10日で2度犯人に逃げられた大阪地検、トップを直撃取材すると…

10日で2度犯人に逃げられた大阪地検、トップを直撃取材すると…

大阪地方検察庁(J o/Wikimedia Commons)

 戦後の上方漫才を支えた人生幸朗(こうろう)・生恵(いくえ)幸子のぼやき漫才。人生さんが世相や歌謡曲をやり玉にあげては、「責任者出てこい!」と笑わせた。泉下の師匠に、10日ほどで2度も犯人に逃げられた大阪地検を一喝してもらいたいところである。

 覚せい剤取締法違反と大麻取締法違反で公判中の大植(おおうえ)良太郎被告(42)。今月9日の午前4時前、護送中の彼は、検察事務官に「手錠がキツい」と訴えた。事務官が片方を外した刹那、暴れに暴れ、ワゴン車から飛び出し闇へと消えたのだ。

 大阪府警担当記者が語る。

「捜索を担当させられた刑事には、地検に対して怒りをブチまける人、“またか”と呆れて嗤う人、2通りいますね。逃走した場所は東大阪市の路上ですが、逃走時、大植は腰縄をつけ、右手に手錠をしたまま。さらには丸坊主に裸足と、かなり目立つ風体でした」

 けっきょく、2日後の11日になって大阪市内で身柄確保できたからよかったようなものの、護送担当の検察事務官には、なにしとんねんとぼやきたくもなる。

「公判中に保釈されていた大植は、大阪地裁岸和田支部の判決公判に3回出廷しなかったとのこと。今月7日に保釈取り消しとなっています。府警が大植を発見して地検に身柄を引き渡した。それで地検が仮留置先の枚岡(ひらおか)署に護送していたわけです。枚岡署からは目と鼻の先、500メートルほどの場所なんですよね」

 それも薬物事案なのに3人だけで対応し、車内で被告の両側を挟んでいなかったというオマケつき。人生さんの相方の生恵さんにも、「アホか、この泥亀!」と突っ込んでもらいたい。


■「コメント、出してる通り」


 アホかという材料はほかにもある、と府警担当記者。

「10月30日にも、同じように逃げられているんですよ。ひき逃げ事件で起訴後に保釈が取り消された被告女が、大阪地検岸和田支部に出頭後に車で逃走する事件があったばかり。女は2日後に確保されましたが、今回はその失態からわずか10日後に起きたわけです」

 甲南大学法科大学院教授(刑法)の園田寿氏はこう指摘する。

「検察事務官というのは本当にふつうの公務員。逃走を図ろうと暴れる被疑者に対する訓練は受けていないわけです。今回の護送は3名でしたが、それ以上に人員を割けるかといえば難しいかもしれません。やはり、護送においては警察への協力要請を行うべきでした」

 一方、元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行氏の意見は厳しい。

「公務員ではありますが、法の執行機関の公務員です。行政をやっている公務員とは違うので、それなりの覚悟も知恵も必要です。逮捕術を学んでいるかどうかではなく、手錠や腰縄の扱い方の教育と訓練が足りなかっただけ。検察には、自覚と誇りをもう一度持ちなさいと言いたい。誇りというのは、責任感の裏返しでもある。今回の件で、責任感の欠如が明らかになったのではないでしょうか」

 人生さんなら、まちがいなく「責任者出てこい!」と口にするだろう。そこで、責任者である大阪地検のトップ、田辺泰弘検事正を直撃した。しかし、「コメント、出してる通りですから」と言うのみ。大植逃走について検事正コメントは出してないのに、なんとも無責任な反応ではないか。ただ、検事正は事件前日の11月8日付で着任したばかり。ちなみにその前日、7日は検事正の59回目の誕生日であった。よりによってなぜこんなときに……と、ぼやきたいかもしれない。しかし実際に逃走事件は起きた。再発防止策も含め、仕事を引き継ぐなど、責任者として岸和田の教訓を生かせなかった事実は重い。

「週刊新潮」2019年11月21日号 掲載

関連記事(外部サイト)