コロナ感染者が振り返る「あれが初期症状だった」 陽性ならあなたもこう扱われる

コロナ感染者が振り返る「あれが初期症状だった」 陽性ならあなたもこう扱われる

初期症状は?(写真はイメージ)

■初期症状は? どこが生死の分岐点!?「感染者」が証言! 「陽性」ならあなたはこう扱われる


 職場の同僚、あるいは知人や親族が“陽性”と診断された方も少なくないだろう。もはやコロナは“いまそこにある危機”であり、発症後まもなく重症化する例も頻発している。武漢に端を発した未知のウイルスから命を守るにはどうすればよいのか。

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「六本木のオフィスを後にして、仕事仲間と書店を訪れた時に熱っぽさを感じました。すぐに帰宅し、体温を計ると37・4度。風邪をひいた時のように暖房をつけて厚着をしたものの、なぜか全く汗が出なかった」

 コンサルティング会社「Globality」CEOで、都内在住の渡辺一誠さん(40)が、体調の異変に気づいたのは3月22日のことだった。

「翌日から、目の奥がズキンズキンと痛み出しました。ひどい二日酔いのようで、脱水症状や熱中症になった時の頭痛に似た感じです。その後、朝方は37度台だった体温が、日が暮れる頃には39度台の高熱に達することが続きました」

 渡辺さんは26日に保健所に連絡し、病院に向かったものの、散々待たされた挙句、「まだ時間がかかりますが、どうしますか?」と言われ、診察を受けず帰ることに。ところが、

「帰宅して山椒の利いた麻婆豆腐を食べたのですが、いつもなら途中でスプーンを置くような辛さなのに、すいすい食べ切ってしまった。“これはさすがにおかしい”と思い、翌日に改めて保健所に連絡して症状を洗いざらい伝えました」(同)

 指定された港区内の病院でPCR検査を受けると、結果は“陽性”。そのまま入院し、胸部CTを撮影したところ、肺が軽い炎症を起こしていることも分かった。

「最も症状が酷かったのは、入院した直後です。解熱剤を飲んでも熱は40度近くから下がらない。一度咳き込むと、堰を切ったように痰の絡まない空咳が続くので眠れなかった。インフルエンザの30倍は苦しかったですよ。食べ物を口にしても水で薄めたような味しかしないので食欲も湧きません。お腹も緩くなって下痢の症状が続きました」(同)

 こうした“初期症状”は、他のコロナ患者にも共通する部分が多い。

 同じく3月末に高熱に見舞われた、関西在住の40代男性はこう明かす。

「私の場合は38度近い熱が出たのと同時に、咳と下痢に襲われました。とりわけ下痢が大変で、一時は1日に10回は便意を催してトイレに駆け込んでいたほど。とはいえ、いきんでも出るのはほとんどガスで、あとは泡のような便が少量といった感じです。それ以外の症状としては、やはり味覚の変化。麦茶を飲むと苦みを感じて信じられないくらいマズかった」

 男性は昨年、大腸がんの手術をして、今年2月まで抗がん剤治療を続けていた。

「そのため、症状が出た直後に保健所に連絡しました。ただ、保健所には“かかりつけ医を受診してほしい”と言われ、内科の個人病院を訪ねたら、はれ物に触るような対応で隔離ブースに案内されまして……。レントゲン写真を撮影して医師の問診を受けると“初期の肺炎がある”と。それを保健所に伝えて、4月1日にやっとPCR検査を受けることになったのです」

 感染症指定医療機関である総合病院に向かうと、

「病院の敷地内に設けられた仮設の建物でPCR検査を受けました。粘膜を採取するため、長い綿棒を鼻の奥と喉に突っ込まれたのですが、私がクシャミをすることを懸念して、医者は背後から器用に綿棒を挿入していましたね。検査自体は5分ほどです。とはいえ、病院からの電話で“陽性”と聞かされたのは2日後の4月3日のことでした。正直なところ、これだけコロナを疑う症状が出ているのに、なんでもっと早く陽性と判断してくれなかったのか、と思いましたよ」

