肉体関係をせまるモンスター社長も…外国人労働者を搾取する特定技能制度の問題点

肉体関係をせまるモンスター社長も…外国人労働者を搾取する特定技能制度の問題点

外国人労働者を搾取する特定技能制度の問題点とは(※画像はイメージ)

 留学生の失踪、偽装難民、国保の不正利用……近年、外国人労働者を巡り、メディアにはセンセーショナルなワードが踊っている。2019年4月には出入国管理法が改正され、安倍政権は外国人労働者の受入れ拡大に舵を切った。人材不足が深刻な業種を対象に単純労働での外国人材活用に門戸が開かれ、19年度は最大で4万7550人、5年間で約34万5000人の外国人労働者の受け入れが見込まれている。しかしその裏では、劣悪な環境で搾取される外国人労働者の悲痛な叫びが聞こえてくる……。

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 日本において外国人労働者は“奴隷的状態”であり、技能実習制度などは“人身売買”に当たる――。

 いくら何でも言い過ぎだろう……と思う読者もいるだろうが、米国務省人身取引監視対策部が発表している「人身取引報告書」の2016〜18年版から見えてくるのは、こんな“実態”だ。

 外国人労働者の問題に詳しい神戸大大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授は、「搾取」の実態について次のように解説する。

「私が知っている最も悲惨な例は、ある工場のケースです。職場にある寄宿舎に、外国人労働者が十数人暮らしていたのですが、その企業の社長が夜な夜な複数人の女性たちに関係を迫っていたそうです。もちろん立派な犯罪ですが、ベトナムのような封建的な国の女性の場合、被害にあったことが母国にいる夫に知られてしまったら、間違いなく彼女たちが責められる。となれば国に帰ることもできなくなるので、黙っているしかなかったそうです。また、仮に被害女性が告発してその企業が倒産してしまったら、働き口がなくなってしまう可能性もあります。同郷の同僚たちから『お前のせいで仕事がなくなった』と、国に帰ってから責められてしまったら、なおさら大変なことになるのです」

 こうした性的、経済的搾取を招いてしまう要因の一つには、外国人労働者を巡る制度に構造的問題があるという。


■偽装難民に対処しつつ労働力はほしい安倍政権


 一昔前の日本の入管法は、しばしば“ザル法”と揶揄されることも多かった。というのも、2010年当時の民主党政権が、それまで難民認定の申請後一定期間を経た外国人のうち、生活困窮者に対して優先的に認めていた就労資格を、全ての申請者に「一律」に認めるよう見直したためだ。これによって、技能実習や留学生制度を利用して来日した外国人たちが、事実上、難民申請を繰り返せば半永久的に日本で働き続けられる状態となったのだ。いわゆる「偽装難民」問題である。

 だが、安倍政権になってからは一変。明らかに難民に該当しない外国人の在留は認めないこととなった。同時に“労働力”として外国人の受け入れ拡大を目指しているのは先述したとおり。18年12月に「出入国管理法改正案」が成立し、今年4月にはこれまでの「技能実習ビザ」とは別に、介護や外食産業、建設業、農業など14業種を対象とした「特定技能ビザ」という新たな在留資格が創設された。

 この特定技能制度が、外国人労働者のブラック労働を加速させる要因なのだが、まずは、その仕組みについて簡単に説明しておこう。

 特定技能ビザを取得するためには、外国人は「特定技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格する必要がある。またこれには「1号」「2号」と2段階のランクがあり、平たく言えば前者は単純労働者、後者は熟練した技能を持つ現場監督などに与えられる。1号の在留期間の上限は5年だが、2号なら更新条件を満たす限り日本に居続けられるのだ。(ただし2号の対象は建設業と造船業の従事者のみ)

 たとえば従来までの技能実習制度(最長5年)を終えた後、特定技能の1号を取得できればさらに5年、つまり合計10年間を日本で働けるというわけである。さらに、これまでの技能実習制度では「転職(職業選択)の自由」が認められていなかったが、特定技能ビザの取得者には同業種内での転職が可能となった。


■搾取を悪化させる特定技能制度


 斉藤氏は、「特定技能制度は、日本の受入れ企業による技能実習生への搾取を加速させる危険性が高い」と警鐘を鳴らす。

「外国人労働者を受入れている企業の中には、日本人の労働者が寄り付かないような低賃金で重労働なブラック企業もあります。技能実習生たちの中には、少しでも日本でお金を稼ぐため、また特定技能のビザ欲しさに我慢して働き続けている人もいるのです。うまくすれば技能実習生で3年または5年、さらに特定技能1号で5年と、計8年または10年働くことができますからね」

 ブラック企業に勤める技能実習生は、導入された特定技能を取得し、早く転職すればいいのではないのだろうか?

