IR汚職で逮捕の秋元司議員が披露していた土地錬金術 口銭稼ぎの達人は単なる守銭奴

IR汚職で逮捕の秋元司議員が披露していた土地錬金術 口銭稼ぎの達人は単なる守銭奴

安倍首相と並ぶ秋元司容疑者

 カジノ事業を巡る汚職事件で、内閣府の前副大臣としてIR(統合型リゾート)を担当していた秋元司衆議院議員(48)[東京15区]が収賄容疑で逮捕された。そして彼を「不動産取引情報の達人」だったと指摘したフェイスブックが話題になっている。

 ご覧になっていない方でも、「そういう政治家だったんだなあ」と腑に落ちるに違いない。その内容をご紹介する前に、秋元容疑者の経歴や逮捕容疑などを確認しておこう。

 秋元容疑者は1971年生まれ。鹿児島市内の市立小学校と中学校、そして県立高校を卒業、92年に大東文化大学の経済学部に入学した。

 大東大は東京都の板橋区に本部を持つほか、埼玉県東松山市にキャンパスを擁している。

 大学生となった秋元容疑者は93年、東京10区などで衆議院議員を務めた小林興起氏(76)の大学生秘書として事務所に入所する。96年に卒業すると、2000年には小林氏の公設第1秘書に就任した。

 04年の参院選で比例区から自民党公認候補として出馬、初当選を果たす。翌年の郵政民営化法案の採決で反対票を投じて処分を受けたことが話題になった。

 09年に母校の大東文化大で理事に就任するが、10年の参院選で落選。12年には衆院に鞍替えして東京15区で出馬、落選するも比例復活を果たした。

 こうして衆院議員となった秋元容疑者だが、IRやカジノに理解を示す議員として知られていたという。

 10年にIR議連(正式名:国際観光産業振興議員連盟)が超党派議員74人で発足したが、秋元容疑者は副幹事長10人の中の一人として名を連ねている。

 16年には衆院内閣委員会委員長に就任、カジノ法案審議で野党の反対を押し切り、法案採決に尽力した。

 そんな秋元容疑者を東京地検特捜部は、昨年12月25日、IR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」から370万円相当の賄賂を受け取っていたとして収賄容疑で逮捕したのだ。

 さらに同社顧問の紺野昌彦容疑者(48)と仲里勝憲容疑者(47)、それに日本法人の元取締役の鄭希容疑者(37)の3人を贈賄容疑で逮捕した。

 特捜部の調べによると、17年9月下旬、「500ドットコム」社がIR事業を行う便宜を図る見返りとして、秋元容疑者は逮捕された3人から現金300万円を賄賂として受け取ったという。

 ほかにも18年2月中旬には秋元容疑者と妻が北海道旅行に招待され、航空チケット費や宿泊代など、合計約70万円相当の賄賂を受けた――などの疑いが持たれている。

 秋元容疑者は17年8月から18年10月まではIR担当の内閣府副大臣を務めていた。370万円相当の賄賂を渡された時期と重なるのは興味深い。


■「反中国」だったはずの秋元容疑者


 それでは、いよいよフェイスブックをご紹介しよう。当該記事の全文を転載させていただく。掲載されたのは12月25日、つまり逮捕当日だ。

〈秋元司衆院議員が逮捕された。

 この一件は、中国企業(500ドットコム)が外為法を犯して持ち込んだ数百万円を秋元議員に渡した贈収賄事件として立件されることになりそうだが、事件の舞台は沖縄で行われたIRをめぐるシンポジウムだといわれている。

 沖縄でシンポジウムが開催された経緯についてはおおよそ把握している。中国・台湾の沖縄における窓口となっている元自治体議員の有力者が秋元氏の元政策秘書にシンポ開催を持ちかけ、その元議員と関係の深い県内ゼネコンがバックアップするかたちでシンポが実現したという話だ。要するに、沖縄の関係者が秋元氏と500ドットコムをつなぐ役割を果たしたことになる。中国から持ち込まれた現金の授受も沖縄で行われた可能性がある。現金の一部は沖縄の関係者にも渡っているという情報もある。

 大学教員時代、ぼくは秋元氏の母校である大東文化大学(大東文化学園)の理事を務めていたが、秋元氏も卒業生枠の理事で(現在も理事)、会議ではなぜか隣席になることが多かった。今だからいうが、卒業生理事はおしなべて不動産取引やミニ開発に関する知識が豊富で、法規についてはもちろんのこと、どこで誰が新たなミニ開発を行うかという情報にも精通していた。卒業生理事のなかには教員や僧職の人もいたが、ほぼ例外なく「不動産取引情報の達人」であり「口銭稼ぎの達人」だった。秋元氏もその1人である。

