コロナ騒動で働き方を考える(中川淳一郎)

コロナ騒動で働き方を考える(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 昨年8月から博報堂で働いています。私はこの会社を2001年に退職したのですが、親しい先輩が執行役員に就任したこともあり、ご縁で久々の復帰となりました。もっとも、社員ではなく業務委託で、出勤は週1回。社員からさまざまな相談を受けたり、クライアント関連業務に関わったりしています。

 ただ、コロナ禍の影響でイベントやキャンペーンなどが吹っ飛ぶ状況にあり、私の編集者としての能力を広告業界で発揮できる状況にはありません。明日は出勤日なのですが、テレワークとなりました。

 一方、今回の復帰で非常に良かったのが、「働き方は自由だ」と改めて実感できたこと。今やクラウドソーシング、内職、フリー、業務委託、派遣社員、契約社員、フリーターなど様々な働き方があり、別に正社員にならなくても、カネを稼ぐ道はあるんだな、と。

 ただし、何らかの専門分野があることが必須。それさえあれば、雇用形態はなんであれ意外と幸せな働き方ができます。

 ちなみに広告業界で今、重宝されるのは“ネットの風”を読む力です。CMだろうがキャンペーンだろうが、ネットで炎上したら一気に失敗ということになってしまう。

 私はネットニュースの編集者をこの14年やり続け、今でも月に千本ほどの記事を編集しています。いずれの記事についても、アップする前からネットの反応は大抵予想できます。これをいかに広告・PRに結び付けるかを期待されて雇ってもらったわけです。

 社会構造が複雑化する昨今、企業は、他業種の専門能力を持った人材を欲しています。右肩下がりの出版業界を例にお話ししましょう。

 今、出版社の広告部署にいる人に求められる能力は、夜な夜な広告主や広告代理店の人をとことん接待できる、「ガハハ」系の人ではありません。雑誌の広告売上が減っている中、重要なのが雑誌のウェブ版です。そこで広告費をいかに得るかがカギとなる。

 そのために必要なのは、相性のいいネット専業広告代理店を探し出し、契約する力だったり、ウェブ版のデザインを、広告のクリック数が上がるように最適化していく技術、センスだったりします。

 そういう人材を、自社で育てるのは難しい。専門知識のあるIT関係の人に越境してきてもらい、高給・好条件で業務を任せる方が絶対に得策で、実際にそうしている企業も多い。

 これは、なんらかの専門性のある人からすると、自分が貢献できそうな業界を見つけることができれば、より働きやすい条件・環境で働ける状況が整いつつあるということではないでしょうか。

 今回のコロナ騒動は、これからの働き方を考えるいい機会です。「なんでマスクが売ってないんだ!」なんて罵倒を受けたドラッグストアの店員は、今後は企業の「お客様窓口」や広報のアドバイザーになれるかもしれません。「人間なんてドス黒いので突き放せばいいだけです」などと、実体験をベースとしてキチンとアドバイスできることでしょう。

 この窮地で経験したことを、将来のカネ儲けに繋げてくださいね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年4月16日号 掲載

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