【新型コロナ】「病院船」配備で高木美保のコメントは不評 実現性を海自OBに聞いた

【新型コロナ】「病院船」配備で高木美保のコメントは不評 実現性を海自OBに聞いた

アメリカ海軍の病院船、マーシー級病院船(Spc. Landon Stephenson/Wikimedia Commons)

■高木に多くの批判的ツイート


 女優・高木美保(57)と病院船――。意外な組み合わせだと思われるだろうか。発端は2月12日に衆議院で開かれた予算委員会になる。

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 自民党で鳥取2区の赤沢亮正・衆院議員(59)が病院船の建造を提案したのだ。読売新聞が13日に掲載した「新型肺炎 『病院船』配備へ前向き 厚労相、衆院予算委で」をご覧いただこう。

《赤沢氏は「最近の自然災害の頻発化や新型コロナウイルスの脅威などに対応する目的で、政府が病院船を建造・保有することを提言したい」と述べ、太平洋側と日本海側に1隻ずつ配備する案を示した。加藤厚労相は病院船の活用について「十分あり得るのではないか。加速的に検討していく必要がある」と応じた》

 この問題を情報番組「モーニングショー」(テレビ朝日系列・平日・8:00)も13日に取り上げた。この日は木曜で、高木は木曜のレギュラーコメンテーターなのだ。

 具体的に、番組の内容を振り返ってみよう。まずMCの羽鳥慎一(48)が、「さらに今後の長期的な対策についても検討ということで、これも齋藤さんお願いします」と、サブMCの斎藤ちはる(22)アナウンサーに声をかけた。

 斎藤アナは上で紹介した読売新聞の記事を読みあげて、番組は病院船の問題に入っていく。その後の進行をご覧いただこう。

羽鳥慎一アナ(以下、羽鳥):これは今の状況に対する対応ではないのかもしれませんけれども、超長期的に見て、やっぱり岡田さんこれ、今までのこの状況を考えると、こういうことも必要なのかなという気はします。

岡田晴恵・白鴎大学特任教授(以下、岡田):あったほうがいいと思うんですけど、現状どう対応するかを先にしないといけない。

羽鳥:なるほどね。もちろん……

玉川徹・レギュラーコメンテーター(テレビ朝日報道局員):同じ意見。

高木美保(以下、高木):本当にそうですよ。

羽鳥:もちろん、これ、そうですよ。「これ今、言ってもしょうがないじゃん」って言う人もいると思いますけど、でも、これは、あの、必要だと思いますよ。

高木:でも、あのね……。


■羽鳥のフォローを無視する高木美保


羽鳥:(高木を遮って)これが今のことの解決にはならないと思いますけど。

高木:そうですね。その理論をね、ちょっと昨日……昨日だったか何か、見たんですよ。「いぶき」だったか……「いずも」だ。あの、「持ってはいけない空母を持っているじゃないか」と指摘されている艦なんですけど、あの中に、その……病院船の機能があるから、多目的として、それを使えるんじゃないかと自民党のサイドからは、政府サイドからそういう風に仰って、あと防衛大臣経験者の方がそう仰るんだけれども、そうすると野党側から言うと、「それは持ってはいけない空母を使うというのは問題だろ」という風に感染とは関係ないところに議論がいってしまっているというのが……

羽鳥:今、何を話すべきかというね。

高木:本当にそこは、そういう話は政治家の感情論だなと非常に思っていて、根本的なところじゃないなって、直していただきたいですね、そこはね。

 これが高木の発言だったわけだが、どう視聴者に受け止められただろうか。実はツイッターでは、かなりの関心を集めたようなのだ。

《高木さんがいずも型の病院船利用に反対する野党をdisっていたが、そもそも自衛艦で感染症に対応できるの?と突っ込んで取材してほしいわモーニングショー》

《高木美保がいずもといぶきの違いを分かっとらんらしい》

《岡田さんも玉川さんも現状(「いずも」空母化)どう?対応するべきかの方が先にしないといけない。という意見に… 感情論でコメントを出したのは。高木美保…であった》(註:引用に際して改行などを省略した)

 ある政治担当記者は「テレビを見ていたのですが、てっきり国会でそういう議論が行われたのかと思いました」と明かす。

「護衛艦の『いずも』が高度な医療設備を有しているのは事実です。更に番組で高木美保さんが『政府サイドからそういう風に仰って』と言っておられたので、てっきり国会中継か何かをチェックしておられたのかと思い込んでしまいました」

