日本のメディアのマゾ気質(中川淳一郎)

日本のメディアのマゾ気質(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 つくづく日本のメディアってマゾ気質だと思いますね。逃亡したカルロス・ゴーン氏は「日本の司法制度はおかしい」と世界に向けて主張していますが、確かにおかしいです。だって逃亡できるだけの財力とコネを持った人を保釈しちゃったんですから。

 ただ、もっと変なのは、日本のメディアが「世界のメディアが日本の司法を批判している」という意見をこれでもか!とばかりに報じ続けるところです。自分がおかしいと思うのならば、自分で批判すればいいのに、「外国様」を使って叩く。

 そして、数ある外国様の中でも、自虐的メディアがもっとも好むのがおフランス様ですね。「シェー!」で知られるイヤミ氏がかつて滞在していたという格式高い国でありますが、かの国のメディアは、東洋の島国である日本が彼らをどう報じているか、なんてわざわざ取り上げないでしょう。

 それなのに日本メディアはいちいち気にし過ぎている。ゴーン氏の逮捕直後は仏メディアも日本批判とゴーン氏擁護をしていましたが、その時も日本メディアは「フランスでは……」「世界では……」とやりました。

 でもさすがに今、おフランス様はあまりゴーン氏を擁護していません。何しろ同国では、燃料税の引き上げから庶民が金持ちへの怒りを爆発させ、「黄色いベスト運動」というか「暴動」を起こしているのですから。

 最近では年金改革をめぐり80万人ともされるデモも発生。公共交通機関が軒並み運休し、警官隊との衝突や器物破損行為により、71人が逮捕なんて事態にもなっています。野蛮な国だな。BBCの取材に答えた鉄道の運転士は元々50歳で退職できる契約を結んだと言いますが、その後他の人と同様に52歳6カ月となり、満額もらうためには57歳半まで働くことになると不満をこぼします。

 ケッ、甘っちょろい。こちとら75歳まで満額にならない可能性があるんだぜ!と言いたくなりますが、これがフランスの実態なワケですよ。レディーファーストしかり、電車で席を譲る人々しかり、日本人がしきりと礼賛する外国人というのは、キチンとした教育を受け、高収入で余裕ある人々です。

 海外在住者のツイッターとか見ると、いかに粗雑なヤツが多いかが書かれたりしていますし、世界のバカが投稿する動画なんてロクなもんじゃない。私も散々がさつで小ずるくて暴力的なアメリカ人を中高時代から見てきました。

 それにしても捕鯨やら死刑制度やらへの批判、外国はいちいちうるさいですね。フランスなんてガチョウに無理矢理餌を食わせて脂肪肝にしたフォアグラを「セ・ボーン!」とか言いながら食い、トラック突撃テロやら同時多発テロが発生して多数の死亡者が出たり、刃物男が大暴れしたら射殺する。日本では「さすまた」とか使って「逮捕」→「起訴」→「裁判」→「確定判決」を経て「死刑」になる。こっちの方が人権重視じゃないですか。

 どうせ我々が「射殺は非人道的!」とか言っても、フランスは「我が国のやり方だ」としか言わないんだから、我々も司法制度やら食文化には「我が国のやり方だ」とだけ答えればいいし、マゾメディアは海外の声ばっかり報じないでくれ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年1月23日号 掲載

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