 彼らの話を聴いていると、「お金というのはこうやって作るものなんだ」と感心する一方、その話で盛り上がる理事諸氏のなかにいると、胸くそが悪くなることもあった。大学は教育研究の場であって「不動産でどうやって儲けるか」の情報を交換する場ではない。「そういう話はよそでやってくれよ」と秋元氏に苦言を呈したこともあった。

 政治家が儲けることがいけないというのではない。「儲けたいという欲望」が、規範遵守の精神と目的意識に裏打ちされていなければ、その人はたんなる守銭奴である。口銭稼ぎが高ずると規範遵守の精神と目的意識は失われ、金銭欲の渦のなかに呑みこまれて、肝心なことがおろそかになる。

 秋元氏がそうだったとはいわないが、IRを主管する副大臣だったのだから、普通の議員以上に身を律してことに臨むべきだったと思う。もともと「反中」だった秋元氏が、中国共産党の息のかかった中国のベンチャー企業からカネをもらって便宜を図るという実に情けない話になるかもしれない。容疑の段階だからまだ何ともいえないが、東京地検特捜部が乗りだしている以上、秋元氏の脇の締め方は甘々だったと考えて差し支えないだろう。

 こんな状態だから、IR事業には今後相当な逆風が吹くだろう。多くの国民は、「IR事業=カネに執着する守銭奴の群れ」というシンプルな図式を好んでいる。秋元議員は、その図式に見事にあてはまるような「尻尾」を掴ませてしまった。こういう事件を立件するのは久方ぶりだから、特捜部も張りきっている。国民のIRへの反感は間違いなく増幅されるだろう〉(註:引用文はデイリー新潮の表記法に合わせた。以下同)


■「あそこの地価は上がる


 筆者が秋元容疑者と理事会で顔を合わせていたからか、記述が具体的だ。そのため「不動産取引情報の達人」、「口銭稼ぎの達人」という指摘に説得力がある。おまけに贈収賄の舞台となった沖縄に、筆者が深い知見を持っていることが行間から伝わってくる。

 それもそのはず、この記事は『外連(けれん)の島・沖縄――基地と補助金のタブー』(飛鳥新社)や、『沖縄の不都合な真実』(新潮新書:大久保潤氏との共著)の著者である篠原章氏が執筆したものなのだ。

 篠原氏の専門は財政学で、かつて大東大の環境創造学部で教授を務めていた。ご本人に当時の状況を振り返ってもらおう。

「私は環境創造学部の学部長に就任して理事になりました。秋元氏が参院選で落選した頃で、民主党政権の時代でしたね。すでに彼は理事でしたので、理事としては先輩だったことになります。大東大卒の国会議員は珍しいため、理事に就任したわけです。大東大の理事会には、こうした『卒業生枠』があり、様々な世界で活躍した人たちが参加していました。そして、どういうわけか卒業生理事は、投資や利殖といった分野に知識が豊富な人が多く、秋元氏もその一人だったのです」

 篠原氏によると、卒業生理事に就任するような「地方の名士」が大儲けするための投資先は土地がメインになるという。地価の動向によっては、望外の稼ぎも手にすることができる。地価上昇時には、他の投資先、例えば株式などよりはるかに高い儲けを手にすることができる。

 民主党が政権交代を実現したのは09年。鳩山由紀夫氏(72)が内閣を発足させ、翌10年の参院選で秋元容疑者は落選する。この頃、東京23区の住宅地における平均地価は微減が続いていた。篠原氏が秋元氏とともに理事を務めていたのは、地価が底値を探るような動きを見せていたこの時期のことで、地価上昇が見込まれる土地を安価に取得すれば近い将来大儲けすることのできる絶好の投資機会でもあった。

 実際、14年頃から地価は上昇に転じていく。今の都内なら“バブル”と評されるほど地価が高騰した地区が存在するのはご存知の通りだ。振り返ってみると、確かに土地投資に追い風が吹いていた時期だったのだ。

「フェイスブックにも書きましたが、なぜか理事会で秋元氏と席が隣になることが多かったんですね。ですから『あそこの土地は地価が上がる』とか『あそこで再開発が始まるらしい。一枚、噛んでおいたほうがいい』という秋元氏の発言は、嫌でも耳に入りました。民主党を打倒し、自分たち自民党が政権を奪取すれば、日本経済は好転し、地価も上昇に転じる、という読みもあったのかもしれません」

 篠原氏は「私大経営に資金が必要なのは事実」と理解も示す。理事として大学経営に参画している以上、ある程度なら利殖話も容認できるが、秋元氏らの関心は大学経営ではなくおもに私益にあるように思えた。篠原氏には、理事たちが儲け話に興ずる姿が異様なものに見えたという。

「私大経営において、例えば文部科学省から補助金や助成金を得られる理事、土地投資で稼げる理事が評価される側面は否定しません。とはいえ、大学は第一に教育の場でしょう。秋元氏などには、もう少し理事会では土地投資の話を控えてもらえないかと依頼しましたが、その意図は理解できなかったようです」(同・篠原氏)


