ABC予想の京大「望月教授」 マスコミ嫌いのその素顔

ABC予想の京大「望月教授」 マスコミ嫌いのその素顔

望月新一教授

「世紀の大偉業」「歴史的快挙」である。が、それを称える記者会見にご本人の姿はなかった。なぜ希代の難問「ABC予想」を証明した京大・望月新一教授(51)は、メディアに出ないのか。

 ***

「数学界にとって大変明るいニュースです」

 と言うのは、京大数理解析研究所の柏原正樹・特任教授。柏原氏自身、世界的な数学者であり、今回の論文の査読責任者でもある。

「彼の研究内容は私と大きく違いますのでなかなか難しかったのですが、非常に斬新な論文。なぜメディアに出ないのか、ですか……。それはわかりませんね……。私も取材に答えるのは好きではありませんし……」

 望月氏の“マスコミ嫌い”は今に始まったことではない。8年前に本論文を出して注目された時も、32歳の若さで京大教授になった際にも、インタビューの類が一切残っていないのだ。

 とはいえ、決してカタブツではないようで、前出・柏原教授も、「講義や講演は普通にやられていますよ」と言うし、親交のある加藤文元(ふみはる)・東工大教授も著書で、氏は「大の焼肉好き」で、「お気に入りの店が閉店した際、呆然と店の前に佇んだ」との逸話を明かしている。

 オマケに、ご本人はブログも開設していて、そこでは意外なほどの饒舌。「ガッキー」こと新垣結衣のドラマの大ファンで、紅白歌合戦も見る。欅坂46や松田聖子が気になった、などと記されているのだ。


■ビットコインの創設者?


 表に出ない理由の一端は、そのブログに記されている。

〈こちらが発表を希望する内容には大変な複雑度があり、著しく誤解・曲解・歪曲された形で公開される恐れがある〉ためで、〈私が完全な編集権を認められている〉ブログを主な発表の手段としたい、とのこと。

 更には、「ネット上の書き込み」にはご立腹で、過去に「ビットコイン」の創設者とされたり、独身だからか「性的マイノリティ」であると記されたりしたことがあるが、違う、と反論しているのである。

「加えて、限られた時間を大事にしたいとの思いもあるのではないでしょうか」

 と述べるのは、ジャーナリストの多賀幹子さん。

 望月教授は、日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、5歳から23歳まで米国で暮らしている。父は東大法学部卒で、製鉄会社の駐在社員。母は法律事務所の図書室専門司書で、現在、美学系の学者として活躍する妹もいる。多賀さんもかつて米国在住で、望月家と交流があったという。

「お宅に遊びに行くと、当時、15歳くらいでしたか、新一さんがいらして、お庭に面した窓辺のイスにもたれ掛かって本を読んでいるんです。私をチラッと見ても、挨拶するかしないかくらいですぐに目を本に戻す。厚めの眼鏡をかけ、既に学者の風格を漂わせていて、一刻を惜しむという感じで本に目を落としておられました」

 その翌年、望月氏は16歳にして「飛び級」でプリンストン大に入学している。

「一度、折り紙で36面体を作って持って行ったことがありました。すると、新一さんも興味を持たれたようで、本を閉じて手に取り、しばらくあらゆる角度から観察していました。やはり数学的なものには大変に関心が高かったということでしょうか」(同)

 大学院修了後、日本に帰国し、京大数理解析研究所に入所。前出の大発見に至る。

「論文を出して注目が集まった頃、日本の出版社から『天才の育て方』について本の執筆を依頼されました。お母様に打診をしましたが、お返事はまだありません。プライバシーをとても大切にされる方なんです」(同)

 家族も含め、数学にも通じる、静謐なる世界に身を置いているということか。

 改めて現在の心境を伺うべく、望月教授に取材依頼のメールを送ってみた。予想通り返信は来なかった。

「週刊新潮」2020年4月23日号 掲載

関連記事(外部サイト)