日本にマスク200万枚寄付の台湾、買いだめ絶対不可能の「Eマスク制度」とは?

日本にマスク200万枚寄付の台湾、買いだめ絶対不可能の「Eマスク制度」とは?

マスク不足の現象は世界全体に広がっている(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大で発生したマスク不足の問題がなかなか解消しない。

 これまで月3〜4億枚だったマスクの供給量を拡大するため、政府はシャープやトヨタ自動車などの異業種にも生産を要請した。これにより、3月に6億枚、4月に7億枚と供給量は順調に増加している。

 ***

 さらに政府は3月中旬、インターネットでマスクが高額に取り引きされている事態を受けて、国民生活安定緊急措置法をマスクにも適用するための政令改正を行い、転売行為を罰則付きで禁じた。4月25日にはさらに価格をつり上げたり、売り惜しみをする業者に立ち入り検査や強制収用を行うなどの方針を固めた。

 しかし、マスク不足の問題が解消される兆しが見えてこない。

 1月下旬に日本国内で新型コロナウイルスの患者が発生して以来、マスク需要が爆発的に増加しているからである。たしかに自分の身の周りを見てみても、ほとんどの人がマスクを着用している。何より問題なのは、不安感から生じる買いだめ需要も大量に発生していることである。

 専門家の間では足元のマスク需要は月30億枚に達しているとの見方が一般的である。約1億2000万人の国民が1日1枚マスクを使うとすれば、月に30億枚になるという計算である。月に7億枚を生産し、売り惜しみを防ぐ措置を講じたとしても、この量では月の7日しか持たないのである。

 マスクを店頭で販売しているドラッグストアなどの現場では、早い段階から「1人1箱まで」などの購入制限を採っているが、同じ人が時間差で購入する行為を防ぐことは実質的には不可能である。現場ではトラブルも相次いでいることから、LINEによる抽選制度や会員制度を活用することにより、より多くの人に販売できる模索が続いている。

 福井県が23日、県民へのマスク購入斡旋事業を開始するなど地方自治体レベルの取り組みも始まっているが、尋常な手段を講ずるだけではマスク不足はなかなか解消しない。

 マスクは不織布マスクと布マスクとに分けられる。現在市販されているのは使い捨ての不織布マスクだが、布マスクは洗って再利用できる。

 国民1人1人に2枚の布マスクを配布し、3日のうち2日を布マスクで対応してもらえば、不織布マスクの供給は月10億枚まで抑えられる。

 安倍首相の肝いりの布マスクは17日から配布が開始されたが、供給された布マスクの一部に黄ばみや黒ずみなどの汚れが見つかってしまい、未配布マスクの全量回収を余儀なくされている。政府はメーカー毎の生産体制をチェックした上で再度配布を行う予定だが、全世帯に届くのはゴールデンウィーク以降となる。布マスクで買いだめ需要が抑制されるかどうかも未知数である。

 海外に目を転じると、マスク不足の現象は世界全体に広がっている。

 マスクを着ける習慣がなかった欧米などで着用義務化の国が相次いでおり、中でもインパクトが大きかったのは米国の方針転換である。トランプ米大統領は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、外出時にマスクの着用を国民に推奨すると発表した。その後世界各地で米国企業が高い価格を払ってマスクを買い占めるケースが目立ってきている。(4月4日付ロイター)。

 このような逆境にもかかわらず、21日、台湾政府から寄贈されたマスク約200万枚が成田空港に到着した。

 どうして台湾政府はこのようなことができたのだろうか。その理由は台湾は世界の中で最も優れた新型コロナウイルス対策を講じ、マスクについても買いだめ需要を抑え込むことに成功しているからである。

 台湾でも1月下旬に「マスク騒動」が起きたが、政府は即座にすべての工場を管理し、購入制限を行った。その後メーカー各社に生産能力向上を要請した結果、1カ月半で生産能力が13倍になった。

 需要サイドでも、2月から指定薬局(約6000件)でのマスクの購入が実名制となり、購入できる限度は7日に1度、1人2枚までとなった。

 それでもマスク不足の事態が生じたことから、3月から買いだめが絶対不可能とされる「Eマスク」という画期的な制度を導入した。

 Eマスク制度とは、マスクを国民に均等に配布するため、インターネットを活用して予約販売する試みである。Eマスクのためのアプリ申請は簡単である。名前、電話番号、身分証明書や保険証の番号を入力すると、上記の情報が正しく一致していれば「予約完了」のメールが返信される。あとは店頭に受け取りに行くだけである。14日間に9枚までマスクを購入でき、料金も9枚で約200円となっている。

 各販売店のマスクの在庫数をリアルタイムで把握できるアプリも開発され、4月からはコンビニなどでも利用が可能になったことから、マスクが入手できないケースは皆無に近くなり、買いだめ需要は消失したと言われている。

 Eマスク制度を構築したのは、デジタル大臣のオードリー・タン氏(39歳)である。

 ITに精通し、知能指数180と言われるタン氏、まさに適材適所である。

 日本政府も10日、省庁の垣根を超えた特命部隊「マスクチーム」を立ち上げている。

 不安から生ずる買いだめ需要を抑えることに成功した台湾政府の取り組みを謙虚に学ぶことで、1日も早く日本でもマスク不足が解消されることを期待したい。

藤和彦
経済産業研究所上席研究員。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、2016年より現職。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月29日 掲載

関連記事(外部サイト)