ストーカー、反グレの被害者になり警察に相談する時に頭に入れておいてほしいこと

 ストーカーに関する事件はもはや珍しくも何ともなくなっているものの、この件はかなり特異だったと言えるだろう。昨年12月12日、小学5年生の女児に対するストーカー行為で都内に住む33歳の男が逮捕された。女の子を「かわいい」と思い、連日つきまとい、撮影し続けたことがストーカー規制法違反にあたる悪質な行為だとして警察は警告なしでの逮捕に踏み切ったのだという。

 今回の場合、警察がかなり早めの判断を下し、即動いたため、女児には直接的な被害は無い模様だが、残念ながら警察の反応が鈍いがために事態が悪化したケースも少なくない。

 こうした場合、事件化したのちに警察が厳しく批判されることになるのが常である。被害者が出た以上、それは仕方のないことだろう。実際に、桶川ストーカー殺人事件の例に代表されるように、警察の初動に問題があったケースも珍しくはない。こうしたケースを知ると、「警察は頼りにならないのではないか」といった不安を抱くのも当然だろう。

 ただし、実際にストーカー被害を訴えて相談する先としてはやはり警察が最優先すべき選択肢なのも現実である。

 では、そのような時にどうすれば相手に迅速な対応を促すことができるのか。

 危機管理コンサルタントとして数多くの企業のクライアントを抱えている(株)リスクヘッジの田中優介代表は、警察(官)との付き合い方にはいくつか心がけておいたほうがいいポイントがある、という。著書『地雷を踏むな 大人のための危機突破術』で田中氏は、警察官との付き合い方も個人の危機管理には重要だ、と述べている。

 ではどうすればいいか。田中氏にポイントを聞いてみた。

 まず、理想を言えば普段から警察と接点を持っておくことが望ましい、と田中氏は語る。

「普段の平穏な生活の中では、ほとんど必要のないことと思いますが、ご近所トラブルやストーカー問題がエスカレートした時には、力を借りることが必須となります。実はそうしたトラブルを未然に防ぐために、警察の側もさまざまな犯罪の情報を得るために市民や企業との情報交換をしたいと考え、さまざまな施策を打っています。警察懇話会などはその一つです。しかし、これらの人々は公共性を重んじる職業ですし、多くの人がさまざまな思惑を持って親しくしようとしています。

 彼らに警戒心を抱かせないようにするには、相手が好む又は欲する人間像を、敏感に嗅ぎ分けることだと思います。逆に言えば、相手が嫌う又は敬遠する人間像を、早い段階で察知することです。具体的に言うなら、ルーズとかアバウトという人間像は厳禁でしょう。ずる賢いとか計算高いという印象も同様です。

 反対に、緻密でデータを重視する姿勢、誠実で礼節をわきまえている印象は、歓迎されると思います。

『誰でもそうでしょうよ』と思われるかも知れませんが、必ずしもそうとは言い切れないでしょう。新興企業の若い経営者には、四角四面な人は、歓迎されないケースがあります。弊社のような危機管理業務でも、ずる賢さや計算高さが評価されますからね」

 もちろん、実際には警察と無闇に接点なんか持ちたくない、というのが人情かもしれない。そうなると、やはりどうしてもトラブルの気配がした際に駆け込む、ということになる。ここで忘れてはならないのが、彼らの習性を理解することだという。『地雷を踏むな』の記述を引用してみよう。

「たとえば、女性が性犯罪を受けて、警察に駆け込んだとします。有名なホテルのバーで男性と飲んでいて、酔いつぶれてしまった。気が付いたら、そのホテルの部屋で裸にされていて、暴行を受けてしまった。

 こんな訴えをする被害者に対して、警察官は根掘り葉掘り聞きます。

『なぜホテルへ行ったんですか?』『酔いつぶれるほど飲んだのは何故ですか?』『途中で帰ることや逃げることはできなかったのですか?』等々。

 こんな質問をされたら、被害者の女性は、自分が責められているような気持になるでしょう。実際には、もっと赤裸々に暴行の詳細を聞かれます。もちろん、最近の警察は質問に細心の注意を払います。それでも、被害者からすれば決して愉快なことではありません。

 この段階で心が傷ついてしまった被害者は警察を敬遠して、被害届を出さなくなってしまうケースも後を絶ちません。

 しかし、基本的に警察は別に被害者の言い分を信用したくないわけでも、事件を揉み消したいわけでもありません。数々の質問は後になって、極めて重要になるのです。なぜなら、加害者の弁護士も、法廷で被害者に同じ内容の尋問をするからです。しかも加害者を無罪にしたり、刑を軽くするためにです。

 だから、起訴に持ち込み有罪を勝ち取るには、警察官も根掘り葉掘り聞いておく必要があるのです。逃げられなかった理由として、薬を飲まされた疑いがあるなら、尿検査をして薬物を検出させる必要があるでしょう。法廷に提出する証拠を確保しておくのです。

 こんな事案も想像してみて下さい。半グレと呼ばれる不良集団や悪質なクレーマーから、強迫めいた電話や威圧的に言動を受けたとします。相手が暴力団員なら、暴力団対策法や暴力団排除条例で取り締まることができますが、彼らには適用されません。だから警察官は聞いてきます。『その電話は録音してありますか?』『生命の危険を感じるような言葉を言われましたか?』『身体や物品に危害を加えられましたか?』等々。

 それに対して被害者が、『残念ながらありません』と答えると、警察官は困った顔をして言います。

『それが無いと、ちょっと直ぐには動けませんね』」

 警察側の論理からすれば根掘り葉掘り聞くのは当然でも被害者からすればこんなに腹が立つことはない。しかもそれで「動けない」とは何事か――その気持ちはわかるが、と前置きしたうえで田中氏はこう補足する。

「ある程度の確証や証拠がなければなかなか警察は動けません。警察官は、何らかの法律に違反していなければ捜査を始められないからです。しかし、動転している被害者にはとても冷たい対応に思え、これが『警察は何か起きるまでは何もしてくれない』という嘆きにつながるのです。気持ちはよくわかるのですが、そこでコミュニケーションを諦めても被害者は得をしません」

 もちろん被害者の気持ちに寄り添った対応が望ましいのは言うまでもない。しかし、能力的、あるいは人員的にそこまでの対応が可能かどうかはわからない。である以上は、相談する側にもある程度の準備や心構えが必要になる。何かことが起きた時にではなく、日頃から想定されるリスクを洗い出しておくことを危機管理コンサルタントとしては強く推奨している、という。

「警察は頼りにならない」こともあるのは間違いない。しかし、それでも頼りにせざるを得ない以上は、良好な関係を構築するほうがいいということだろう。

2020年1月4日 掲載

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