【コロナ禍】ワシが緊急事態宣言は必要なしと主張する理由……小林よしのり氏インタビュー

【コロナ禍】ワシが緊急事態宣言は必要なしと主張する理由……小林よしのり氏インタビュー

小林よしのり(本人のオフィシャルwebサイトより)

■「自粛は巨大な悪」


 漫画家の小林よしのり氏が、新型コロナ問題で積極的な発言を行っている。自粛ムードを強く批判するなど、“世間の常識”に抗う内容が大半だ。当然ながら大きな賛否両論を巻き起こしており、本人に真意を訊いた。

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 4月11日、公式ブログに掲載された「自粛を止めて、経済を回すべし」の記事は、大きな反響を呼んだ1つだ。冒頭部分を引用させていただく(註:引用時は改行を省略したり、デイリー新潮の表記法に合わせたりするなどした。以下同)。

《例えノーベル賞学者が「コロナが脅威」と言っていようが、もはや「デマ恐怖」だとわしは確信しているので、微動だにしない。「自粛なんか止めろ!これは巨大な悪である!」》

《どうせ感染者は増え続ける。自宅療養しておけばいい。緊急事態宣言やっても、自粛を要請しても無駄! ならば経済を回した方がいい! 補償なんか無駄!》

 小林氏自身も話題になったことを把握したようで、2日後の13日には「わしのコロナ主張が凄まじい反響ですね」の記事が掲載された。最も“挑発的”な部分をご紹介する。

《小林よしのりの個人サイトも、「ゴー宣道場」サイトもアクセス数が急激に伸びて、伸びたまま推移している》

《どうやらネット界隈では、わしの主張をデタラメなつまみ食いしながら叩いている者も多いようだ。玉川徹や岡田晴恵に「恐怖」を植えつけられた者たちがどれほど狂ってしまったか、単行本に載せて、歴史の証言にしたいものだ》

 14日の記事「致死率20倍?日本の致死率は?」では、情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系列・平日・8:00)のスタンスを、《安心材料を報道したら、視聴率が取れない》と指摘した。

《恐怖だけが番組の生命線で、番組のスタッフは恐怖材料だけを血まなこになって探している》

 関連して16日の「権威主義の情けなさ」では、ノーベル賞を受賞した本庶佑氏の緊急提言に反論した。

 本庶氏の「PCR検査の大幅増加」、「大都市圏における1か月の完全外出自粛」などの主張を紹介した上で、小林氏は《インフラ崩壊で、人々が死んでしまう》と“一刀両断”したという内容だ。

「モーニングショー」で玉川徹氏が「さすがノーベル賞、合理的」と高く評価したことも紹介し、《権威主義というものは自分の頭で考えるという「個」の力を失くしてしまう。やれやれだね》と慨嘆した。

 こうした一連の発言について、どのような想いがベースにあるのか小林氏に質問すると、「そもそも自粛が嫌い、というのはあります」と言う。

「発言の根幹は、資本主義を止めることが、どれほどの愚挙かということです。普通の人間は働いて稼がないと食えません。自粛ムードでも余裕で暮らせる貯蓄を持っている人や、新型コロナ前と同額の給与が保証されている会社員などは、極めて少数派でしょう。個人経営の飲食店などは、この状況で店を続けられるはずがない。自粛の強制は失業者と倒産企業数を大幅に増加させる可能性があり、だからこそ反対の声を上げているのです」


■最初に訴えた「中国人入国禁止」


 小林氏の初連載は、集英社の「週刊少年ジャンプ」に1976年から79年まで掲載された「東大一直線」であることは、よく知られている。

 そのジャンプは、4月8日に編集部の40代社員について《感染の疑いがある》、《PCR検査待ち》などと発表した。

 このため20日に発売予定だったジャンプの発売を1週間延期し、27日に合併号を発売する予定だとした。

 講談社も14日には、政府の緊急事態宣言などを受けて「モーニングツー」など漫画誌の増刊誌など10誌の刊行と配信の延期、更に「小説現代」6月号も7月号との合併号とし、刊行日を延期すると発表した。

「自分の作品が載っているわけではないけれど、雑誌で仕事をしている人間としては、他人事ではありません。編集部員が1人でも感染したら、もしくは感染の疑いがあるだけで、雑誌の発行が丸ごと延期になる可能性がある。これは、どう考えても、やっぱり滅茶苦茶でしょう」(同・小林氏)