 マスコミは「いずも」を「ヘリコプター搭載型護衛艦」と表記しているが、ステルス戦闘機F-35Bを搭載する航空母艦への改修が決まっている。高木が「空母」と表現したことも間違いではない。

「『いずも』の医療能力を考えれば、横浜港に検疫のため停泊している豪華客船『ダイヤモンド・プリンセス』の治療に力を発揮する可能性もあります。そんな建設的な議論が国会で行われているにもかかわらず、『そもそも日本は空母を所有できない』と噛みつく国会議員って誰なんだろうと首を傾げました」(同・記者)

 さっそく論戦の内容をご紹介したいのだが、結論を先に申し上げれば、高木美保が紹介した“病院船を巡る議論”“は国会で行われたものではなかった。


■実は白熱していた議論!?


 議論が行われたのは、衛星放送の報道番組「BSフジLIVE プライムニュース」(平日・20:00)だ。

 番組は2月12日、「元防衛相×日本共産党 自衛隊中東派遣の懸念 新型肺炎に私権制限は」を放送した。これが高木のコメントにおける“出典”になる。

 番組のMCは反町理・フジテレビ報道局解説委員長(55)と、同局の竹内友佳アナ(31)。この日のゲストは、以下の3人だった。

【1】元防衛相の森本敏・拓殖大学総長(78)
【2】元防衛相の中谷元・衆議院議員[自民党・高知1区](62)
【3】日本共産党書記局長の小池晃・参議院議員[共産党・比例区](59)

 森本、中谷両氏が防衛大臣の経験を持ち、小池氏は東北大学の医学部を卒業し、山梨県や東京都の病院に勤務した過去を持っている。3人の経歴を考慮して、番組としては専門的な議論を期待したようなのだ。

 果たして本当に、高木が呆れ返るほど低レベルな議論だったのだろうか。この番組はオンエアが終わってから、ダイジェスト版をネット上に無料で公開している。動画を元に、病院船に関する部分だけをご紹介しよう。

竹内友佳アナウンサー(以下、竹内):さて、新型コロナウイルスによる肺炎などの感染症や災害などへの対応に関して、加藤厚労大臣は今日の衆議院予算委員会で、「課題を関係省庁とも探りながら、病院船の配備のあり方を加速的に検討していく必要がある」と述べました。小池さん、この病院船の配備の必要性については、どうお考えでしょうか?

小池晃議員(以下、小池):病院船そのものについては、それは必要性も僕は否定しないんですけれど、今回の事態とはあんまり関係ないんじゃないかというかね、要は今回は病院船ではなくて病院ですよ。だってすでにもう、神奈川県では感染症の受け入れ用のベッドがちょっと飽和状態になっているとかって言うじゃないですか。やっぱりその、こういう事態が起こった時に、病院というのが今、もうベッドギリギリで、ほぼ100パーセント満床みたいな状況で動かしている。余裕がない。こういう、やっぱり事態に対応できない。特に感染症のために。例えば今回、新型コロナの患者が出てきた、今度、民間病院、一般病院でも受け入れるように、なんて言っているけれども、そうすると一定のフロアを全部開放するということをしなきゃいけない。そういうことができる病院って、はっきり言ってないですよ、民間病院に。そういう意味で言うと、今回の事態からすぐに病院船というより、まずは医療機関の体制じゃないですか。

小池:病院船については自民党、公明党の中で色んな検討がされてきたという風に聞いているので、その中に、詳細には承知してないんで、ま、私は何でもかんでも自衛隊の船に結びつけるようなことはね、ではないと思いますので、ドクターヘリの船版みたいなもので考えておられるという風に、ちらっと自民党の方からお聞きしていますけども、そういうようなものを作っていくこと自体は、それはあり得ることなんじゃないかなと。

中谷元議員(以下、中谷):今回はね、邦人の輸送も含めて、防衛省は事態に対応できるように準備はしてます。病院船も今、「とわだ」とか「おおすみ」とか、大型の輸送艦があります。それから話題になった「いずも」ですね、あれも多用途護衛艦なんで、病院の機能も果たせるんですね。今度、改装しますんで……

小池:「いずも」は空母じゃないですか。


■森本氏は費用に懸念


中谷:いや、多用途護衛艦ですから、病院船の機能も果たせるんですよ。ですからそういう点で対応は可能になっていますが、問題はお医者さんが足りない、医師が……、ということで、そういう点においてもやはり、医療の体制も整備していく必要があろうかと思います。

