【新型コロナ】インド人観光客が2000人キャンセル 京都のインド料理屋がオープン間近で窮地

 インド入国管理局は3月3日、新型コロナ拡大の影響で、日本人に発給したビザを無効にすると発表した。事実上、日本人の入国を禁止した形だ。当然、日本へ観光に来るインド人も皆無である。そんな中、悲鳴をあげている日本在住のインド人がいる。デベサール・リプ・ダマン氏(52)。「マヌさん」の愛称で呼ばれている彼は今月、京都でインド人団体客用のインド料理店をオープンする予定だった。ところが新型コロナの影響で、予約客が全てキャンセル。オープンの目途も全く立たなくなったという。

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 マヌさんは大阪で2カ所、北インド料理店を経営している。7年前に淀屋橋で『CHACHU』をオープン、4年前に谷町四丁目で『マドュマハル』をオープンした。ランチ時は、ボリュームのあるタンドリーチキンのセットやチーズがたっぷり入った焼きカレーが若いOLやサラリーマンに人気だという。

「この3月、京都駅から徒歩10分のところに100席の規模のインド料理店『kyoto DANAPANI 縁』をオープンする予定でした。しかし新型コロナの影響で3月から5月までの団体予約2000人が全てキャンセルになりました。これでは店をオープンすることもできません」

 と話すのは、マヌさんである。

「この店はゼロから内装工事をしましたから、借金も数千万円あります。家賃もあるし、従業員に給与も払わなくてはならない。新型コロナが早く終息してくれないと、もうお手上げですね。夜も眠れない日が続いて、体調を崩しそうです」

 マヌさんが、インド人の団体観光客を入れるようになってから、かれこれ3年になる。ちなみに、日本に観光に来るインド人の数は、2018年が15万4029人、19年が17万5900人と年々増えているという。

「ボクは大学時代、インドで旅行のガイドをしていました。3年前、大阪の心斎橋でガイド時代に知り合ったインド人の知人と偶然再会。彼は東京でインド人向けの旅行会社を経営していて、団体客を連れて大阪を観光しているところでした。私が『インド料理店をやっている』と言うと、彼がお店に来ることになって……」

 知人は、マヌさんの店の料理を気に入ったという。

「彼が『この味だったら、いける』と言ってくれて、以後、インドの観光客を彼が斡旋してくれることになりました。まったくの“縁”で団体客を扱うことになりましたから、店の名前もDANAPANIに。インドでは“縁がある”という意味です」

 大阪の店では沢山の団体客は入らないので、京都で新たに店を構えたというわけである。新型コロナ災禍のおかげで、大阪の2つの店も、客足が半減したという。

■日本は第二の故郷


 そもそも、マヌさんが日本に来たのは30年前,1990年である。

「僕が8歳の時、初めて見た外国人が日本の女性でした。僕の従兄の奥さんで、すごく美しい人でした。それで日本に憧れを持ったのです。こんなきれいな女性がいる日本に行きたいと思いました」

 来日後、マヌさんはまず大阪でヨガ教室を開いた。7年前にヨガ教室を辞め、インド料理店を始めたという。日本人女性と結婚し、1男をもうけている。

「日本はとても居心地が良いですし、僕にとって第二の故郷みたいなものです。昨年5月に帰化の申請をしました。妻と一緒に、帰化のための面接を3回受けました。現在は審査待ちです」

 マヌさんによると、インド人観光客は、京都などの寺を好んで訪れるという。

「インド人観光客は、だいたい東京に来て、新幹線で京都や大阪へ向います。京都では、稲荷大社に人気がありますね、千本鳥居の山吹色は、インドの寺でもよく使われています。神秘的な雰囲気です。元々、日本の七福神はヒンドゥー教から来ています。弁財天は、ヒンドゥー教のサラスヴァティーという知恵の女神です。般若心経が寺で聞こえてきたりすると、インド人はすごく驚きますよ。言葉はわからなくても、唱え方や意味は同じ。仏教はインドで起こっていますから、ここまで渡ってきたのかとみな感心し、日本に親しみを持つのです」

 インド人は、日本食はあまり食べないという。

「インド人はベジタリアンが多いので、和食に魚やチキンなどのエキスが入っていないか気にします。お好み焼きを日本のピザだよと言って食べさせたこともありますが、年配のインド人は敬遠しますね。インドからの旅行者は年配の方が多いので、和食は難しい。インドでは濃い味が好まれますから、和食の薄味が苦手な人も少なくありません。また、インドでは基本的に冷たい料理を食べる習慣がありませんから、寿司も駄目ですね。だからこそ、私は団体客のためのインド料理屋をオープンしようと思ったのです」

 まもなく、桜の季節となるが、

「インド人は花見が好きです。日本で桜をみたいと思っている人は多いです。京都の桜は美しいので、本来、これからの時期は絶好の稼ぎ時になるはずでした」

週刊新潮WEB取材班

2020年3月12日 掲載

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