コロナ大恐慌 インバウンド壊滅、さらに地方経済も苦境に…

コロナ大恐慌 インバウンド壊滅、さらに地方経済も苦境に…

浅草仲見世通りもガラガラ

 不可視のウイルスがもたらした甚大にして明確な経済被害、コロナ大恐慌。

 それはもはや、いくら糊塗しようとしても隠しきれず、「目に見える形」ではっきりと各地を蝕んでいる。

 3月5日、安倍晋三総理は中国と韓国からの入国規制を強化すると発表した。これにより、両国から日本にやってきた人は2週間「隔離」されることになった。隔離前提で来日する奇怪な人などいない。つまり、今回の措置は事実上の対「中韓鎖国」とでも呼ぶべきものだった。

 当然、経済に与える打撃は極めて深刻で、とりわけ地方経済は「重症」に陥っている。その症状は風邪どころではなく、生死に関わりかねない肺炎の域に達しつつある。まさに今、地方経済は「新型肺炎」に襲われているのだ。

 まずは第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、全体状況を解説する。

「2019年のインバウンド消費額は4・8兆円でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で1兆円減ると見ており、さらに東京五輪が予定通りに開催できなくなった場合、減額幅は1・8兆円になると予測しています。すでにインバウンド業界は壊滅的な状況でしたが、それでも中国と韓国からの旅行者はゼロにはなっていませんでした。しかし、今回の入国制限で完全にストップすれば、瀕死状態だったインバウンドに止(とど)めをさす一撃となってしまう可能性もあるでしょう」

 実際、インバウンドを頼みの綱としてきた各地方の惨状は目を覆うばかりで、例えば沖縄県の宮古島観光協会の担当者はこう肩を落とす。

「島の平良港に入港予定だった中国や台湾からのクルーズ船のキャンセルが相次いでいます。1月のキャンセルは1隻だけでしたが、2月は13隻のうち9隻が、3月は24隻全てがキャンセルに。クルーズ船の乗客は1隻あたり2千人から2500人で、朝に上陸して夕方に帰船するケースが多かった。その間にタクシーを使ったり、お土産物を買ったりと、クルーズ船観光客の島での消費金額はひとりあたり約2万円。これが全部消えるのですから大ダメージです」

 単純計算で「24隻×2500人×2万円=12億円」を、3月だけで失うことになる。

「免税店は休業しています。クルーズ船のハイシーズンは3月から11月で、まさにこれからという時だったのに……」(同)

 次に、韓国人観光客に人気だった大分県湯布院にある温泉旅館の従業員が天を仰ぎながら嘆く。

「もともと、アジア圏を中心とする外国人観光客が9割を占めていました。昨年夏前に日韓関係が悪化して以降、韓国人観光客がほぼゼロに減り、今年の春節をメドに中国や台湾のお客さんを呼び込むようシフトチェンジを進め、年明けには韓国の方も戻り始めていた矢先に新型コロナウイルスが直撃……。2月前半から予約の半分がキャンセルとなり、中韓入国制限によって事実上、全てキャンセルになりました。悲惨です」

 何より性質(たち)が悪いのは、

「昨年の日韓関係悪化の時は、他の国のお客さまにセールスをかけるなど対処のしようがありましたが、今回は、日本はウイルスが蔓延する危ない国だと思われてしまっている以上、私たちに打つ手はありません。こうすれば状況を打開できるという手段が何も思い浮かばないんです」(同)

 また、やはり韓国人観光客が多く訪れていた岐阜県の白川郷も苦しむ地方のひとつだ。ある飲食店経営者はこうこぼす。

「アジア圏の団体客が40人乗りのバスで訪れて昼食をとることが多く、1日2件ほど予約が入っていました。しかし、3月は全部キャンセルに。1日あたり80人分のお客さんが減ってしまいました。2月まではそこまでではなかったんですが、3月に入り潮目が変わった印象です。白川郷は1995年に世界文化遺産に登録され、大いに賑わうことになったんですが、町はそれ以来初めてと言える静けさに包まれています」

 実に時計の針が四半世紀前に戻る異常事態が起きているというわけだ。


■「あと3カ月続いたら…」


 中国人などに人気のあった青森県の観光スポット「津軽藩ねぷた村」も経営状況は厳しい。

「前年同月比で1月はマイナス15・4%、2月はマイナス19・6%で、3月はマイナス70%になる見込みです。クルーズ船が青森港に寄港し、そこからバスで来る団体客が多かったんですが、4月に予定されていたクルーズ船5隻も全部キャンセルとなりました。2月初めに、うちの従業員が台湾に行き、施設をアピールするイベントに参加したんですが、その際に台湾側の担当者から、『2月だけじゃなく、少なくとも6月までは台湾からそちらに行く人はいなくなると思う』と言われています。先が見通せません」(同施設理事長の中村元彦氏)

 主に中国からのツアー旅行を組んでいた北海道札幌市にある旅行代理店の経営者が、悲痛な面持ちで後を受ける。

「1月後半から徐々にキャンセルが増え、今の時点でツアーは100%キャンセルと悪化しています。北海道は暖かくなる5月頃からが稼ぎ時なんですが、もしあと3カ月今の状態が続いたら、会社を畳まざるを得ないかなと考えています」

 ことほど左様に、沖縄から北海道まで「全滅」状態で、しかもその影響は観光業だけに留まらないという。

 投資ファンド会社「シグマ・キャピタル」のチーフエコノミストである田代秀敏氏は、

「利用客をインバウンドに依存していた地方のホテルの倒産も出てくるでしょう」

 とした上で、こうシミュレーションする。

「それらのホテルのうちチェーン系でないところは地方銀行で資金繰りを行っていました。そもそも疲弊し、インバウンドに頼るしかない面があった地方経済において、ホテルは地銀にとって唯一儲かる投資先でした。そのホテルが倒産すると、一見、観光とは接点がないように見える地銀も苦境に陥ることが予想されます」

 地方経済崩壊すら起きかねないというのだ。

「週刊新潮」2020年3月19日号 掲載

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