 入院できる病床がなく、男性は妻と暮らす自宅で隔離生活を送っている。

「嫁にうつさないよう部屋にこもり、テーブル、便座には使うたびに除菌スプレーを吹きかけています。室内でも嫁と話すときはマスクが欠かせません。症状は落ち着きましたが、どこかで重症化しないか不安を抱えながら過ごしていた。ただ、13日になって保健所から連絡があり、次のように伝えられました。まず、今後も入院はせずに自宅療養を続けてほしい。そして、追加のPCR検査は行わず、4月17日まで症状が出なければ就業制限が解かれて、翌日から復職できます、と。個人的には改めてPCR検査を受けたいのですが、病院側には軽症者を検査したり、ベッドを用意する余裕はないのだと思います」

 入院生活を続けていた先の渡辺氏も3月末には高熱が峠を越え、4月10日に退院を果たした。幸いにも症状が快方に向かった彼らは、どうにか“日常”を取り戻しつつある。その一方で、より大きな課題となっているのは重症患者の存在だ。


■エクモは時間稼ぎ


 コロナ対応に追われる医療関係者によると、コロナ患者のうち約85%は無症状か、自然に回復する軽症者。残る15%のなかで6%が重篤化するという。

 しかも、先日急逝した志村けんのように、発症から1週間程度で命を奪われるほど、重症化した場合、コロナの進行は極めて速い。

 医学博士で元小樽市保健所長の外岡立人氏によれば、

「新型コロナウイルスによる肺炎の特徴は、重症化すると気管の最末端にある細気管支(さいきかんし)が、炎症によって生じた滲出物で詰まってしまうことにあります。その結果、肺胞まで酸素を届けられなくなる。そうなると人工呼吸器でも効果を得られず、放っておけば窒息してしまう。最終手段として用いられるのが体外式膜型人工肺(エクモ)です。ただ、これは永続的な治療法ではなく、あくまでも肺が自力で回復するまでの時間稼ぎ。結局は、肺そのものの回復力にかかっています」

 たとえ最後の砦であるエクモを用いても、志村けんや中村勘三郎のように帰らぬ人となるケースは後を絶たない。高血圧などの基礎疾患を持たず、病を自ら乗り越える免疫力や基礎体力を備えていないと、コロナが重症化すれば“生還”は難しいようだ。

 山王病院呼吸器センター内科副部長の須藤英一氏はこう話す。

「慢性的な肺の病気を持っているかどうかが生死の“分岐点”となるように思います。急激に悪化するのは、高齢で基礎疾患があり、肺の免疫力が落ちている患者が多い。とりわけ、長期にわたって喫煙を続けたことで慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹っていると重症化するリスクが高まります」

 人間の気管支は、繊毛によって異物を除去しているが、COPDの患者は繊毛運動が衰えているため重症化を招きやすいという。

「他にも、糖尿病や肥満がリスク要因に挙げられます。糖尿病は高血圧を併発しやすく、血管がダメージを負うため、酸素運搬能力が衰える。加えて、透析を受けている方は免疫力も低下します。また、肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群になると睡眠中に低酸素状態に陥るので、心臓や肺に負担がかかってくるのです」(同)

 予防の観点から言えば、日本が世界でもダントツの普及率を誇るCTも活用すべきだろう。「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染者を受け入れた自衛隊中央病院は、患者の症例をHPで公開。たとえ無症状でも、CT検査で異常が認められる感染者がいることが分かった。CTが感染の早期発見に繋がる可能性は高い。

 日本医科大特任教授の北村義浩氏いわく、

「重症化を防ぐには初期症状をきちんと見定めて、かかりつけ医や自治体の相談窓口に連絡するしかありません。呼吸をした時に“ゼーゼー”と息苦しさを感じた場合は注意が必要。これは肺炎の症状で、軽い咳や味覚の変化よりも危険度が高い。次に、平熱が36度台前半の人が、38度台を超える熱を出したら気を付けた方がいい。一旦、熱が下がっても、健康な方が高熱に見舞われることはそうそうないので油断は禁物です。いまはインフルエンザの流行はほぼ終わっている時期なので、突然の高熱は肺炎を起こしている可能性が高い」

 重症化を防ぐには、細気管支が炎症を起こさないよう、なるべく早く身体の異変を察知することに尽きる。

「週刊新潮」2020年4月23日号 掲載

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