三陸鉄道は3月に全線開通、東日本大震災、台風19号”2度の試練”を乗り越えられるか

 鉄道のダイヤは、主に春と秋に大幅な改正が実施される。今春に実施されるダイヤ改正の目玉は、何と言っても東日本大震災からの復興。福島原発事故で運休を余儀なくされてきた常磐線の全線復旧だ。

 常磐線は東北本線や東北新幹線などの補助的な役割を担うが、東京と東北の主要都市・仙台とを千葉県・茨城県・福島県経由で結ぶ一大幹線でもある。今春の全線復旧によって、品川駅・上野駅−仙台駅とを往復する特急列車の運行が再開する。

 特急列車の運行再開は、沿線市町村の復興に弾みをつけることになるだろう。地域住民の足は鉄道よりも自動車がメインになっているとはいえ、再開を心待ちにしている関係者や住民は少なくない。

 着実に震災地が復興していることは喜ばしい話だろう。被災地復興という福音がもたらされる一方で、再び悲運に見舞われた被災地がある。それが、岩手県久慈市の久慈駅と大船渡市の盛駅を結ぶ三陸鉄道だ。

 三陸鉄道は2013年に放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台になったことでも知られる。震災当時は、久慈駅−宮古駅の北リアス線と釜石駅−盛駅の南リアス線の南北2つの路線に分断されていた。

 南北の線路は、中間にあるJR東日本の山田線によって結ばれていた。震災を機に、この山田線の区間が三陸鉄道へと移管することが検討された。そして、2019年3月に移管。約163キロメートルにもおよぶ長大なローカル線・三陸鉄道が新たに誕生する。

 三陸鉄道の担当者は、こう回顧する。

「東日本大震災は、三陸鉄道の線路や駅舎などに大きな被害をもたらしました。震災後は復旧できる区間から順次運転を再開し、2014年に全線の復旧が完了しています。その間も震災学習列車やこたつ列車などの企画列車を運行し、たくさんの人に三陸鉄道を利用してもらいました」

 三陸鉄道による独自の集客や“あまちゃん”効果もあり、三陸鉄道は人口減少地域を走るローカル鉄道でありながら順調に経営を安定させてきた。また、国内からもさることながら海外のクウェートからも支援を受けている。東日本大震災で三陸鉄道は多くの車両を失ったが、クウェートは3両の新車両を寄贈した。

 震災の傷跡が癒えてきた2019年、JR東日本は山田線の一部区間を三陸鉄道に移管。移管された釜石駅−宮古駅間には、ラグビーワールドカップのスタジアム最寄り駅でもある鵜住居駅があり、三陸鉄道の収益に大きく貢献した。

 2019年10月に開かれた取締役会では、「2019年度は約3000万円の黒字になる」との報告がなされていた。三陸鉄道は、順調に復興を果たしてきた。

 しかし、その直後に台風19号が直撃。台風19号は日本列島に水害を発生させた。各地の鉄道でも甚大な被害を出している。台風19号による被害で、もっとも耳目を集めた鉄道被災は長野新幹線車両センターが水没したことだろう。多くの車両が水に浸かったことで使用不能になり、北陸新幹線は減便。

 北陸新幹線のほかにも、長野県を走る上田電鉄では鉄橋が崩落。神奈川県を走る箱根登山鉄道でも土砂崩れによって線路が流失。両鉄道とも、いまだ被災区間は復旧していない。

 三陸鉄道も線路や駅舎など93カ所が被災。黒字の報告がなされた直後に、経営状態は約1億円の赤字に転じることになった。

「復旧費用の総額は約20億円と見込まれていますが、復旧にかかる費用は政府や自治体などが全額負担してくれます。そのため、復旧にあたって費用面の心配はありません。しかし、運休中の減収分は補填されません。また、運休によって利用者が離れてしまったことを考えると今後の収益に大きな影響が出ることが予想されます」(同)

 三陸鉄道には、ふるさと納税やインターネットを通じた募金も集まるが、数億円とも試算される減収分を補うまでにはいたっていない。

 苦しい経営状態に陥る中、三陸鉄道は台風19号で不通になっていた陸中山田駅−津軽石駅間を1月16日に運転再開。それでも、いまだ4割近くの区間が不通のままになっている。

 三陸鉄道の経営は、決して楽観視できるものではない。それは東日本大震災以前からの話ではあるが、震災後はさらに厳しさを増した。それでも三陸鉄道は不死鳥のごとく蘇った。

 特に、旧山田線の陸中山田駅は震災後の津波とその後の火事で駅前は灰燼に帰した。震災後に駅舎が焼失した陸中山田駅は無残な焼け跡が広がり、瓦礫が生々しく残っていた。

 その駅前ではタクシー数台が、所在なさげに客待ちをしていた。もちろん、駅に列車が到着することはない。タクシーが待っていたのは、客からの迎車依頼の電話だった。迎車を待つ目的だったら駅前で待機しなくていいはずだが、やはり客待ちは駅前という固定観念があったのだろう。

 そんな被災地の光景は過去のものになり、陸中山田駅は2019年に見違えるような駅舎に生まれ変わった。その矢先に台風で運休。

 大震災を乗り越えた三陸鉄道は、台風災禍という新しい試練に直面した。それらを乗り越えて、3月20日に三陸鉄道は全線運転再開を予定している。

小川裕夫/フリーランスライター

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月27日 掲載

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