“コロナばらまくぞ男”のせいで蒲郡市民は騒然! 市役所は店名非公表で抗議電話殺到

“コロナばらまく”騒動で蒲郡市の市役所に抗議殺到 店名問い合わせの電話も

記事まとめ

  • 愛知県蒲郡市の50代男性は、新型感染も自宅待機要請を無視して飲食店へ出かけた
  • 蒲郡市は大騒動となり、男は家族らに「コロナウイルスをばらまく」と吹聴していたそう
  • 市役所には「なぜ男が酒を飲みに行くのを許したんだ」といった電話が多く来たという

“コロナばらまくぞ男”のせいで蒲郡市民は騒然! 市役所は店名非公表で抗議電話殺到

“コロナばらまくぞ男”のせいで蒲郡市民は騒然! 市役所は店名非公表で抗議電話殺到

蒲郡市役所(Roman SUZUKI/Wikimedia Commons)

■陽性で外出の異常


 あなたが新型コロナウイルスに感染し、保健所に「入院先が決まるまで、自宅で待機してください」と指示されたら、どうするだろうか。その通りにするだろうか……。

 ***

 愛知県の蒲郡市に住む50代の男性は――常人には全く理解しがたいことだが――酒を飲みに出かけた。

 メディアが一斉に報じると、もちろんネット上は大荒れとなった。民放キー局も強い調子で非難した。

「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系列・平日・13:50)では、コメンテーターの木村太郎(82)から「逮捕」という単語が飛びだした。

 デイリースポーツ(電子版)は3月6日、「安藤優子と木村太郎氏 怒りのあまり会話ガタガタに…愛知の『ウイルスばらまく』外出に」から引用させていただく。

《木村氏の発言も激しく、包丁を持って外出したようなものだと断じ、「韓国だったら間違いなく逮捕されてますよ。今、日本はコロナウイルスに対する緊張感があまりにも薄すぎる」と止まらなかった》

 一体、何があったのか、YAHOO!ニュースで検索を行うと、最も早い報道として表示されるのは、3月5日の午後4時53分だ。名古屋市に本社を置く東海テレビが以下の記事を配信している。

「陽性と判明後『自宅待機要請を無視』…新型コロナ50代男性感染者が“飲食店利用” 受入先決定までの間に」

 東海テレビはフジテレビ系列のため、同社のニュースサイト「FNN PRIME」も、すぐさま速報で報じた。

「【速報】愛知で“陽性”男性が飲食店に 医療機関の「自宅待機」を無視」

 2つの記事は、蒲郡市の会見を受けて作成された。「【速報】」の文字に、高いニュース価値が浮かび上がる。事実、これから大手メディアは次々に記事を配信していく。

 まずは東海テレビの報道から、要点をご紹介しよう。

▼蒲郡市は3月5日、市内に住む50代の男が陽性と判明、自宅待機を要請したにもかかわらず、飲食店を訪れたと会見で明らかにした。

▼医療機関が男に対し、3月4日の午後6時ごろ、陽性の結果を伝えた。

▼受け入れ先の医療機関が見つかるまで、自宅待機を要請。だが、男は4日の夜、1人で市内の飲食店を訪れた。

▼男が訪れた店内にいた濃厚接触者は健康観察の対象とし、自宅待機を求めた。

▼市は「自宅待機の状態が守られず、市民に感染の危険があったということは大変遺憾」と抗議の意を示したが、店名は広報しなかった。

 原点は愛知県の発表だった。県は3月4日、「三河地方の50代男性と30代男性」が新型コロナウイルスに感染したと発表した。その後に何が起きたのか、蒲郡市役所に訊いた。

「西三河と東三河を足すと、市だけでも14市あります。『三河地方』という県の発表に対し、SNSなどで『どこに住んでいる人だ?』などと情報を求める書き込みが増加したことは把握していました。更に、蒲郡駅前で、防護服を着て作業にあたっている人がいるという目撃情報が伝播していることも分かっていました」


■「コロナウイルスをばらまく」と宣言


 50代の男が街に繰り出したため、蒲郡市では大騒動になっていたのだ。しかも男は「コロナウイルスをばらまく」と吹聴していたのだ。

 中日新聞(電子版)は3月6日、「愛知・蒲郡市の感染男性『駅前でコロナウイルスばらまく』 飲食店に行く前」と報じた。

《五十代の男性が、検査で陽性と分かった直後、家族らに「今から駅前でコロナウイルスをばらまく」と話していたことが、関係者への取材で分かった》

 男は家族だけではなく、訪れた店でも同じ内容の発言をしていたようだ。TBS系列のCBCテレビ(電子版)は3月6日、「『コロナ菌をお前らにうつしてやる』感染者が飲食店へ 愛知・蒲郡市」の記事を配信した。

