【新型コロナ】海外メディアは東京五輪中止を想定 組織委事務局長を「子供じみている」と批判

【新型コロナウイルス感染拡大】欧米メディアでは「東京五輪は中止か」との報道が急増

記事まとめ

  • 欧米のメディアで「東京五輪は中止か?」という報道が急増しているという
  • デイリー・テレグラフ紙は「五輪中止を想定しない組織委は『子供じみている』」と報道
  • 英の公衆衛生の専門家は「東京五輪は無観客試合としなければならないのかも」と語った

【新型コロナ】海外メディアは東京五輪中止を想定 組織委事務局長を「子供じみている」と批判

【新型コロナ】海外メディアは東京五輪中止を想定 組織委事務局長を「子供じみている」と批判

ダイヤモンド・プリンセス号

■日本の「絶対開催」主張に批判?


 海外メディアの報道に詳しいジャーナリストが、こう警鐘を鳴らす。「最近、特に欧米のメディアで『東京五輪は中止か?』という報道が急増しています。政府は予定通りの実施を望むなら、早急な情報発信が必要でしょう」

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 欧米メディアが「東京五輪は中止すべきか?」と懸念するに至った経緯を、日本メディアの報道も紹介しながら振り返ってみよう。

 日本側は当然ながら「延期も中止もしない」と世界に言い続けている。2月7日、AFP通信は「東京五輪は『予定通り開催』、コロナウイルスの懸念も組織委が見解」と報じた。日本語電子版から引用させていただく。

《東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)は6日、感染が拡大している新型コロナウイルスがパニックを引き起こすといううわさを振り払い、大会は「予定通り開催される」と明かした》

《組織委の武藤敏郎(Toshiro Muto)事務総長は、全世界で少なくとも2万8000人が感染し560人以上の死者を出すなど、感染が急速に拡大しているコロナウイルスに対応するための対策本部を設置したと発表。その一方で、大会の開幕が7月24日から動くことはないと述べた》

 記事に登場する武藤敏郎事務総長(76)だが、日本では“スーパーエリート”として知る人ぞ知る存在だ。

 開成高校から東大法学部に進み、旧大蔵省に入省。2000年に大蔵省事務次官となり、省庁再編の結果、翌01年に初代の財務事務次官を務めた。

 その後も日銀副総裁、三井物産取締役などを歴任。ちなみに、ニューズウィーク日本版の2月25日号によると、「上級国民」の流行語が誕生したのは、武藤事務総長の「一般国民」という発言がきっかけだったという。

 武藤事務総長の「大会の開幕が7月24日から動くことはない」という発言に、欧米メディアは強い反応を示した。

 イギリス高級紙で最大の発行部数を誇るデイリー・テレグラフ紙は電子版で2月14日、以下のような見出しで疑問を投げかけた。

「【独自】コロナウイルスの感染爆発で東京五輪の中止を想定しない組織委は『子供じみている』」(Exclusive: Tokyo 2020 organisers 'childlike' to not plan for Games being cancelled over coronavirus outbreak)


■批判された武藤事務総長の発言


 デイリー・テレグラフが報じた記事の一部を翻訳してご紹介しよう。

《イギリスを代表する公衆衛生の専門家の1人は東京五輪の組織委を批判した。コロナウイルスの懸念にもかかわらず、オリンピック中止の可能性を除外しているからだ。

 イングランド北西部で公衆衛生の責任者を務めたジョン・アシュトン博士は、東京五輪組織委の最高責任者が「五輪延期について考慮さえしていない」と発言したのは賢明な判断ではなかった、と指摘した。

 武藤敏郎は――日本におけるスポーツ関係の責任者も全く同じだが――コロナウイルスの感染率が上昇傾向にある間は「想定外のことも想定すべき」である、とアシュトン博士は付け加えた》

 そしてアシュトン博士は東京五輪の組織委に“警告”を行う。

《「現時点で、感染拡大を止める方法はありません。今後5か月で感染の勢いが増した場合、彼らは何をすべきか計画を立てる必要があります。ひょっとしたら、東京五輪は無観客試合としなければならないのかもしれません。誰も予知などできませんが、計画は立てておく必要があるのです」

 伝染病は1年間か、あるいはそれ以上の期間、猛威を振るうかもしれない。にもかかわらず、大会中止の計画を策定できなかったとしたら、それは「子供じみています」と彼(註:アシュトン博士)は言い添えた。

「スポーツの実行委員会なら、想定外のことを想定し続ける必要があります。これが私のアドバイスです」》

 東日本大震災を経験した日本人にとって、「想定外の事態を想定できるよう、考え続けることが重要」という指摘は、一聴の価値はあるかもしれない。

 博士は組織委を「子供じみた」と評したが、ちなみに原文は「チャイルドライク(childlike)」の単語を使っている。

 英和辞典『プログレッシブ英和中辞典〔第2版〕』(小学館)は、childlikeの意味として《子供のような[らしい]:子供向きの[にふさわしい]》と定義している。

 東京五輪の開催者が面子にこだわり、開催以外の選択肢を考えもしない現状への皮肉なのは明らかだろう。

 デイリー・テレグラフの報道に、次はニューズウィークが続く。アメリカの公式サイトでは2月19日、以下のようなタイトルの記事が掲載された。

「2020年のオリンピックは中止か? 『ウイルスの恐怖で、今ならオリンピックの開催は不可能』と科学者は指摘」
(WILL THE 2020 OLYMPICS BE CANCELLED? CORONAVIRUS FEARS MEAN TOKYO GAMES COULDN'T BE HELD NOW, SAYS SCIENTIST)


