「リアル万引き家族」被害総額400万円で逮捕、一家4人で車上生活

「リアル万引き家族」一家4人で車で移動しながら"出店荒らし"被害総額400万円で逮捕

記事まとめ

  • カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた『万引き家族』を彷彿とさせる家族が実在した
  • 一家は車で移動しながら"出店荒らし"で総額約400万円相当、計43件もの盗みを働き逮捕
  • 埼玉県の借家に去年まで住んでいたが家族が働いている姿は見たことがないと近隣住民

「リアル万引き家族」被害総額400万円で逮捕、一家4人で車上生活

 東京五輪招致に向けたスピーチで、滝川クリステルは〈お・も・て・な・し〉の後にこう続けている。〈皆様が東京で何かをなくしても、ほぼ確実に戻ってきます。たとえ現金でも〉。そう、日本招致のカギは安全と安心、心の豊かさにあったはず。だが、わが国には光だけでなく、世界が知らない闇もある。昨年末に発覚したリアル「万引き家族」の風景はまさにそのひとつだ。

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 釣具店に姿を現した少年と幼い女の子。店員が目を離した隙に、女の子は店の入口に設置された盗難防止用センサーのコンセントを引き抜く。次の瞬間、少年は数本の釣竿を抱えたまま店外に飛び出した――。

 2018年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた「万引き家族」(是枝裕和監督)のワンシーンである。実は、この映画を彷彿とさせる「家族」が実在していたのだ。

 昨年12月16日、埼玉県警は窃盗事件の被疑者として、坂上里喜(62)と妻のやすえ(55)、長男の祐貴(26)、さらに、長女の熊川汐保美(30)の逮捕を発表。社会部記者によれば、

「この一家は昨年2月から7月にかけて現金やゲーム機、研磨機といった電気工具など総額約400万円相当、計43件もの盗みを働いていた。やり口は休日や夜間に無人の商店へと侵入して金品を盗み出す“出店荒らし”。およそ半年間にわたって、埼玉県北部から群馬県太田市周辺を車で移動しながら犯行を重ねた。県警は“泥棒家族”と呼んで捜査を続けていました」

 父親と子どもたちは昨年7月に窃盗容疑でお縄となり、一時、生活困窮者向け施設に身を寄せた母親も4カ月後に逮捕されている。

「スーパーからはポテトサラダや弁当を、ラーメン屋からはチャーシューを盗んで食料にしたようです。それ以外の盗品は父親と息子が実行犯となって手に入れ、母親がきれいに磨いて娘がリサイクルショップに持ち込んでいる。足がつかないよう家族のなかで役割分担を明確にしていた」(同)

 盗みが生業となっていたワケで、まさに映画を彷彿とさせる「家族」である。車上生活に至る前に彼らが暮らしたのは、埼玉県本庄市内にある平屋の一軒家だった。近隣住民によれば、

「坂上さんは20年以上前から、あの借家に住んでいましたよ。息子さんも含めて家族が働いている姿は見たことがない。事故を起こしたお父さんが交通刑務所に入ったこともあった。お母さんは足が悪くて生活保護をもらっていましたが、近所では“当たり屋”でケガをしたからじゃないのかって。実際、役所も不正受給を疑っていたし、息子と娘は消費者金融から借金をしていたようです」

 結局、坂上一家は去年の初めにこの家から“夜逃げ”する。それも「家財道具をすべて置いたまま、突然、“ドロン”です」(同)。

■ラブホテルにも宿泊


 まもなく一家は盗みに手を染め始める。

「うちがヤラれたのは去年の4月28日でした。夜の8時に店を閉めた後に、忍び込まれたみたいです」

 被害を訴えるのは、本庄市に店舗を構える「オザーク・ルアーショップ」の店主。奇遇にも映画と同じ釣具店だ。店主が取り付けた三つの南京錠はペンチで切断され、アルミ製のドアの一部には穴が開けられていた。

「この穴から手を突っ込んでドアノブの内カギを回したのでしょう。犯人はそのまま倉庫に侵入して手あたり次第に商品を持ち出している。ブラックバス釣りに使う釣竿が約30本、それ以外にルアーも100個以上なくなっていたので、被害総額は75万円ほど。通報で駆けつけた刑事さんによれば、店内には2人の足跡があったとか。ドアは壊されましたが店内に荒らされた形跡は見当たらなかった。店の隣に住む人に聞いても不審な物音はしなかったと言ってましたね」(同)

 夜中にこれだけ大量の商品を盗み出しながら、周囲に気取られない辺りは“ウデ”の良さを窺わせる。さらに、店主は事件直前にも一家を見かけていた。

「3月下旬に千本桜で知られる小山川の側道をサイクリングしていたら、ルアーを使ってバス釣りをする2人組の男がいましてね。しかも、翌週も、その次の週も同じ場所で釣っている。それで“釣れますか?”と尋ねたら“ええ、釣れますよ”と。あまり話しかけられたくなさそうな様子でした。ただ、近くにトヨタの黒いステーションワゴン“アルテッツァ”が停車していて女性がふたり乗っていた。この辺りでは珍しく群馬ナンバーだったので覚えていたんです。実は、うちのお客さんも付近の池で釣りをする同じ家族を見たのですが、その時は魚籠(びく)を持っていたとか。ふつうブラックバスは釣っても食べないんですが……」

「家族」は池のほとりで車上生活を続け、「盗んだ七輪で魚やチャーシューを焼いて口にしていたそうです」(先の記者)。明日をも知れぬ境遇のなか、満開の桜の下でただ釣り糸を垂らす日々。時折、カネを手にすると、ささやかな贅沢か、本庄市のラブホテル「ロコズリゾートハワイ」に向かった。従業員が言う。

「オイル漏れが酷い、群馬ナンバーの黒いトヨタ車はよく来ていましたよ。“20時間=3980円”のサービスタイムに、若い男女と年配の男女に分かれて2部屋を利用するんです。掃除に入ると手つかずのスーパーのお弁当やお茶が3、4人分積まれている。とても2人では食べきれない量だから、従業員の間では“万引きでもしてるんじゃないか”と囁かれていた。そうしたら、案の定でね」

 昨年7月、ホテルに4、5台の覆面パトカーが押し寄せ、20人を超える捜査員が家族の泊まる部屋に突入。4人は暴れることなく、おとなしく連行されたという。

 五輪開催に沸く国際都市「東京」のすぐそばに、行き場を無くした「万引き家族」の風景が確かにあった。

「週刊新潮」2020年1月16日号 掲載

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