小池都知事も知らない「コロナ・ネットカフェ難民」が向かう「超3密」施設

小池都知事も知らない「コロナ・ネットカフェ難民」が向かう「超3密」施設

「コロナ・ネットカフェ難民」が向かう「超3密」施設とは(※写真はイメージ)

■6畳間に、3、4人ずつ


「中間管理職」を自称する小池百合子都知事が、ネットカフェ難民をホテルに収容する、とぶち上げた。しかし、そのホテル滞在もままならないうちに、スラム街とどっこいどっこいの信じがたい劣悪な住環境で生活せざるを得ない可能性があるという。となれば、各自治体の福祉事務所で、生活保護受給者となる手はずも整えられることだろう。

 神奈川県なども、最初はスポーツ施設を利用できるが、そのうち同様の施設に“転居”を余儀なくされると聞いた。そこは「無料低額宿泊所」と呼ばれるところで、このコロナ禍でなくとも3密どころの騒ぎではないのが大問題なのだ。

 私は2017年の11月からのおよそ8カ月のあいだ生活保護を受け、都内の無料低額宿泊所で暮らしていた。最初は、品川区の戸越銀座商店街に面したオンボロのアパートを大増築した施設で、50代以上のオヤジばかりが6畳間に3、4人ずつ詰め込まれていた。

 しかも、厚生労働省によると、そのうちうつ病の人が20%、知的障害を持つ人が45%、痴呆症の人が25%に上っている、という[2018年度]。

 それでいて、こうした施設が存在している建前は、「自立支援」であるのだから、ブラック・ジョークそのもの。「退所する理由の3割が失踪」ということからも、その劣悪さが窺い知れよう。

 たとえば、朝夕の食事は、「1日100円前後の仕入れ価格」の範囲で用意される質素きわまりないものだ。1回ごとの夕食のメインディッシュの一例を挙げれば、ミートボール4個、ゴボウ巻き2本、魚肉ソーセージとちくわの和え物、原料がタマネギ100%のハンバーグ、豚の皮かと錯覚するほどゴワゴワの豚肉の味噌煮、トンカツなどは半年に1度しかでない。

 その分量は、ほとんどがデパ地下のツマ楊枝が刺さった試食ほどだ。ただし、ご飯とふりかけはご自由に。さらに、朝食は、前夜の残り物ばかり。

 格好のダイエット食と苦笑しつつ、人体実験を試みた私は、半年で体重を8キロも落とすことができた。

 しかし各種の費用として、生活保護費の約8割、10万円ほどを召し上げられるため、入居者の手元には、2万5000円ほどしか残らない。しかも、昼食が出ない。昼食を摂ったら何の活動費も捻出できない。ほとんどの入居者が、窓もない部屋で動物園の動物のように昼寝を決め込む理由をたちまち納得できた。

 これではいつまで経っても自立できない。だから私は、「自立のための活動費」として4〜5万円を猶予してもらうことにした。管轄する都の福祉保険局生活福祉部保護課に確認すると、「お客様の個人的な事情によって、そういうケースも、ままあります」と、男性職員が丁寧に答えてくれた。

 しかし、その翌朝から、施設内で私への各種のネグレクトが始まった。

 まず、朝夕の食事が「ナシ」となり、食堂のホワイトボードに私の罪状が大書きされる。「税金で、食わしてもらっているのに……」という常套句を、たった1人の住み込み老職員から1日中浴びせられた。

 さらに、「休み明けには、とっとと施設を出て行ってください。未払いの10万円は、払ってもらわなくて結構です。そのあとのことは、ケースワーカーさんと相談してください」と宣告された。


■糞尿VIPルーム


 その結果、私は「よりハードな施設」に、強制移動と相成った。

 場所は、東京スカイツリーのすぐそばだった。

 墨田区は向島、かつては料亭だったというお化け屋敷のようなその施設は、神社の裏の住宅街に隠れるように存在していた。20人の多種雑多なオヤジたちが共同生活をしている。

 頭の後ろで髪を束ねたジャズ喫茶のオーナー風の施設長で、昼間いるだけのただ1人の管理人から、我が耳を疑う数々の入居の心構えを拝受する。

「20人の入居者のうち、3、4割の方が、全身に見事な刺青をしていらっしゃいます」

「窓は、絶対に開けないでください。近隣の住宅から、たちまち大変な苦情が来ますよ」

「アナタの部屋は、6畳間で、今週だけ1人部屋です。ただし、先週まで入居していた痴呆の方が、自分の大便を部屋中に投げつけていました。掃除はしたのですが、なかなか取れていません」

 部屋は、まさしく「糞尿VIPルーム」だった。畳、壁、天井が、糞だらけ状態で、まんま動物園のゴリラの檻の様相だ。かろうじて、スリッパでの入室が指示された。

 しかも、そのスリッパのまま移動する廊下を挟んだそのすぐ向かい側は、食堂。入居者の中の有志が、着たきりスズメの運動着姿のまま食事の盛り付けをしている。衛生状態は、推して知るべしだ。

 翌週、私と同室となった北海道出身の同世代の人は、先日まで上野公園を根城としていたホームレスだ。「こんな場所と知っていたら、来なかったですよ。ホームレス仲間のブルーシートホテルほうが、よっぽど衛生的ですよ。生活保護費が入ったら、一緒に脱走しちゃわない?」と笑っていた。

 知る人ぞ知るメガ・クラスターの最大予備軍の無料低額宿泊所。ロックダウンを煽って人気取りに成功した小池都知事は、ご存じであろうか。

 都庁の近くにも、多数の無料低額宿泊所が存在している。小池都知事は、退庁の帰りにでも、防護服を装備して、自ら見学に行くといい。

村野雅義
作家。1954年、東京中野生まれ。東海大学工学部建築学科卒業。学生時代から、放送作家に。30歳を過ぎてから、「巨泉のこんなモノいらない!?」「朝まで生テレビ」、各ワイドショーなどに出演。著書に、「バキュームカーはえらかった」「田中角栄vs小泉改革」「地方栄えて日本は破産」「東京は日本一ビンボーだ」など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月25日 掲載

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