新型コロナとの正しい付き合い方 根拠なきイベント自粛は意味なし、周知徹底し開催を

新型コロナとの正しい付き合い方 根拠なきイベント自粛は意味なし、周知徹底し開催を

大相撲も無観客

■新型コロナとの正しい付き合い方――矢野邦夫・浜松医療センター副院長(2/2)


 新型コロナウイルスを特別なものだと思いすぎないことです――感染症に詳しい浜松医療センターの矢野邦夫副院長が、この病との正しい付き合い方を説く。曰く、「1、2年後には風邪のウイルスに近いものに分類されるのでは」。自粛が続くイベントも、守るべきを周知徹底して開催すれば良し、というのだ。

 ***

 現状では、新型コロナウイルスについての講習会まで取りやめています。しかし、ウイルスと戦うための啓発につながるイベントまでをやめるなど、実におかしな話。症状がある人は来てはいけない、ということを周知徹底したうえで、開催すべきだと思います。

 ただしイベントを開く際、気をつけるべき点があります。一つ目は換気。ウイルスは飛沫に乗って短距離を移動し、換気が悪いと狭い空間内で、飛沫の密度が高くなってしまうのです。

 新型インフルエンザが流行したときのこと。中国の観光地のバスに感染者が乗っていて、その人の近くに座っていた人に感染したものの、換気がよかったため、ほかの乗客への空気感染は免れました。一方、換気システムにトラブルが起きた飛行機では、感染者が1人いただけで、7割の乗客に感染しました。

 二つ目は、歌って飛んだ飛沫が感染源になりやすい。だからカラオケはよくなく、換気が悪い会場で叫ぶのも危険です。狭くて換気が悪いライブハウスは、二つの条件を兼ね備えています。

 一方、映画館は閉める必要がありません。特に新しい施設は換気も悪くないでしょうし、前を見ているだけなので、軽い飲食も問題ありません。大きなホールで行われるクラシック音楽のコンサートも、静かに聴いているだけですから、問題ないでしょう。中止になって損害を被っている主催者や演奏家は気の毒です。


■大相撲、甲子園も問題なし


 イベントの自粛で電車やバスでの移動が減り、予防効果がある、という声もありますが、あまり納得できません。電車やバスの車内では、2メートル以内に感染者がいなければ、飛沫による感染はありません。電車には換気システムがあり、特に大都市ではドアの開け閉めも頻繁なので、周囲にせきをする人がいるときにマスクをすれば大丈夫。ただし、手すりなどにつかまるので、手指消毒は必要です。

 大相撲も、会場が広いので無観客にする必要はありません。甲子園の高校野球も同様で、若い来場者が多いのでなおさら問題ありません。応援で声を出すので、症状がある人は来ない、ということを徹底する必要はあります。しかし、それさえできれば、ほかの高校スポーツの大会も、屋内であっても会場が広ければ、開催して問題ないと思います。

 韓国やイタリアで感染者が急増しましたが、狭い空間で、換気が悪く、人が多数集まって、長時間滞在し、叫ぶ、という条件がそろった環境が、あちこちにあったのかもしれません。

 とにかく、根拠のない自粛は意味がありません。自粛しないと、「なぜ開催したんだ!」と文句をつける人がいますが、専門家がそういう部分にまで助言するといいのかもしれません。せきや熱や倦怠感などの自覚症状がある人は来ない、ということを周知徹底すれば、開催できるのです。

〈安倍総理が「1、2週間が感染拡大防止に極めて重要」だとして、イベント自粛を要請したのが2月26日だった。が、現在も見通しは開けず、プロ野球の開幕延期も決まった。〉

 プロ野球の試合も、行って問題ないと思います。そもそも「1、2週間」に根拠はなく、総理はどう言い訳するのでしょうか。現実には政府は、手洗いを啓発し、少しでも症状があれば外出しないということを周知徹底する以外、打つ手はないはずです。一般の人も、しばらくはせきや熱、倦怠感などの自覚症状があれば外出を控え、注意しながら普通の生活を送る。それ以外にありません。

 新型コロナウイルスは想定したほど恐れる必要がないとわかってきました。2009年の新型インフルエンザのとき、死亡率が低いとわかってからも過剰な対策を緩めず、のちに反省したはずでした。それなのに同じ轍を踏んでいます。

 早めに「風邪のウイルスだ」と宣言し、ターゲットを絞った対策に切り替えてほしいです。いったん自粛が始まると、経済的打撃は計り知れないのにやめられないのは、ウイルス以上にやっかいな現象ではないでしょうか。

「週刊新潮」2020年3月19日号 掲載

関連記事(外部サイト)