「いえ、特定技能ビザを取得するためには試験に合格するのが原則ですが、取得できる人数枠はあらかじめ決められているんです。であれば、技能実習生は、耐えてでも、満期までの3年間または5年間を同じ職場で働き続けたほうがいい。満期まで働いた技能実習生は、特定技能の試験が免除され、特定技能の資格が得られる。言い換えれば技能実習生たちが日本で働き続けるためには、どんなにブラックな職場でも3年または5年、文句を言わずに我慢し続ければいいわけです」

 そもそも同業種内での転職が可能と謳う特定技能であっても、実際にはそうはならない現実があって、

「外国人労働者が、技能実習から特定技能に移って転職しようとした場合、元居た会社の“推薦状”(評価調書)が必要になります。しかし、職場の労働環境に嫌気が差して転職をする場合、往々にして職場との関係が悪く、推薦状を出してもらえないことがありえます。そもそも、特定技能の対象となる業種の団体の多くは、外国人労働者の転職に否定的です。日本人の労働者が定着しないからわざわざ外国人を呼んで育てたのに、彼らに逃げられてしまったら元も子もない。そのため、“悪質な引き抜き行為を禁止”を名目とした、転職を縛る動きがあります。何が“悪質”に当たるのか、明確な基準は設けられていないにも関わらず、です」

 転職の自由は認められているものの、実際は高いハードルに阻まれている外国人労働者たち。さらに、こんな理不尽なケースもあるそうで、

「外国人労働者たちには、会社に何か文句を言おうものなら、最悪、帰国させられてしまうリスクがあるのです。もちろん、その場合には本人の了承を得、書類にサインをする必要があります。ただ、それも会社が『新しい会社を紹介する』とウソをつく、あるいは脅したりして無理やり一筆書かせることもあるわけです。強制帰国を請け負う警備会社まで現れています」


■犯罪や反日感情に染まる外国人も


 斉藤氏によれば、受入れ企業の中には給料を遅配させるケースもあり、それも外国人労働者にとっては死活問題だ。

「外国人労働者の多くは、来日のために母国で多額の借金をしています。その支払いが滞ってしまうと、利息がどんどん膨らんでいってしまいます。毎月必ず一定額を仕送りする必要があるわけです。給料が遅れると、日本の金融機関からお金を借りるのは難しく、仲間内で“高利貸し”をするようになるケースも耳にしました。しかしその取り立ても厳しい。結果、深夜に水商売のアルバイトをこっそりしたり、集団的に万引きをして糊口をしのぐこともあるようです」

 これは我々にとっても人ごとではない。こうした理不尽な目に遭った外国人労働者の怒りの矛先が日本に向かい、“反日”思想に目覚めてしまうケースもあるからだ。

「外国人労働者のほとんどは、日本人は親切で礼儀正しく、ルールを守るという“信用”があって来日する。が、搾取をされる内に、日本という国に対して失望や恨みを抱いてしまうのです。ある外国人労働者の女性は、技能実習生として働いていたブラック企業から逃げ出し、日本に恨みを抱いていました。幸い、その後に不法就労した工場の労働環境が恵まれていたそうで、『初めて日本人の優しさを知り、本当の日本社会に触れることができた』と語っていました」

 外国人労働者の拡大を目指す政府も、こうした状況を黙認しているわけではない。2019年4月に施行された出入国管理法改正案では、外国人労働者を受入れる企業に対し、日本人と同等以上の報酬の支払いや、給与不払いなどを防ぐために預金口座への振込を義務付けていた。

 にもかかわらず、問題はすぐには減りそうもない――。

取材・文/角南 丈(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年1月8日 掲載

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