 記事は《愛知県蒲郡市では、感染者の驚きの行動が明らかになりました》と記述し、以下のような証言を伝えた。

《「(店のオーナーから聞いた話で)客が『コロナ菌をお前らにうつしてやる』って言っていた。お店の代表者がオーナーに相談して、ちょっと危ないから警察に来てもらった」(感染した男性が訪れた飲食店オーナーの知人)》

 さらに記事は「関係者」の証言として、《男性は店内で、「自分は陽性だ」と話した上で、周囲に、「うつしてやる」という趣旨の発言》とある。また男が訪れた飲食店を「2店舗」だとした。

 実はツイッターなどでは、「男は酔っ払い蒲郡駅前で『コロナウイルスばら撒くぞ』などと大騒ぎしていた」という情報も拡散している。

 ネット上の情報は捏造も多い。このツイートも信憑性を疑うべきだろう。しかし、中日新聞とCBCの報道を踏まえると、「本当のことだったのではないだろうか」と思ってしまうというものだ。

 蒲郡市の担当者が言及した「防護服に関するツイート」だが、今でも強烈な写真が拡散を続けている。ネットの状況を取材した記者が言う。

「写真は『愛知県警察』と書かれた防護服に身を包んだ2人が、飲食店の前で作業しているところを映したものです。最初に写真をアップしたと思われるツイートでは、テレビ朝日とフジテレビの報道局が取材申請を申し込んだ書き込みも閲覧できます」

 3月4日から「感染者の居住地はどこなのか情報がほしい」という要望と、「蒲郡駅でコロナ感染を疑わせる動きがある」という情報がSNS上で拡散を続けていった。

 これを把握していた蒲郡市役所は翌5日、対策会議を開催した。そして会見を開き、マスコミに向けて独自に情報を発信することを決めたという。

「会見の実施を決断したのは、市民や県民の皆さまに安心してほしいというメッセージを伝えるためでした。男性は5日、ちょうど会見を開いていた頃、医療機関に入院しました。飲食店の消毒も済み、店内での濃厚接触者は全員を把握し、自宅待機をお願いしました。店名を公表して情報を募るような段階は過ぎており、コロナ対策をしっかり行ったことを知ってほしかったのです」(市役所)


■市民からの抗議が市役所に殺到


 ところが、やはりと言うべきか、マスコミは店名にこだわった。会見では店名の開示を求める記者と、店名を公表しない理由を説明する市の間で、かなりのやり取りが展開されたという。

 ネット担当の記者が「その一方で、ネット上では店名が拡散していきました」と振り返る。

「実はツイッターなどで広まった防護服の写真ですが、拡大すると、店の入口に“ピンパブ”という文字が書かれているのと、店名の一部と思われるアルファベットが読めるのです。誰かが調べたのか、ネット上では2軒のうち1軒が“フィリピンパブ”だとされ、具体的な店名も指摘されていました。更に、もう1軒の飲食店も名前が出回ってしまいました」

 マスコミ側は、蒲郡市側の要望を受け入れ、店名を伏せて報道を行った。すると今度は市民から抗議の電話が殺到したという。

「店名を公表すべきというご意見やご要望、『市が持っている情報は全て開示すべきだ』というお叱りの声を、お電話でたくさんいただきました。中には、ご自身が4日の晩に訪れた飲食店の名前を挙げられて、『私の行った店に男はいたのですか?』とお問い合わせをされる方もいらっしゃいました。しかしながら、たとえ広報を担当する部署であっても、職員は店名を知らないとは申し上げておきます」(市役所)

 店名の非公表に対する異議だけでなく、「なぜ男が酒を飲みに行くのを許したんだ」と叱りつける電話も多かったという。

「どうして男性を縛っておかなかったのか、とか、せめて監視の人間を1人、男性の自宅に置いておくべきだったとか、様々なご意見をいただいております。ただ、この件に関しましては、たとえ私ども職員が『男性に不審な点がある』などと察知したとしても、縛るとか監視下に置くとか、そういうことは現実的には難しいということはご理解いただきたいと考えております」(市役所)

 蒲郡市役所は、市民から「店名を開示してほしい」と多数の要望が寄せられたことについては、今も悩みが深いようだ。「今後、店名の発表を検討しますか?」と質問すると、以下のような答えが返ってきた。

「たくさんのご要望やご指摘をいただいているのは事実です。皆さまのお声に対応すべきか、必要に応じて対応策を検討するかもしれません」(市役所)

 当然ながら、問題があるのは男の行動であって、蒲郡市役所ではない。市民も分かっているのだろう。だが、それでも市役所に抗議の電話をかけてしまうのかもしれない。

 一方、ツイッターでは「被害受けた店舗はしっかり損害賠償請求して欲しい」や「迷惑防止条例違反、威力業務妨害、さらに飲食店の客に感染者が出たら傷害罪を適用するべき」などの書き込みが目立っている。

週刊新潮WEB取材班

2020年3月8日 掲載

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