■参院議員の隠し子だった紺野容疑者


 話を秋元容疑者が逮捕された時期に戻そう。贈賄側として「500ドットコム」顧問の紺野昌彦容疑者と仲里勝憲容疑者の名前も報道されたが、篠原氏は以前から両容疑者の芳しからぬ評判を耳にしていたという。

「率直に申し上げますが、両容疑者は地元の関係者などから『詐欺師のような人たち』と囁かれていました。例えば仲里容疑者ですが、13年の浦添市議選では1173票で初当選しました。しかし17年の市議選では978票で落選してしまいます。市議として4年間を真面目に尽力したならば、ここまで票数が落ちるでしょうか。浦添市の有権者が下した判断から、仲里容疑者の“実像”が浮かび上がってくると思います」

 贈賄の共犯として逮捕された紺野容疑者に関しては、ニュースサイト「JB press」が1月1日、「IR疑惑・逮捕の紺野昌彦に沖縄で『詐欺師』の悪評」(上原由佳子氏の署名原稿)という興味深い記事を掲載している。印象的な部分を引用させていただく。

〈逮捕前の紺野はFacebook上で、中国でおこなわれたド派手なパーティーの写真や、札束や銀行の預金額などの写真をしばしばポストしていた。私は数カ月に1回程度はキャバクラ嬢として働いている、貧しきシングルマザーのライターなので、自分のFacebookのタイムラインのなかで紺野の投稿はかなりの異彩を放っていた〉

 インターネットで画像検索を行ってみると、札束を握りしめて笑顔を浮かべる紺野容疑者の写真が多数、表示される。下品の極みと言っていいだろう。

 また文春オンラインは12月26日、「秋元司議員、収賄容疑で逮捕 “カジノ疑惑”のキーマンは国会議員の隠し子だった」の記事を掲載した。

 文中で、紺野容疑者の父親が日本維新の会の室井邦彦参議院議員(72)[比例区]だと指摘、室井議員本人も取材に対して「若い頃に認知した息子であることは事実です」と認めている。

 元浦添市議だった仲里容疑者を、擁護する声もあるのは事実だ。沖縄タイムスは12月26日(電子版)で「逮捕の1人は元浦添市議 IR贈収賄事件 『とことん頑張る姿が印象的だったが…』」と報道した。これも一部を引用させていただく。

〈仲里容疑者の周辺は「(仲里容疑者の)市議選の出発式で紺野さんが人を集めるような間柄だった」と語る。別の関係者は「紺野さんの影響でIR誘致活動に踏み込むようになった。(逮捕は)巻き込まれた形ではないか」と話した〉

 その仲里容疑者だが、自身のツイッターで、次のような経歴を紹介している。

〈1972年沖縄県浦添市生まれ/仲西中→興南高校→関西学院大学社会学部→青山学院大学大学院中退/大和証券系ベンチャーキャピタルで投資業務。2002年外食企業株式上場準備担当者として上場果たす(現 東証1部)〉

 支援者が弁護したくなるような一面も持っていたのかもしれないが、だからこそ「札束を持って笑顔の写真」をSNSにアップするような紺野容疑者と交際していれば、普通の有権者なら眉をひそめて当然だろう。


■特捜部の捜査は、どこまで伸びるのか?


 読売新聞は1月3日、「『衆院5議員側に500万円』…IR汚職 中国企業側がメモ」の記事を掲載した。

 このスクープ記事で読売新聞は、いずれも衆議院議員の中村裕之氏(58)[北海道4区]、岩屋毅氏(62)[大分3区]、船橋利実氏(59)[比例北海道]、下地幹郎(58)[比例九州]、宮崎政久(54)[同]の5人に資金が提供されたと報じた。

 防衛大臣を務めた岩屋衆院議委員の名前にインパクトがある。TBS(電子版のTBS NEWS)も1月3日、「秋元議員以外の5議員を任意聴取、“現金”複数が認める」と報じた。

 これに対して、FNN(フジテレビ系:電子版)は1月4日、「国会議員相次ぎ疑惑否定 IR汚職事件」とも報じた。今後、どれだけ司直の手が政界に伸びるのか注目される。

 また今回の逮捕によって、全国でIR誘致に反対する世論が盛り上がる可能性は高いと考えられる。県民から逮捕者の出た沖縄県ならなおさらだ。

「もともと私はIR政策には批判的でしたし、特に沖縄県でカジノ営業を許可すると、貧困問題がさらに拡大すると考えています。沖縄県も一応はIR誘致に消極的でした。しかし、IRをめぐる贈収賄の舞台が沖縄だという事実は、中央政府の利権に依存する関係者が存在し、国の補助金頼みの経済構造が続いていることを示しました。どうやって沖縄が本土から自立した経済を構築していくのか、改めて県民の熟慮と決断が求められていると思います」(同・篠原氏)

デイリー新潮WEB取材班

2020年1月7日 掲載

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