■東京都はタイム誌に“回答拒否”


 この記事は日本版サイトでも、翌20日に「【新型肺炎】東京五輪開催、間に合うか? ロンドンが代替開催に名乗り」とのタイトルで配信された。記事の一部を引用させていただく。

《新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。もしも東京五輪がこの春行われる予定だったら、中止に追い込まれていただろう。

 日本の著名なウイルス学者である東北大学の押谷仁教授はそんな厳しい見方をしている》

《国際オリンピック委員会(IOC)は、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)は予定どおり開催できると楽観的な見通しを述べている。

「2020東京オリンピック競技大会に向けた準備は計画どおりに進む」と、IOCは本誌に書面で回答した》

《WHO西太平洋地域事務局長を務めた感染症の専門家・尾身茂は2月13日、夏までに感染拡大が収まっているかどうか現時点で予測することはほぼ不可能だと述べた。

「率直に言って、今は新型肺炎が五輪開始前に終息すると判断するに足る十分な科学的根拠はない」

 尾身は「いつ終息するかを論じることには意味がない」として、ウイルスが既に日本に広がっているという前提で対策を立てねばならない、と警告した》

 3つ目にご紹介するのは、ニューズウィークのライバルとも言えるタイムだ。同誌の電子版は20日、「東京五輪はコロナウイルスの犠牲者になるのか?」(Could the 2020 Tokyo Olympics Be a Victim of COVID-19?)との記事を掲載した。

 ここでは記事の末尾をご紹介しよう。

《東京都に五輪開催地の移動、開催の延期について、どのような緊急時対応計画が策定されているのかを訊ねた。都はタイムに対し、「仮定の状況に対する質問には答えられません」と回答した。しかしウイルスはアジア全域に拡散しつつあり、そのリスクは現実的なものになりつつある》

 メディア側の懸念に呼応したのか、2012年のオリンピックで開催都市を務めたロンドンから、予想外の“異議”が唱えられた。

 2月20日、時事通信は「今夏の五輪『ロンドン開催を』 新型肺炎で市長選候補名乗り」と報じ、記事はYAHOO!ニュースのトピックスに掲載された。

《国政与党・保守党公認候補として出馬するショーン・ベイリー氏はツイッターで「2020年、ロンドンは再び五輪を開催できる」と宣言。「われわれにはインフラと経験がある。そして(新型)コロナウイルスの発生により、世界はわれわれの介入を必要とするかもしれない」と東京五輪中止の可能性に言及》


■欧米の“信任”を失いつつある安倍首相


 欧米のメディアも、同じ内容の記事を報じた。20日にロイター通信は電子版で次のように伝えた。

「コロナウイルスの影響で2020年五輪の開催地を変更する必要があれば、ロンドンは対応が可能:ロンドン市長選の候補者が言及」(London can host 2020 Games if moved over coronavirus: mayor candidate)

 英語版のウィキペディアには、この記事に登場するロンドン市長選候補者のショーン・ベイリー氏(Shaun Bailey)の項目がある。

「ロンドンの政治家」と表記され、1971年生まれと書かれている。つまり年齢は48歳か49歳。ロンドン生まれで、最終学歴はロンドン・サウス・バンク大学という。

 当然、日本側は反論を行う。翌21日、日刊スポーツは「小池知事、東京五輪のロンドン代替案報道に不快感」との記事を配信。こちらもYAHOO!ニュースのトピックスに掲載された。

 不快感の理由について、記事を引用するまでもないだろう。むしろ、日刊スポーツの記事で重要と考えられるのは、海外メディアは「東京五輪の中止」について質問を集中させたという記述だ。

《外国の通信社からは、今後、感染拡大が収束しなかった場合、どのタイミングで東京2020大会の中止や延期を判断するのかという質問も出たが、小池氏は「大会を安全に開催するため、さまざまなリスクを考えながら、大会組織委員会やIOCと準備を重ねてきた。まずは、感染防止に徹底して取り組む。今お答えをする立場にはない」と、述べた》

 イギリスの高級紙で最多部数を誇るデイリー・テレグラフ紙の電子版は22日、次のような記事を配信した。

「ロンドンが五輪問題に介入し、開催地の変更もあり得るとの市長選候補者の発言に都知事は『不適切』」
(Tokyo governor: 'Inappropriate' for London mayoral candidate to say city could step in and host Olympic Games)

 前出のジャーナリストが解説する。

「他にはアメリカのFOXニュースも、ロンドンに変更する可能性と日本政府が貴重な時間をどんどん失っていると指摘する記事を報じていました。欧米メディアの記事を読みますと、文章のトーンが『東京五輪は中止』と想定したかのような書きっぷりになっているものは少なくありません。安倍総理は福島原発を『アンダーコントロール』であると断言して五輪開催を勝ち取りました。しかし世界は今、コロナウイルスを日本がコントロールできているとは思っていないようです」

週刊新潮WEB取材班

2020年2月25日 掲載

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