新型コロナで急増中 体験者が語る“ZOOM飲み会”に向く人、向かない人

新型コロナで急増中 体験者が語る“ZOOM飲み会”に向く人、向かない人

オンライン飲み会(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、4月7日政府は「緊急事態宣言」を発令。東京都はそれを受け、4月10日「緊急事態措置」の内容を明らかにし、東京都の休業/自粛要請の詳細を発表した。激増する市中感染の元凶の一つが夜の盛り場と考えられ、当然飲み屋も自粛を余儀なくされることとなり、営業時間は夜8時までとなった。

「仕事帰りに一杯飲んで……」を習慣にする人にとって、こんな状況は初めてだと思う。東日本大震災の直後にも東京の飲み屋にこうした自粛ムードは確かにあったが、大きな被害を受けていない人にとっては当事者性は希薄であり、それはやはり“ムード”だった。

 が、今回は自分自身を含めたすべての人が“いつでも感染の可能性のある”当事者となった。お店側が自粛しているだけではなく、お上が「そうしろ!」というからイヤイヤ従っているわけでもなく、多くの人はそこに行くことを怖がっている。

“自ら進んで行いを改める”という、コトバ本来が意味するところの“自粛”を行うという状態が続いている。

 高度経済成長と言われた昭和の一時期、「飲みニケーション」という言い方が流行った。「なんだかんだ言っても、一杯飲んで腹割って話さないとその人のことはわからない」という主張を持つ一派が好んで使っていた。

 こうした主張や「飲み会」そのものがコンプライアンス意識の急激な浸透もあって、デジタル社会、ネット社会の進展とともに少しずつ化石化していった。

 ……はずだった。

 皮肉なことにこのデジタル社会の進展がなければあり得ない形で、最近「飲み会」が大いに復活しているらしい。

 その形が先月あたりから巷で話題になっている「ZOOM飲み」だ。

 ZOOMとは、複数での同時参加が可能な「ビデオ・Web会議アプリケーション」。PC、スマートフォン、タブレットなど、現在一般的なデバイスであればZOOMをインストールでき、Windows、MacOS、Android、iOSなどいろいろなOSに対応している。「ビデオ・Web会議アプリケーション」としてはSkypeが今まで有名だったが、ZOOMはSkypeのように「会議の参加者全員がIDを取得する=事前登録」の必要がなく、参加者は会議のURLをクリックするだけで、会議に参加することができる。

 また、接続が切れにくく安定しているところも人気の理由で、現在、世界で75万人以上がこのアプリケーションを使っている。

 ZOOMは主に通常ビジネス時のWeb会議で使われていたが、コロナ・パンデミック以降、多数の会社がリモートワーク会議のためにZOOMを使うようになっていった。

 しかし、どこかの誰かが「あ、このアプリ使えばリモート飲み会できるんじゃね?」と気づいたのだろう。いつの日かから、このZOOMを使った飲み会が巷でよく行われるようになったようだ。

 ある日、私も知人に「ZOOM飲みしない?」と誘われた。

 私自身も会社でリモートワーク時の会議用ソフトとして使っていたからZOOM自体は知っていたが、ZOOM飲みなどしたことはなかった。

 実際にZOOM飲みを初めて経験してみるといろいろと思うところがあった。

 それ以降、今度は「ZOOM飲み初体験」の男女を毎回3〜5名くらいを自分で集めては、ZOOM飲みを何度かやってみた。

 結果、この飲み会を上手にやるコツがあることがわかった。たぶん、この3つは最低限守ったほうがいいと思う。


■ZOOM飲み会コツ(1) 飲み会の終了時間を最初から決めておく


 ZOOMは以前「無料で使用すると40分しか話せない」と言われていたが、最近バージョンアップして無料版でも時間制限がなくなった。そんな状況もあり、みんな家にいながら飲んでいるので離脱タイミングの判断が難しく、ダラダラとしてしまうことがままあった。「俺もう離脱するわ」とズバッと言える人はいいけれど、その場の同調圧力に弱い人はなかなかその宣言ができない。


■ZOOM飲み会コツ(2) 誰かが話し始めたら、他の人は大人しくする


 これはZOOMに限ったことではないが、ビデオ会議ソフトでは構造上、参加者が何人いようが一人ずつしか話せない。誰か一人が話すと、他者は沈黙して聞くという構造を強制される。普通の飲み会でそんなことはあり得ない。誰かが話しているところに強引に割って入ってくる人間もいるし、それを制する人間もいる。わざとそういう人を黙殺して、別の話題をそこに強引に持ってきて場の流れを変えようとする人も現れる。そういうドタバタも全て含めて飲み会とされているが、オンライン飲み会ではそういうことは起こらない。


■ZOOM飲み会コツ(3) 集団の中で自分の演じる役割をしっかり把握し、それを演じ切る


 オンライン飲みの特徴の一つに、“自分の顔が常に視界に入りつつ、人と酒を飲んで話すこと”がある。「何を当たり前のことを言ってるんだ!」と言うかもしれないが、目の前に鏡を置いて酒を飲むナルシストはさておき、そんなシチュエーションは普通あり得ない。少し冷静に考えてみると、これがどれだけ異常なことかがじわっとわかると思う。オンライン飲み会では、自分の顔を見ながら人と話すことがノーマルだ。

 常に他者の顔を見ているのと同時に、自分自身の顔が視界に入る。このことでその集団の中での自分の立ち位置に関して、参加者それぞれが常に敏感になる。

 その立ち位置(キャラクター)を意識した「発言」「間合い」「表情」などを自然とコントロールできている人が「ZOOM飲み」の上手な人ということになるのだと思う。

 ……と、ここまでこういうことを書いておいて何なのだが、私自身はZOOM飲みをそれなりにムキになって何度か重ねた結果、実は「さらばオンライン飲み会一派」となった。

 オンライン飲み会は実際に酒を飲んでいるからわかりにくいのだが、本質的には上記(3)でも触れた通り「飲み会ロープレ」であり、もっと言えば「飲み会ごっこ」である。

 ここでやり取りされる情報は「言葉+抑揚(音)+表情」に限定されている。
そこには、逐一変化し続け生成される個人と集団とが織り成す場の“気の交換”のようなものが圧倒的に欠けている。

 コロナでみんな疲れている。こういうものに頼りたい気持ちもわかる。

 フジテレビの「めざましテレビ」でも『オンライン飲み会が流行ってる!』などとやっていた。「STAY HOME! にもこんな楽しみ方があるよ」という文脈で紹介されることが多く、「めざましテレビ」に限らずオンライン飲み会に対するメディアの論調は概ね好意的なものだ。

 けれど、だ。

 こんなことして酒飲むくらいなら、一人で本でも読みながら酒を飲む方が有意義な時間だと思う。本を読むことに疲れて少し寂しくなったら、友人に電話して愚痴を聞いてもらう。

「せっかく……」などと言うと不謹慎だが、せっかくこのコロナ禍からもらった豊かな一人の時間なのだ。

 オンライン飲み会が増えていけば、当然ネット上でのトラフィック数は向上する。

「そんなことまでしてIT業界に貢献する必要なんか、まるでない」と、私は思う。

尾崎尚之(@YuuyakeBangohan)/編集者

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月19日 掲載

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