女子トイレ使用で勝訴の経済産業省・性同一性障害職員が語る「割り切れなさ」

女子トイレ使用で勝訴の経済産業省・性同一性障害職員が語る「割り切れなさ」

女子トイレ解禁

 性同一性障害と診断され、男性のまま女性として勤務する50代の経済産業省職員。心はもちろん見た目も女性そのものなのだが、職場の女子トイレの使用を制限されていた。職員は国を訴え、トイレを自由に使える“権利”を勝ち取ったのである。

 東京地裁で、4年にわたる裁判の判決が出たのは今月12日。職員は、経産省入省後に性同一性障害と診断された。9年前から女性の格好で勤務していたが、経産省からは“女性職員とのトラブルを避けるため”と、職場のフロアから2階以上離れた女子トイレの使用しか許されない。人事院に訴えても埒が明かず、2015年に、国を相手取って慰謝料約1650万円と処遇改善を求める訴訟を起こした――。

 判決は国に132万円の賠償などを命じ、女子トイレの自由な使用を認めた。

「なかなか(性転換)手術を受けないんだったら、もう男に戻ってはどうか」

 という上司の発言を違法とした。それでは、職員本人に語ってもらおう。

「判決には、全体的には満足しています。でも、この“男に戻ったらどうか”という発言で、私はメンタルヘルスを悪くして休職してしまいました。その部分の関連性については認めてもらえなかったんです」

 長い闘いが“勝利”に終わっても、割り切れない部分は残っているようである。


■隔離するな


「私は背広を着てネクタイを締めて男性職員として働いていましたが、2010年のある日を境に女性の服を着て出勤しました。職場の皆さんはびっくりするだろうとは思いました」

 職場の担当職員と話し合った結果、トイレの使用制限を告げられたわけだが、

「私が求めたのは、毎日使うトイレのこと。女性として勤務している人と一緒にしてほしい。それだけです。女子トイレは個室なので性器の形状が見えることもあり得ませんから。新たにトイレを作れとか、下半身が露わになるシャワー室も一緒に使いたいとは言っていない。シンプルに、“平等にしろ”“隔離するな”ということです」

 当世は、多くの民間企業で職員の求めるような対応がとられ、共用トイレを設置する会社もある。先のセクハラ発言は問題外として、経産省も、女子トイレの使用を完全に禁じていたわけではない。

 ある中央官庁の職員は、

「民間企業なら共用トイレを備えればいいが、役所ですから税金を使うことになる。経済合理性からも、“一人のためになぜ”となり、難しいのです」

 次に経産省の30代女性職員に訊ねると、

「ふだんも女性として生活している人ですから、女性トイレをふつうに使っても構わないと思います。ただ、違和感がまったくないということもないですが……。この違和感から変えるべきかなと感じたりもします」

 と胸の裡を明かす。こうした点について職員本人は、

「やはり、隔離措置と感じています……」

 実に複雑で難しい問題なのである。

「週刊新潮」2019年12月26日号 掲載

関連記事(外部サイト)