聖教新聞の配達を読売新聞が担当することになったワケ 学会と読売に聞くと…

聖教新聞の配達を読売新聞が担当することになったワケ 学会と読売に聞くと…

聖教新聞の配達を読売新聞が担当することになったワケとは

■配達作業を担う「無冠の友」


 連立離脱や選挙協力見直しも辞さずと安倍晋三首相に匕首を突きつけ、「一律10万円配布」を勝ち取った公明党とその支持母体である創価学会。相前後し、大きな資金源である聖教新聞を巡って不思議な動きが展開されていた。

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〈いつも本誌をご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。5月1日(金)付より聖教新聞等(聖教新聞・大白蓮華・創価新報・未来ジャーナル・きぼう新聞・公明新聞・公明グラフ)の配達は読売新聞の配達員が行います〉

 そんなチラシが一部地域の創価学会員宅に届き始めたという情報が駆けめぐったのは、4月中旬のこと。送り主の名として「聖教新聞社 聖教新聞販売店」とあり、日付は「令和2年4月吉日」となっている。

 ある東京都在住の学会員は「茨城県に住む知り合いから、チラシの写真がメールされてきた」と、スマホ片手にこう言う。

「創価学会員の高齢化、それにともなう組織体力の低下もここまでかと。僕の家にはまだ、この知らせは届いていませんが、いずれ全国に広がっていくんでしょうか」

 聖教新聞とは言うまでもなく、日本最大の新興宗教団体・創価学会の機関紙だ。公称発行部数は550万部。これは朝日新聞の557万部に匹敵し、同じく共産党機関紙の「しんぶん赤旗」の5倍超、それどころか、毎日新聞の243万部と日経新聞の233万部を合わせたよりも多い、巨大メディアである。

 熱心な学会員になると、1世帯で5部、10部と購読する例もあるとされ、その販売収入はまさに創価学会の重要な柱なのだ。

 なお、聖教新聞の発行元は「聖教新聞社」となっているが、これは宗教法人創価学会内の一部門であり、そういう名前の独立した法人組織があるわけではない。

「聖教新聞の配達は、熱心な学会員たちによって支えられてきました」とは、前出の学会員の弁。「地域にもよりますが、専門の配達員がいるというより、地元の学会員がボランティアに近い形で配っている」(同前)という。

 そうした配達作業を担う学会員たちは「無冠の友」なる称号で呼ばれ、池田大作名誉会長も過去、「無冠の友は、太陽の使者」「『聖教新聞』の配達には、それ自体、折伏(布教のこと)に通ずる功徳が現れる」などと絶賛してきた。つまり聖教新聞の配達とは、創価学会内で非常に重んじられる、名誉ある仕事なのである。

 しかしなぜ創価学会は今回、そのような重要な仕事を外部の読売新聞に委託することになったのだろうか。

 創価学会広報室に問い合わせると、聖教新聞の配達を読売新聞に委託すること自体は「事実です」と認めるものの、その理由については「業務上の経緯につき回答は差し控えます」と素っ気ない。

 しかし、一方の読売新聞に取材を申し込むと、「聖教新聞社から茨城県内での配達を依頼され、5月から配達を始めます」とした上で、「当社は全国に広がる新聞配達網を生かすため、近年、他社の新聞や週刊誌の配達、宅配便、牛乳配達など様々な配達業務の受託を進めています。そうしたところ、聖教新聞社からも依頼があり、配達を受託したものです」という、読売新聞グループ本社広報部からの回答があった。

 つまり茨城県限定ではあるものの、何らかの事情があって創価学会の方から読売新聞に持ちかけたものらしいのだ。


■悲しき黄昏かはたまた…


「結局、熱心な世代の高齢化という問題につきます」

 そう諦め顔で語るのは、ある古参学会員だ。

「池田名誉会長のお姿に直に接して入会した世代は、もうほとんど高齢者。身体の具合も悪く、亡くなっていく人も多い。他方、若い世代は『親が学会員だったから』というだけで入会した2世、3世が少なくなく、学会の活動にもそう熱心ではありません。こうした状況は近年、公明党の得票数がどんどん落ちていることなどにもつながっています。『無冠の友』ももう、なり手がないわけです。今回の茨城県で始められる読売への販売委託は、状況を見ながら今後、全国に広がっていくのではないでしょうか」(同前)

 なるほど、巨大宗教団体の悲しき黄昏を象徴する話なのである。

 とはいえ、「必ずしも創価学会にとって悪い話でもない」と指摘する向きもある。ある全国紙記者の言。

「聖教新聞は印刷を自前で行っておらず、全国さまざまな新聞社の印刷所に委託しています。中でも毎日新聞系列の印刷所で刷っている数は極めて多く、創価学会と毎日の蜜月関係は有名。2009年3月には毎日新聞に池田大作氏の寄稿が載り、物議をかもしたこともありましたし、系列の毎日新聞出版からは、池田氏の著書が出版されている。いまや毎日にとって学会は、ぞんざいに扱うことができない大口顧客であり、学会に関する批判的な記事など書けるはずもありません」

 社会の公器たる新聞に好意的な取り上げ方をされる。これが新興宗教たる創価学会にとってどれほど有難いことかは想像に難くない。

「今回の聖教新聞の配達委託で、読売が同じ道をたどることになるのは明白でしょう。読売ですら部数減には歯止めがかからず、中でも頭を抱えているのが全国に整備した販売店をどう生きながらえさせるかということ。読売は2019年の1月1日に25年ぶりとなる購読料値上げに踏み切りましたが、このときの大義名分も“販売店の労務環境改善のため”だった。そんな中で550万部という大口顧客に読売が牙を剥くことは、不可能に等しい」(同前)

 世の新聞離れが言われる中でも読売新聞の発行部数は809万部と日本一。その紙面に載って、池田大作氏のメッセージが全国に届けられる日も近いのであろうか。

小川寛大(おがわ・かんだい)
雑誌『宗教問題』編集長。1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て現職。著書に『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月28日 掲載

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