竹内:病院船の現状は、こちらです(註:画面を示す)。まずアメリカ海軍は2隻保有していまして、ベッド数は1000床。12の手術室があり、世界最大です。また中国海軍も大型病院船1隻と小型病院船2隻を保有しています。さらにロシア海軍も3隻の病院船を保有しています。ところが一方、日本は医療機能を専門とする病院船は保有していません。ただ、海上自衛隊の輸送艦や補給艦、護衛艦などは医療機能を備えています。森本さんは……

森本敏氏(以下、森本):これは、あの、まず、海軍がこういう船を持っている理由というのは2つあって、1つはこの3つの国って陸地が広いですから、なかなか陸路で患者を多数運ぶということが難しく、かつ、感染性の方を陸路で動かすというのは無理な場合には船で、港でピックアップして、海に出て、感染を防ぎながら……

MC反町理氏(以下、反町):あ、そういうことだったんですか。

森本:医療活動ができるという意味があるので、それぞれの国の海軍が持っている。もう1つは、他国に対する医療災害派遣ですね。特に途上国に行って、例えば途上国の港の沖合で止めて、そしてハッチと言いますか、ボートで運んできて手術をしてまた戻してやるということができるわけですよね。例えば大洪水なんかが起きた時には、アメリカ海軍はよく、そこの沖合に行って、治して、こう戻してやるということができるわけですね。そういう選択ができるので、船に医療の装置を持っているということは非常に便利なんですね。ただ、お医者さんがきちっと揃っていて、経費も相当かかるので、費用対効果というのはかなり無視してやらざるを得ないという問題があって、もっぱらこれらの国は自国というよりか、むしろ途上国の支援のために持って……。

反町:防衛予算枠なんですか、じゃあ? もしかするとODA枠みたいな……やっぱり防衛予算なんですか?

森本:自衛艦として持ったら、これは自衛隊の装備ですから、ODAの条項には入らないので、だから例えば、よく東南アジアなんかで洪水が起きた時には、アメリカは医療船(註:ママ)を送ってきます。日本は間接的に協力したりするんですけど、日本も実はですね、これを持つべきだという議論をしながら、ずいぶんと色んな試算もしたんです。

小池:今回の事態を受けて病院船というのであれば、私は自衛隊の船を作るんじゃなくて、やっぱりその民間のね、病院船を作る、ということであれば理解できますけれども。

中谷:熊本地震の時も、実は民間のフェリー「はくおう」というのをチャーターしまして、待機場所に使ったりしましたけど、自衛隊のOBが運行しているんですね。船員組合との関係でございまして、そういう船が2隻あります。

小池:でも中谷さん、そういうことは今、この議論が始まっている病院船は、自衛隊の船ということを想定しているんですか?

中谷:自衛隊は……

小池:そういう話は聞いてませんけど。


■「自衛隊の軍備増強」を懸念する小池議員


中谷:そういうニーズがあれば対応できるということですよ。

小池:いやいやいや、中谷さんの話を聞くと、自衛隊の船として病院船を作ろうという議論?

中谷:そのほうが無駄がないじゃないですか。

小池:そうなってくると、こうね……

反町:運用上の無理がないという意味で仰っている?

中谷:そういう時に自衛隊を活用すればいいじゃないですか。

小池:それは、あの、自衛隊の、この、災害とか感染症を口実にして、自衛隊の軍備を強めることに……。

中谷:誰もそんなこと思っている人いませんよ。

小池:だってそうじゃないですか。

反町:予算の枠内で……。例えば今、年間5兆の防衛予算を、病院船代で新たに追加するんですけど、予算の枠内でやる限り意味においてはOKという意味ですか、それは?

小池:病院船にお金をそういった形で使うのであれば、まずもっとやることがあるでしょう、と。国際的な感染症対策の国立感染症研究所の予算をね、3分の1も削ると、保健所をどんどん減らすと、病院だってこうね、ぎりぎりで、ベッドが空いていないような状況になっていると、医者そのものも足りないと。だったらそういったところにお金を使うのが、まず最優先なんでなんじゃないですかと。それでなんか、病院船で、しかも自衛隊だって言われるとね、ちょっと話が違いますね。

中谷:いや、いつも自衛隊……。病院船の話、出るんですけど、じゃあ、何もない時どうするか、遊んでいるのかということで、やはり自衛隊の船が、そういうのに対応できるように、【編集部註:聞き取れず】ということできてますので、日頃からそういう訓練もしているし、やっぱり保有していないといざという時、使えませんからね、あの、そういった意味ではしっかりと対応をしつつ、病院船の機能も果たしているということですよね。