 そもそも小林氏は、新型コロナウイルスが中国の国内問題として注目が集まった1月に、「中国人の入国禁止」を訴えていた。

 公式ブログでは1月29日に「日本は中国人旅行客を入国禁止にすべきでは?」が掲載されている。

《武漢からの団体旅行客を乗せた日本のバス運転手がコロナウィルスに感染したという。中国は団体旅行客の渡航を禁止しているようだが、奇妙なことに日本は受け入れ続けている。なぜ日本政府は中国からの旅行客を一時的に入国禁止にしないのだろう? 人権真理教のリベラル左翼が「ヘイト」と非難するのが怖くて、できないのか?》

《中国人は日本滞在中もみんなマスクをつけているが、日本人はつけていない。やっぱり日本人は平和ボケなんだろう。銀座に出ていく用事があるが、銀座は中国人で溢れかえっているから怖い》

「グローバリズムの弊害は20年間、常に指摘してきました。京都が好きなので、インバウンド重視の危険性や、観光公害の問題にも高い関心を持っていました。そこに武漢で新型コロナが発生し、春節を迎えたわけです。私は真っ先に『中国人の入国禁止』を訴えましたが、誰も耳を傾けてくれなかった。それどころか排外主義だと強く非難された。そして春節が到来し、日本国内でマスクを付けた大量の中国人観光客を見た時には、率直に言って、ぞっとしましたよ」(同・小林氏)

 中国人の入国禁止という「最善の策」を、日本政府は行使することができなかった。ならば「次善の策」を自分の頭で考え続けることが必要だ、と小林氏は主張する。

「未知のウイルスですから、理屈抜きに怖いという人がいてもおかしくないでしょう。しかし、それで終わっては駄目です。自分自身の頭で『本当に恐ろしいのか?』と考え続ける必要があります。感染者数は増えてもおかしくありません。だから死者数だけを注視していました。すると欧米に比べても非常に少ないし、インフルエンザと比較すれば桁違いだということが分かるわけです」

 厚生労働省の「新型インフルエンザに関するQ&A」というページには、以下のような記述がある。

《例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)〜1818(2005年)人です》

《また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25〜50万人、日本で約1万人と推計されています》

「テレビは一般大衆に恐怖を植え付ける報道を繰り返し、右派の論客でさえ新型コロナを非科学的に恐れてしまっています。しかし、国内の死者数は200人超です。新型コロナで直接、及び間接的に死亡した日本人が、インフルエンザと同じように年間1万人に達するなら、もちろんワシも恐れます。しかし、今の死亡者数を考えると、新型コロナを必要以上に怖がる必要はないという結論になるはずです」(同・小林氏)


■独自の“安倍批判”


 安倍首相のリーダーシップを疑問視する際でも、一般的な世論は「緊急事態宣言の発令が遅すぎた」と指摘する声が多い。だが小林氏の示す論拠は全く違う。

「専門家は『大丈夫です』とは絶対に言えません。最大限に見積もった危険を訴えるのが仕事であり、社会的使命でもある。政治や経済に忖度する必要はなく、だから専門バカとも言われてしまう。しかし政治家は、総合的に状況を把握し、政策を決定しなければなりません。未知のウイルスとはいえ、今のところ死亡者数は250人超です。それでも経済を止めてしまい、失業者と倒産企業を大幅に増加させるのは、全く間違っている。緊急事態宣言の遅れを批判しているのではなく、安倍首相が宣言を発令したことを問題視しています」

 新型コロナが収束するという未来像は曖昧なままなのに対し、小林氏は「自粛疲れは必ずやって来ます」と予測する。

「日本人が日常を取り戻そうと繁華街に戻ったり、観光地に出かけたりすれば、新型コロナの感染が再び拡大しない保証は、今のところありません。再拡大したら、また非常事態宣言を発令するのでしょうか。そして同じように自粛に疲れて経済活動を再開させると、感染が再々拡大し、またまた非常事態宣言を発令するのでしょうか。いつまでたっても、文字通りのいたちごっこで、キリがありません。疑うべきは自粛なのです」

 新型コロナの問題と直面している日本の状況を、「戦時下」と形容することも目立ってきた。これにも小林氏は異議を唱える。

「戦時下の都民は、毎日B-29の空襲を受け、バケツリレーで火災に立ち向かっていたわけではありません。屋外に出ることを自粛し、自宅に閉じこもっていたわけでもありません。敗戦が濃厚でも、空襲のぎりぎりまで経済は回り、人々は普通の日常生活を送ろうとしていました。戦時下の日本に、現在のような“自粛”は存在しなかった。この事実は極めて重要でしょう」

週刊新潮WEB取材班

2020年4月27日 掲載

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