の約1240億円から7%のダウンで、3年連続で減少していることになります。

 LINEリサーチが昨年11月に行った「ハロウィーン参加意向」の調査でも、「あまりしたくない」「まったくしたくない」という回答が2016〜18年の間に増え、18年にはハロウィン参加についてネガティブな反応が過半数に達していました。毎年毎年、乱痴気騒ぎが伝えられていますし、昨年はセンター街に停めてあった軽トラックを横転させ、10人が書類送検される事件もありました。今年も、センターの街組合の理事長さんが、「うんざり」とコメントされていましたが、無理はないとも思います。

 一方で、このまま渋谷のハロウィンが縮小してしまうのはもったいないのでは――とも思うのです。毎年ウォッチしていると、渋谷のハロウィンは、少しずつ規制が進み、良い方向に進んでいるのが分かります。

 ハロウィンで騒ぐ若者がいるのは事実ですし、トラック横転のようなとんでもない輩がいるというのも事実でしょう。とはいえ、タイガースの優勝しかり、W杯日本戦しかり、人が多く集まれば、悪さをする人間が現れるのは必然です。昨年のトラック横転は監視カメラを元に犯人が特定され、書類送検につながりました。今やSNSで特定もされる時代です。昨年の事件を教訓に、むしろ犯罪行為は自制に働いたのではないでしょうか(9人逮捕者が出たというニュースもありますが、果たして平時の渋谷と比較して、これは多いのでしょうか?)

 昨年は「瓶の酒」の販売が規制され、今年は酒の販売そのものが規制されていました。渋谷のハロウィンが「少しずつ良い方向に向かっている」というのは、ゴミを見れば一目瞭然です。

 こちらは、16年の渋谷ハロウィンの朝の路上です。タバコの吸い殻や、空き瓶があちらこちらに転がっています【写真=2016年の渋谷ハロウィン後】。それが今年のハロウィンではどう変わったか。

 冒頭のカットは、11月1日の朝、渋谷駅前の様子です。手前に並ぶ黒服の集団……なんだかお分かりになりますか? 実は皆さん、現役の僧侶だそうです。話を聞くと、なんと「ゴミ供養」のため朝5時から集まり、祈っているとのこと。宗派を問わない個人的な集まりで「針供養のような文脈で行っている」そう。

 彼らの先で、オレンジ色のゼッケンを着けている集団は、渋谷区から委託をされた、ボランティアの清掃スタッフです。何人かに話を聞きましたが、皆さん口々に「例年よりゴミが少ない」と話していました。

 スポットスポットに設けられたゴミ回収所には、有志のボランティアさんたちが集めたゴミが積まれています【写真=集められたゴミの袋】。仮装をしたままの人たちもいるので、見ていて楽しい。まあ、喜ばしいことですが、ゴミの量に対してボランティアさんの数が多すぎる。手に持った袋はスカスカで、朝の7時頃にはボランティアの方にとって"ゴミ不足"の状況でした。

 その結果、ご覧の通りです【写真=2019年11月1日 午前6時頃の路上】。それぞれ、109の前と道玄坂。普段、通る方なら分かると思いますが、いつもと違ってタバコの吸い殻ひとつ落ちていません。私はお付き合いがあって、東京・南青山の清掃ボランティアを月一でやっていますが、このエリアの日常と比べてもはるかにきれいです。ハロウィンの翌朝こそが、1年で一番、渋谷がきれいになる日ではないでしょうか。

 汚い話ですが、例年のような吐瀉物も圧倒的に少ない(写真は撮っていません)。というのも、今年のハロウィンは、周囲のお店で、お酒の販売も規制されていました。31日の当日も視察をしましたが、センター街の中のファミリーマートは、店の通路に段ボールを立てて、一方通行にして導線を確保。ドン・キホーテも酒売り場が閉鎖されていて〈私たちは渋谷の町が大好きです。だからこそ、安全で楽しい渋谷ハロウィンのために…〉〈来年こそは自由に販売ができるよう、何卒ご理解いただけますよう〉との張り紙がありました。

 私も昔ローソンの店長をしていたので、条例で酒が規制されてしまうのは、正直、小売店としても苦しいはず。しかし、小売の経営は、短期的ではなく、長期的に、地域に寄り添ったビジネスです。ドンキの張り紙は、そんな小売店の心境が象徴されていると思いますね。こうした周囲の努力によって、きれいなハロウィン明けが保たれているといえます。

 先ほども述べたように、ハロウィンは日本式に変化しつつあります。今年はお酒が飲めない規制のためか、お店を借り切ったり、わざわざ渋谷に集まったりせずに、地元で仮装を楽しんだ人も多かったようです。

 とはいえ、お店の中にこもってしまっては「仮装行列」の楽しさは減りますし、渋谷以外のエリアに分散してしまうのも、残念な気持ちがあります。4年ほどの移り変わりをみていると、節度ある楽しみ方を、皆覚えてきているように思います。

 今回、外国人観光客が一緒に楽しんでいる光景もたびたび目にしました。税金を1億円も投じて……と批判的な意見を言いたくなる気持ちも分かりますが、それを正しく楽しい方向に規制するよう使うなら結構なことだと思います。もしかすると、渋谷が世界のハロウィンの聖地になるための投資になるかもしれませんしね。

 なにより、高齢化社会で、なにかと負担を押し付けられている日本の若者たちです。ハロウィンというストレス発散の場所を奪ってしまっては、かわいそうじゃないですか。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年11月2日 掲載

関連記事(外部サイト)