 番組の引用は、以上だ。3人の議論を「高木さんが指摘するように意味がない」と同意する方も、「想像していたより充実している」と否定する方も、それぞれいらっしゃるだろう。

 だが、高木の要約が乱暴で、ミスリードを招く可能性が決して低くないという事実は、やはり否定できないのではないだろうか。


■本物の専門家に取材を依頼


 それでは、高木のような“芸能人の素人コメンテーター”ではなく本物の専門家は、病院船の議論をどのように受け止めているのだろうか、金沢工業大学虎ノ門大学院教授で元海将の伊藤俊幸氏に取材を依頼した。

「病院船が必要だという提言は、多くの日本人が理解できるものでしょう。しかしながら実現となると、決してハードルは低くありません。2013年に内閣府が試算を発表しましたが、10の手術台を備え、500人の患者を収容する『総合型病院船』を建造するとなると1隻300億円。2隻だと600億から700億円が必要という試算結果になりました。さらに毎年維持費が2隻で50億と試算されています。災害が起きず稼働しない状態もあるわけですから、広範な有権者の理解を得られるか、なかなか難しいものがあると思います」

 ちなみに、最もコストが安いとされた、手術台がゼロ、患者収容数が300人という「慢性期病院船」でも1隻160億円が必要だという。病院船とは相当に高額なのだ。

 そのため、共産党の小池議員が番組で主張した「民間が建造して運営も行う病院船」はコストの調達を考えると、かなり困難な事業であることが分かる。現実的に任せられる組織となると、海上自衛隊以外には存在しないというのが正直なところだろう。

「現在、最も実戦経験が豊富なのは米軍で、米海軍は2隻の病院船を稼働させています。ところが負傷兵の輸送手段が豊富になったことなどから、意外に実戦に参加することは少ないのです。現在、米軍の病院船は途上国を中心に寄港し、医療サービスを無償で提供しています。つまりアメリカの外交政策を担っているのです。こういった活動の一つにパシフィックパートナーシップという国際協力プログラムがあり、自衛隊も輸送艦や医官などを毎年2カ月間くらい派遣しています」(同・伊藤教授)

 医療施設の充実した護衛官「いずも」をダイヤモンド・プリンセス号の救援にあたるというミッションも、一筋縄ではいかないようだ。

「政府や海自が想定している災害派遣時の医療支援は、外科的なものです。『いずも』には手術室が1室しかありませんから、陸上自衛隊の野外手術システム(車両)を搭載して、地震や津波といった天災などで負傷された国民の治療を行うのです。今回のような感染症への対応は想定しませんでしたし、率直に言って、そもそも海上自衛隊の艦艇が対応する必要があるのかという問題もあります」(同・伊藤教授)

 自衛隊なのだから、生物化学兵器への対応は想定している。だが、この場合、「船の中を感染させない」ことが最重要事項となる。

「核兵器も含めたNBC兵器防護の基本は、艦外での除染です。他者に罹患する恐れがある生物兵器で負傷した隊員がいた場合は、一刻も早く陸上自衛隊の特殊武器防護隊に送り届けることが最優先になります。艦内に入れて治療することは想定外です。能力から言えば、護衛艦『いずも』にダイヤモンド・プリンセス号の患者を受け入れ、治療を行うことは可能でしょう。防衛大臣が命ずれば、自衛隊は任務を完遂します。現場が動揺する可能性はありますが、隊員が罹患するリスクと、自衛隊の本来任務への影響との兼ね合いの中、防衛大臣が決断されるべき事案ということなのです。」(同・伊藤教授)


■強まる高木美保への批判?


 ちなみに、モーニングショーの中で、高木は「日本政府はダイヤモンド・プリンセス号の船長に対し、『健康管理、安全管理をちゃんとしなさい、ってことを誰か言えないものか』と疑問を呈し、これもSNS上で不興を買ってしまった。批判的なツイートの中から、1例を紹介させていただこう。

《船長だってなんとかしたいに決まってんじゃん 高木美保ってホントアホすぎて呆れるわ》(註:引用に際して改行を省略した)

 芸能担当記者が言う。

「高木さんの場合、視聴者は彼女の発言内容そのものを問題視しているわけではなさそうです。“視聴者代表”の顔をして素朴なコメントを口にするという“スタイル”が、一部のネット民に不評のようですね」

週刊新潮WEB取材班

2020年2月17日 掲載

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